カテゴリー別アーカイブ: 【☆ 性拳舞闘界~性闘士の少年は王国の守護者~】

☆ 快楽の闘技を修めた少年

 風の中で少年が舞っている。軽やかな動きはダンスにしか見えない。
 しかしそれは闘いの技だった。

 途中から一人の女性がそれを観ていた。少年の舞いが終わる。

「燐(りん)さん! 何か御用ですか?」
「おめでとう覇主可(はすか)、キミの御主人様が見つかったよ」

「えっ!」
 覇主可と呼ばれた少年が笑顔を見せる。しかし、すぐに少し暗い表情になった。

「僕で良いのですか? 性愛の相手としてお仕えすることにも異議はないけど、闘いの技なんて一生使わなくても良いのだけど……闘わない僕は、たぶん、本当の僕じゃないです」

「大丈夫、キミを待たせたのは闘える場所を見つけてあげるためさ。ただ、依頼人は少し遠い所に居る。もう戻ってこれないかもしれない。それでも良いかい?」

「はい! 燐さんのことは信じてますから!」
 少年はまた笑顔になった。

 出立の準備を整え、案内された場所は外に出る門ではなかった。主に魔術を取り扱うエリアの一角だ。

 ここは少年少女を抱師と呼ばれる性技師として育てる場所だ。仙道や魔術、科学的なもの、いろいろなものが研究され、修行されている。抱師たちの主人となる人に最高の技で尽くすために。

 覇主可もその一人だったが、彼は闘いの技に優れていた。主人を護ることができるのは、悪いことでは無い。そのための闘技も研究されていた。

 その闘技は性技の技と混じり合い、独特のものになった。例えば、触れることで発情させ、動きを封じるような技。

 しかしその性闘技を極めつつある少年は、一般的な闘技を競う世界には受け入れられない。
 性愛師として主人を悦ばせる技も相当なものだったが、この場所を取り仕切っている燐は、彼の闘技が生かされないことを良しとしなかった。

 平和な世界では闘技が実用として望まれることはあまりない。闘いが望まれる場所で性技で尽くす相手は見つからなかった。

 しかしようやく、尽くすべき主人が現れたようだ。燐がそう判断したということを覇主可は信頼していた。

 魔方陣の上にゲートが開いている。魔法による転移門が必要な場所らしい。これほどの術を行える者がここに居たのだろうか。

「キミの御主人様は異世界のお姫様、いや、女王様だ。小さな国だと言ってたけどね。他国との争いが起こっているらしい。望まれたのは戦士だけど、キミのことを伝えたら、試してみたいと言われた。大丈夫、キミなら十分に満足させられるさ。闘いでも、ベッドでもね。男性は珍しいところらしい。性技での御奉仕も望まれてる」

 少年にとってかなり理想的な条件だ。
 異世界というのは不安要素だろうが、そんなことは気にならなかった。ようやく修めてきたものを発揮できる。育ててくれた燐に報いることでもある。

「行ってきます。ありがとうございました」
「行ってらっしゃい」
 この旅立ちは永遠の別れかもしれない。一抹の寂しさと、それを遥かに上回る感謝と希望。

 覇主可は未知の世界に足を踏み入れた。

☆ 異国の女王と少年の闘い

 覇主可が現れたところは、西洋風の広い部屋だった。背後でゲートが閉じる。

 覇主可を取り囲んでいるのは全て少女だ。彼女たちの格好は、中世西欧風の雰囲気だった。異世界の風俗をそう例えて良いならだが。

 正面に、一番身分が貴いのだろうと想われるドレスの少女がいる。この人が覇主可を求めた女王陛下だろうか。

「燐さんの所から来た、覇主可と言います。僕を買ってくださったのは貴方ですか?」

「そうです、私です。星璃逢(せりあ)と言います。この国を任されています……覇主可さんは強いのですよね? 早速、闘ってもらえませんか……でも、実はあなた一人でどうにかできるとは思えません……ごめんなさい」
 もう戦いは始まっていて、戦況は良くないようだ。

「女王や姫君たちを護って逃げてくれ……私たちが追っ手は止める」
 傷ついている騎士といった感じの少女は逃げろと言う。

 覇主可は、傷ついた少女たちが多いことに気付いた。おそらく魔法で外傷は塞がれているが、ダメージは残っていることが解る。

「星璃逢様、撤退されますか?」
 覇主可は主人に訊いた。
 逃げろと言ったのは主人である星璃逢ではない。

「私は逃げません。逃げるか、戦うか、どちらが良い判断か解らないけど、迷う時間はありません。あなたの力があれば何とかなると燐さんは保証してくれました。信じられないけど、信じます。お願いします、私たちみんなを護ってください」

 少年は笑った。
 微笑みではなく、嬉しそうな笑顔。

 信頼が心地良い。
 この世界で自分の闘技が通用するのかどうか解らない。でも、燐と星璃逢は信じてくれたのだ。
 それに、燐がどうにかなると判断したなら、そうなのだろう。

「戦いの場所を教えて下さい」
 覇主可の言葉で、二人の少女が前に出た。長柄の武器を持った少女と、手甲を付けた少女。

「一緒に行こう。僕たちでも少しは役に立つかもしれない」
「あなたでダメなら、ここに居ても安全ではないし。案内します」

 覇主可は少女たちに連れられて城門に来た。

 今にも破られそうだ。魔法で強化され封印されているらしい扉が、外からの圧力に負けそうになっている。

「ありがとう、あれは開けられる?」
「できるけど、そうしたら閉じさせてくれないわよ?」
「うん、解ってる。名前を教えてくれる?」

「詩嵐武(しらべ)」
 長柄の武器を持った少女。
「舞躍夏(まどか)です」
 おそらく拳を使う少女。

「僕は覇主可。詩嵐武さん、舞躍夏さん、僕が出たら門を閉じてほしい。たぶん、閉じられる」
「……解った」

 門が開いた。
 敵兵も少女たちだった。
 予想はしていたが、覇主可には嬉しい。存分に戦うことができる……傷つけずに。

 現れた人影が無手の少年だと認識した者はいただろうか。
 覇主可は密集した敵兵の間を滑り抜けた。少女達は一瞬の出来事が何だったのか理解できない。

 覇主可は少女たちの身体に触れていた。触れられた少女は、身体が動かない、と一瞬感じる。そして熱い。股間を中心に駆け抜ける焦燥感。

 動かないと感じた身体が、動かせることも感じる。
 しかし、動いたら……何かが訪れる予感。それが経験したことのない性的快感である予感。むしろ恐怖を感じる。

 生きていれば身体は完全に静止することはない。心臓の鼓動だけでも快感を感じていることに気付く。動いたら訪れるであろう快感に耐えられると思えない。

 そこまで気付いたのは、比較的冷静な少女たちだ。反射的に覇主可を追おうとした者たちは、絶頂に身を反らせた。思考が止まる。

 立っていることができず、倒れる。凶悪な快感に耐えられない。動こうとするとまたそれが来る予感。
 覇主可が走り抜けたあとには、少女たちが倒れたり座り込んだりしている。
 
 詩嵐武と舞躍夏は門を閉じることも忘れてその光景を見ていた。
 少年のこれは闘技と呼べるのだろうか。

 敵がこの事態を把握したのは、かなりの少女たちが動けなくなってからだ。槍を構えた少女たちが指揮官を護るように隊列を作った。

 少年はかなりの速さで近づいてゆく。
 途中、止めようとする少女たちはみな動けなくなった。斬りつけ、打ち込んでも少年を捕らえられない。走り抜ける少年を狙うことがそもそも容易ではない。

 自分を狙う槍の穂先を少年は踏みしめ、跳んだ。
 空中で少年の身体を貫いたように見えた槍は、先端を優しく指先で捕らえられていた。その槍を支点にして身体を操り、他の全てを躱す。

 隊列の中に着地すると、また覇主可の舞いが始まった。
 少年を捕らえられない少女たちが動けなくなってゆく。

 指揮官の少女は最後だった。
 彼女は、この少年は止められない、と理解していた。おそらく逃げられもしない。

 彼女は多少魔法の心得があった。自分の観たものを上司に伝える。それはかろうじて間に合った。

 覇主可に触れられた。襲い来る快楽の予感に動けなくなる。
 少年に抱きかかえられた。なんだか安心した。少年に触れられると、湧き上がる性的渇望感が癒される。それではいけない、と思うが、身体の反応は止められない。怖れを感じるものではなく、安心できる快感。

「何をした? お前は何だ? 魔物か?……淫魔が戦線に投入されたのか?」
 少年は恥ずかしそうに微笑んだ。
 精神も溶かされる感じがした。憎めない。むしろ愛おしい。

 城攻めの隊が壊滅すると、他の部隊は異常事態の正体を見極めるまで動けなくなった。
 指揮官の少女が伝えた光景は少年が危険な存在であることを伝えたが、どうすれば良いのか解らない。
 ただ、少年は一旦城内に戻ったようだ。

 覇主可が戻ってきた。
「ただいま……部隊長さんらしい娘だけ、連れてきてみたけど……とりあえず、何とかなったかな?」

「お前の闘い方はアレなのか? 相手は武器を持って向かってきているのに……倒された方も納得できないな……でも何とかはなった。ありがとう。一度戻ろう。このことを報告しなきゃな」
「あなたからは拳士の感じがしたけど、違うのかしら?……まあアレができるなら、拳の威力とか必要ないのかもしれないけど」
 詩嵐武と舞躍夏は少しあきれている感じだ。少年がとりあえず皆を救ってくれたのは確かだ。しかし深刻に考えていたことが馬鹿らしくなる威力だ。

 一方的すぎて少年の実力がかえって解らない。
 これからどうなるのだろうか。

☆ 戦果を挙げた少年への御褒美は必要と言わざるを得ない

「あなたが、性的な技で主人に奉仕する存在であることも聞いています。最高の快楽を与えてくれるのでしょうね……あなたには報償が必要です。燐さんはあなたに奉仕させるだけで十分な褒美だと言っておられましたが、それでは納得できません。私たちを気持ち良くさせるのではなく、あなたが気持ち良い方法を教えなさい」
 星璃逢の言葉に、他の少女たちが反応する。褒美を与えるなら女王直々でなくても良いのではないか。

「わ、私たちも彼には感謝している、星璃逢様の手を煩わせるまでもない、私たちが彼に奉仕する」
 騎士団長の獅子桜院(ししおういん)が少し慌てて言う。

「覇主可には全員の感謝を受ける資格があります。みんながしてあげるのを止めはしません。でも、覇主可は私のモノだから、あまり譲りませんよ?」

「あの、キスしたり舐めたり、吸ったりしてもらうと……」
「何処を?」
「どこでも、気持ち良いです」
「正直に言いなさい、ココではないの?」

 星璃逢が覇主可をベッドに押し倒し、肉棒を触った。頼もしく勃起してる。

「はい、ソコはすごく気持ち良いです……」
 覇主可のような可愛い男の子に会うのは初めてだ。この世界は男性はいないのではないか、と思われるくらい少ない。それでも居ないわけではないらしく、異性とのエッチの方法は伝えられている。

 少年の衣服を脱がせ始めると、他の少女たちも群がってきた。オチン×ンが現れる。星璃逢はソレに頬擦りし、口付けした。他の少女も覇主可の身体に口付けしたり、舌を這わせたり、身体を押しつけたりしている。

 覇主可が、触れるだけで敵兵の少女たちを堕としたらしいことは聞いている。少年は今そうしようとしている訳ではないだろうが、意識しなくても微弱にその効果を発揮してしまうのではないだろうか。そんなことを感じながら少年の身体を求める。少女たちは夢中になった。
 
 星璃逢はいつしか少年の肉棒を頬張って夢中で舐めしゃぶっている自分に気がついた。コレが自分のモノだと思うと、より愛おしくなる。

 少年が気持ち良いことが伝わってくる。どうやってそれを感じているのかよく解らないが、確かに舌先に、口内にそれを感じる。やがて射精の予感。
 
 星璃逢は全て口内で受け止めるつもりだった。しかし少年の射精は初めてのお口には激しかった。美味しさに飲み込むことを忘れ、貯めきれず溢れ出してしまう。

 少年が射精した瞬間、少女たちは触れている部分が絶頂したと感じた。いわゆる絶頂とは違うのかもしれないが、激しい性的な快感はそうとしか言えない。舌が、唇が快楽に震える。

 星璃逢は飲み込むために一度お口を離した。精液を大事に飲み込んでゆく。美味しい。

 エネルギーの塊という感じのソレを飲み下すと、魔力が満ちてくる感じがした。星璃逢は専門の魔術師では無いが、魔法の心得はある。魔力の回復を感じる。

 そして身体も癒される感じがする。回復のポーションのどれよりも効く感覚。

「覇主可の精液を飲むと、回復するのかしら?」
 魔道士の芽凜愛(がりあ)がこぼれた精液を舐めて確かめる。
「それは確かみたいですね……傷ついている者、魔力を使いすぎている者に飲ませてほしいですね」

「覇主可、お願いできる?」
 少年は肯く。

「覇主可はみんなを回復させるために飲ませてくれます。彼に報いるためにも、気持ち良くさせるようにがんばりましょう。気持ち良ければ、早く射精してもらえると思いますので、多くの者が助かります」

 少女たちは口技を競い合う。互いの指や舌をしゃぶりあい、それだけで相手を絶頂させるほどの者も現れた。その技は惜しげも無く少年の肉棒に注がれる。
 回復の必要があるものが優先されたが、覇主可は全員のお口に射精することになった。 風の中で少年が舞っている。
 軽やかな動きはダンスにしか見えない。
 しかしそれは闘いの技だった。

 途中から一人の女性がそれを観ていた。
 少年の舞いが終わる。

「燐(りん)さん! 何か御用ですか?」
「おめでとう覇主可(はすか)、キミの御主人様が見つかったよ」

「えっ!」
 覇主可と呼ばれた少年が笑顔を見せる。
 しかし、すぐに少し暗い表情になった。

「僕で良いのですか? 性奴隷としてお仕えすることにも異議はないけど、闘いの技なんて一生使わなくても良いのだけど……闘わない僕は、たぶん、本当の僕じゃないです」

「大丈夫、キミを待たせたのは闘える場所を見つけてあげるためさ。ただ、依頼人は少し遠い所に居る。もう戻ってこれないかもしれない。それでも良いかい?」

「はい! 燐さんのことは信じてますから!」
 少年はまた笑顔になった。

 出立の準備を整え、案内された場所は外に出る門ではなかった。
 主に魔術を取り扱うエリアの一角だ。

 ここは少年少女を性奴隷として育てる場所だ。
 仙道や魔術、科学的なもの、いろいろなものが研究され、修行されている。
 性奴隷たちの主人となる人に最高の技で尽くすために。

 覇主可もその一人だったが、彼は闘いの技に優れていた。
 主人を護ることができるのは、悪いことでは無い。
 そのための闘技も研究されていた。

 その闘技は性技の技と混じり合い、独特のものになった。
 例えば、触れることで発情させ、動きを封じるような技。

 しかしその性闘技を極めつつある少年は、一般的な闘技を競う世界には受け入れられない。
 性奴隷として主人を悦ばせる技も相当なものだったが、この場所を取り仕切っている燐は、彼の闘技が生かされないことを良しとしなかった。

 平和な世界では闘技が実用として望まれることはあまりない。
 闘いが望まれる場所で性技で尽くす相手は見つからなかった。

 しかしようやく、尽くすべき主人が現れたようだ。
 燐がそう判断したということを覇主可は信頼していた。

 魔方陣の上に魔術的なゲートが開いている。
 魔法による転移門が必要な場所らしい。
 これほどの術を行える者がここに居たのだろうか。

「キミの御主人様は異世界のお姫様、いや、女王様だ。小さな国だと言ってたけどね。他国との争いが起こっているらしい。望まれたのは戦士だけど、キミのことを伝えたら、試してみたいと言われた。大丈夫、キミなら十分に満足させられるさ。闘いでも、ベッドでもね。男性は珍しいところらしい。性技での御奉仕も望まれてる」

 少年にとってかなり理想的な条件だ。
 異世界というのは不安要素だろうが、そんなことは気にならなかった。
 ようやく修めてきたものを発揮できる。
 育ててくれた燐に報いることでもある。

「行ってきます。ありがとうございました」
「行ってらっしゃい」
 この旅立ちは永遠の別れかもしれない。
 一抹の寂しさと、それを遥かに上回る感謝と希望。

 覇主可は未知の世界に足を踏み入れた。

☆ 異国の女王と少年の闘い

 覇主可が現れたところは、洋風の広い部屋だった。
 背後でゲートが閉じる。

 覇主可を取り囲んでいるのは全て少女だ。
 彼女たちの格好は、西洋ファンタジー風の雰囲気だった。

 正面に、一番身分が貴いのだろうと想われるドレスの少女がいる。
 この人が覇主可を求めた女王陛下だろうか。

「燐さんの所から来た、覇主可と言います。僕を買ってくださったのは貴方ですか?」

「そうです、私です。星璃逢(せりあ)と言います。この国を任されています……覇主可さんは強いのですよね? 早速、闘ってもらえませんか……でも、実はあなた一人でどうにかできるとは思えません……ごめんなさい」
 もう戦いは始まっていて、戦況は良くないようだ。

「女王や姫君たちを護って逃げてくれ……私たちが追っ手は止める」
 傷ついている騎士といった感じの少女は逃げろと言う。

 覇主可は、傷ついた少女たちが多いことに気付いた。
 おそらく魔法で外傷は塞がれているが、ダメージは残っていることが解る。

「星璃逢様、撤退されますか?」
 覇主可は主人に訊いた。
 逃げろと言ったのは主人である星璃逢ではない。

「私は逃げません。逃げるか、戦うか、どちらが良い判断か解らないけど、迷う時間はありません。あなたの力があれば何とかなると燐さんは保証してくれました。信じられないけど、信じます。お願いします、私たちみんなを護ってください」

 少年は笑った。
 微笑みではなく、嬉しそうな笑顔。

 信頼が心地良い。
 この世界で自分の闘技が通用するのかどうか解らない。
 でも、燐と星璃逢は信じてくれたのだ。
 それに、燐がどうにかなると判断したなら、そうなのだろう。

「戦いの場所を教えて下さい」
 覇主可の言葉で、二人の少女が前に出た。
 長めの武器を持った少女と、手甲を付けた少女。

「一緒に行こう……僕たちでも少しは役に立つかもしれない」
「あなたでダメなら、ここに居ても安全ではないし、案内します」

 覇主可は少女たちに連れられて城門に来た。
 今にも破られそうだ……魔法で強化され封印されているらしい扉が、外からの圧力に負けそうになっている。

「ありがとう、あれは開けられる?」
「できるけど、そうしたらたぶんもう閉じさせてくれないよ?」
「うん、解ってる。名前を教えてくれる?」

「詩嵐武(しらべ)」
 武器を持った少女。
「舞躍夏(まどか)です」
 おそらく拳を使う少女。

「僕は覇主可。詩嵐武さん、舞躍夏さん、僕が出たら門を閉じてほしい。たぶん、閉じられる」
「……解った」

 門が開いた。
 敵兵も少女たちだった。
 予想はしていたが、覇主可には嬉しい。
 存分に戦うことができる……傷つけずに。

 現れた人影が無手の少年だと認識した者はいただろうか。
 覇主可は密集した敵兵の間を滑り抜けた。
 少女達は一瞬の出来事が何だったのか理解できない。

 覇主可は少女たちの身体に触れていた。
 触れられた少女は、身体が動かない、と一瞬感じる。
 そして熱い。股間を中心に駆け抜ける焦燥感。

 動かないと感じた身体が、動かせることも感じる。
 しかし、動いたら……何かが訪れる予感。
 それが経験したことのない性的快感である予感。
 むしろ恐怖を感じる。

 生きていれば身体は完全に静止することはない。
 心臓の鼓動だけでも快感を感じていることに気付く。
 動いたら訪れるであろう快感に耐えられると思えない。

 そこまで気付いたのは、比較的冷静な少女たちだ。
 反射的に覇主可を追おうとした者たちは、絶頂に身を反らせた。
 思考が止まる。

 立っていることができず、倒れる。
 凶悪な快感に耐えられない。
 動こうとするとまたそれが来る予感。
 覇主可が走り抜けたあとには、少女たちが倒れたり座り込んだりしている。
 
 詩嵐武と舞躍夏は門を閉じることも忘れてその光景を見ていた。
 少年のこれは闘技と呼べるのだろうか。

 敵がこの事態を把握したのは、かなりの少女たちが動けなくなってからだ。
 槍を構えた少女たちが指揮官を護るように隊列を作った。

 少年はかなりの速さで近づいてゆく。
 途中、止めようとする少女たちはみな動けなくなった。
 斬りつけ、打ち込んでも少年を捕らえられない。
 走り抜ける少年を狙うことがそもそも容易ではない。

 自分を狙う槍の穂先を覇主可は踏みしめ、跳んだ。
 空中で少年の身体を貫いたように見えた槍は、先端を優しく指先で捕らえられていた。
 その槍を支点にして身体を操り、他の全てを躱す。

 隊列の中に着地すると、また覇主可の舞いが始まった。
 少年を捕らえられない少女たちが動けなくなってゆく。

 指揮官の少女は最後だった。
 彼女は、この少年は止められない、と理解していた。
 おそらく逃げられもしない。

 彼女は多少魔法の心得があった。
 自分の観たものを上司である将軍に伝える。
 それはかろうじて間に合った。

 覇主可に触れられた。
 襲い来る快楽の予感に動けなくなる。
 少年に抱きかかえられた。
 なんだか安心した。少年に触れられると、湧き上がる性的渇望感が癒される。
 それではいけない、と思うが、身体の反応は止められない。
 怖れを感じるものではなく、安心できる快感。

「……何をした? お前は何だ? 魔物か?……淫魔が戦線に投入されたのか?」
 少年は恥ずかしそうに微笑んだ。
 精神も溶かされる感じがした。
 憎めない。むしろ愛おしい。

 城攻めの隊が壊滅すると、他の部隊は異常事態の正体を見極めるまで動けなくなった。
 指揮官の少女が伝えた光景は少年が危険な存在であることを伝えたが、どうすれば良いのか解らない。
 ただ、少年は一旦城内に戻ったようだ。

 覇主可が戻ってきた。
「ただいま……部隊長さんらしい娘だけ、連れてきてみたけど……とりあえず、何とかなったかな?」

「お前の闘い方はアレなのか? 相手は武器を持って向かってきているのに……倒された方も納得できないな……でも何とかはなった。ありがとう。一度戻ろう。このことを報告しなきゃな」
「あなたからは拳士の感じがしたけど、違うのかしら?……まあアレができるなら、拳の威力とか必要ないのかもしれないけど」
 詩嵐武と舞躍夏は少しあきれている感じだ。
 少年がとりあえず皆を救ってくれたのは確かだ。
 しかし深刻に考えていたことが馬鹿らしくなる威力だ。

 一方的すぎて少年の実力がかえって解らない。
 これからどうなるのだろうか。

☆ 戦果を挙げた少年への御褒美は必要と言わざるを得ない

「あなたが、性的な技で主人に奉仕する存在であることも聞いています。最高の快楽を与えてくれるのでしょうね……あなたには報償が必要です……燐さんはあなたに奉仕させるだけで十分な褒美だと言っておられましたが、それでは納得できません。私たちを気持ち良くさせるのではなく、あなたが気持ち良い方法を教えなさい」
 星璃逢の言葉に、他の少女たちが反応する。
 褒美を与えるなら女王直々でなくても良いのではないか。

「わ、私たちも彼には感謝している、星璃逢様の手を煩わせるまでもない、私たちが彼に奉仕する」
 騎士団長の獅子桜院(ししおういん)が少し慌てて言う。

「覇主可には全員の感謝を受ける資格があります。みんながしてあげるのを止めはしません。でも、覇主可は私のモノだから、あまり譲りませんよ?」

「あの、キスしたり舐めたり、吸ったりしてもらうと……」
「何処を?」
「どこでも、気持ち良いです」
「正直に言いなさい、ココではないの?」

 星璃逢が覇主可をベッドに押し倒し、肉棒を触った。
 頼もしく勃起してる。

「はい、ソコはすごく気持ち良いです……」
 覇主可のような可愛い男の子に会うのは初めてだ。
 この世界は男性はいないのではないか、と思われるくらい少ない。
 それでも居ないわけではないらしく、異性とのエッチの方法は伝えられている。

 少年の衣服を脱がせ始めると、他の少女たちも群がってきた。
 オチン×ンが現れる。
 星璃逢はソレに頬擦りし、口付けした。
 他の少女も覇主可の身体に口付けしたり、舌を這わせたり、身体を押しつけたりしている。

 覇主可が、触れるだけで敵兵の少女たちを堕としたらしいことは聞いている。
 少年は今そうしようとしている訳ではないだろうが、意識しなくても微弱にその効果を発揮してしまうのではないだろうか。
 そんなことを感じながら少年の身体を求める。
 少女たちは夢中になった。
 
 星璃逢はいつしか少年の肉棒を頬張って夢中で舐めしゃぶっている自分に気がついた。
 コレが自分のモノだと思うと、より愛おしくなる。

 少年が気持ち良いことが伝わってくる。
 どうやってそれを感じているのかよく解らないが、確かに舌先に、口内にそれを感じる。
 やがて射精の予感。
 
 星璃逢は全て口内で受け止めるつもりだった。
 しかし少年の射精は初めてのお口には激しかった。
 美味しさに飲み込むことを忘れ、貯めきれず溢れ出してしまう。

 少年が射精した瞬間、少女たちは触れている部分が絶頂したと感じた。
 いわゆる絶頂とは違うのかもしれないが、激しい性的な快感はそうとしか言えない。
 舌が、唇が快楽に震える。

 星璃逢は飲み込むために一度お口を離した。
 精液を大事に飲み込んでゆく。美味しい。

 エネルギーの塊という感じのソレを飲み下すと、魔力が満ちてくる感じがした。
 星璃逢は専門の魔術師では無いが、魔法の心得はある。
 魔力の回復を感じる。

 そして身体も癒される感じがする。
 回復のポーションのどれよりも効く感覚。

「覇主可の精液を飲むと、回復するのかしら?」
 魔道士の芽凜愛(がりあ)がこぼれた精液を舐めて確かめる。
「それは確かみたいですね……傷ついている者、魔力を使いすぎている者に飲ませてほしいですね」

「覇主可、お願いできる?」
 少年は肯く。

「覇主可はみんなを回復させるために飲ませてくれます。彼に報いるためにも、気持ち良くさせるようにがんばりましょう。気持ち良ければ、早く射精してもらえると思いますので、多くの者が助かります」

 少女たちは口技を競い合う。
 互いの指や舌をしゃぶりあい、それだけで相手を絶頂させるほどの者も現れた。
 その技は惜しげも無く少年の肉棒に注がれる。
 回復の必要があるものが優先されたが、覇主可は全員のお口に射精することになった。

☆ 初めての夜はうまくいかない

 覇主可を警戒したらしく、敵軍はまだ動かない。少女たちも少年のおかげでかなり回復した。

 傷ついた者たちが一通り回復すると、覇主可を勝手に求めることは禁止された。覇主可から求められた場合はその限りではない。

 少年はその働きに報いる褒美として、少女たちを自由に求めることを許された。拒否する少女に強要することは禁じられたが、それはあまり無さそうだ。

 勝手に求めるのは禁止されたとは言っても、望めば覇主可は誰にでも愛させてくれそうだ。ただ、彼の主人が女王の星璃逢だということもあり、みんな少し遠慮した。

 そんな中で、遠慮しない少女が居た。
 沙流蘭(しゃるら)。星璃逢の姉にあたる姫君だ。

 今も少年にしゃぶりついている。
「お姉様は状況を解ってないのかしら?」
 星璃逢が不機嫌そうにしている。
「覇主可さんが拒否しないなら、止めません。んんっ……」

 沙流蘭が少年を独占していることで、他の少女たちはかえって他のことに集中することができていた。覇主可に触れること、誘惑することをとりあえずは我慢することができた。星璃逢の姉である沙流蘭なら、それなりに納得できる。

 それが解るので、星璃逢も強く言えない。それに星璃逢が今、少年に溺れるわけにもいかない。

 夜になると、覇主可は星璃逢のベッドで休むことになった。初めての夜に星璃逢も期待が抑えられない。

 沙流蘭もなんだかついてきた。さすがに星璃逢が怒る。
「なんでお姉様も一緒なんですか! 自分の部屋があるでしょう!」
「星璃逢、独り占めはずるい……覇主可を一人で受け止めきれるの? 星璃逢のベッド広いし、みんな入れると思うけど……」
 沙流蘭も退かない。

 覇主可はそのとき、少し違和感を感じていた。危険の気配。どこからだろうか。
 隠形術に長けた者が近づいているような気がした。

 突然、背後から抱きすくめられ、口を塞がれる。首では無く、口を狙ったフェイスロックだ。声を上げさせないことが第一らしい。

 噛みつくこともできたが、覇主可はそうしなかった。毒の気配。襲撃者の身体に塗られているのだろうか。
 いや、身体をそのように造り変えているようだ。毒手、という技のことを思い出した。

 襲撃者の指先は覇主可の首筋に食い込んでいる。毒が染みこんでくる。
 襲撃者が少女であることは背後の感触で解る。

 星璃逢と沙流蘭はこちらに気付いていない。覇主可も気付かせないことに決めた。襲撃者は気付かれなければ、他の者には危害を加えないかもしれない。おそらく自分が標的だろう。

 密着状態なら覇主可もその技を存分に使うことができる。少女の反応が伝わってくる。
 すでに感じたことのない性的快感に襲われているはずだが、声も上げないのはさすがだ。

 少女の毒が、覇主可に染みこんでゆく。かなり強い毒だ。おそらく、ここまで耐えられたのは覇主可が初めてだろう。他の相手なら、最初に触れただけで目的を達していたはずだ。

 覇主可は自分の身体を調整して毒に耐えつつ、少しづつ解毒している。致命的な器官に毒素が達しないように体内をコントロールする。そのまま排出してしまいたいが、毒も意思を持つかのように身体の奥に行きたがっているのを感じる。

 このまま毒を注がれ続けたら、耐えられるかどうか解らない。覇主可は少女の身体を探った。

 性器に触れる寸前、少女が離れた。そこに触れられたら耐えられないことを察したようだ。

 少女も動くことで凶暴な快感に襲われている。それでもまだ動けたのは、覇主可に触れていたからだろう。
 満たされない感覚は少年に触れていると少し癒やされるのだ。

 覇主可はすぐに少女を捕らえようとしたが、毒が思ったより手強い。身体が思うように動かせない。
 毒の効果もあるが、解毒に集中しなければならないことが大きい。

 暗殺者らしい少女は星璃逢を捕らえた。
 少女に抱きかかえられたとき、ようやく星璃逢は異変に気付いた。意識が途切れる。少女に眠らせられた。眠り薬も使うようだ。

 ようやく覇主可が声を出せたとき、もう少女の姿は消えていた。
 星璃逢とともに。

 沙流蘭には何が起こったのか解らなかった。星璃逢が消え、覇主可は思うように動けないようだ。それでも他の者に異変を伝えることはできた。

 覇主可は少しして回復した。
「星璃逢様が連れ去られた。僕を倒しに来た暗殺者に連れ去られた。助けに行きます」

「何処にいるか解るのか? 少し待て。芽凜愛は占術にも長けている」
 騎士団長の獅子桜院に止められた。

「敵陣の本部に連れてゆかれたようだ……止めはしないが、お前を倒すための策に飛び込むことになるぞ」

「星璃逢様は、護ります。城とみんなをお願いします」
 覇主可がいない間、敵の攻撃があるかもしれない。
「お前のおかげでみんな回復している。こちらを気にする必要はない。行ってこい」

 少年は少女に軽くキスすると、風のように走り去った。
 見送る少女は、少年を少し憎らしく思っている自分に気付いた。
 他の女を助けに行くときに、これはないな、と思った。

☆ 双子の闘士

 覇主可は夜の中を走った。
 暗殺者らしい少女は気配を残していなかったが、星璃逢の気配が残っていた。

 星璃逢はやはり敵陣に連れてゆかれたようだ。遠くへ行くことになっても追うつもりだったが、そうせずに済んだようだ。

 見張りが居たが、気配を殺して行動することは覇主可にもできた。何人かの少女は動けなくする必要があったが、触れるだけで声も出させないようにできる少年には問題ではなかった。

 天幕で囲まれた本陣らしい所から星璃逢の気配を感じる。待ち構えられている感じがする。

 見張りがいないそこに入るとき、覇主可は隠れなかった。おそらく誰かが自分を待っている。

 星璃逢と暗殺者の少女、そして初めて見る少女が待っていた。星璃逢は拘束され、口元を布で覆われていた。

 見知らぬ少女は軽装に見えるが、戦闘用らしい装備をしている。暗殺者の少女にそっくりだ。姉妹だろうか。
 短めの二本の剣を帯びていた。

「ようこそ。星璃逢姫に手を出して済まなかった。でも、キミのことは何とかしないとね。相手は僕たち二人。僕は映離射(はりさし)、そっちは姉の愛舞綺(いとまき)。名前を教えてくれないか?」

「覇主可です。あなたたちを倒せば、星璃逢様を帰してもらえますか?」
「連れてゆきたまえ。僕たちに勝ったらね」

 映離射が双剣を抜いた。
 愛舞綺は動かない。

「みんなキミと戦いたがった。僕は、他の者にはキミに挑むことを禁じた。たぶんかなわないからね。僕でも無理かもしれない。でも、僕は、キミのように強いヤツと闘うことの魅力に抗えなかった」

 自分の技を知っているであろう相手に、戦いを望まれている。
 そして彼女が望むのは自分が与える快楽ではないようだ。

「それならば、普通の技でお相手します。あなたとは普通の技で闘いたいと僕が思ったから、勝手にそうします。これは僕の甘さです。そこに隙もあるかもしれません。でも、それで負けても後悔はしません」
 その言葉は、惑わせるための策略とも感じられない。おそらく少年は今、快楽の技を使わないだろう。

「ありがとう。でも、こちらは手加減しない」
 映離射は微笑むと、左手の剣を投げた。
 開始の合図は無い。覇主可もそれをとがめるつもりは無い。

 覇主可はわずかに移動してそれを避けた。頬をかすめたように見えたが、触れてはいない。

 飛翔する剣が視界から消えた瞬間、映離射の右手がわずかに動いた。
 そちらも投げつけられるのかと思った覇主可が一瞬で踏み込む。

 その動きが幸いした。
 映離射の視線が一瞬、覇主可の背後を観ていた。最初の剣が落ちたり、何かに当たった気配は無かった。
 覇主可は大きく身を躱す。

 剣が覇主可の背後から飛んできて映離射の手に収まった。
 躱さなければ覇主可を捕らえていただろう。映離射の二つの剣は自在に引き合い、空中でも方向転換できるらしい。

 左手の剣が覇主可の頭上に投げ上げられた。同時に映離射が低い体勢で突き込んでくる。
 脚へのタックルに近い。脚を取られれば頭上の剣は躱せないだろう。

 覇主可は跳んだ。
 頭上の剣が方向を変えて向かってきたが、優しく指先で捕らえ、受け流す。
 そのまま剣の柄を取り、一緒に落ちてゆく。

 着地点で迎え撃つ映離射の剣が、覇主可の剣と交錯し、巻き流される。同時に覇主可の指先が映離射の喉元に伸びる。
 指先の突きを躱したとき、それは翻って顎をかすめた。

 弾かれるような衝撃と、脳震盪のダメージ。覇主可の指先による寸頸は相当な衝撃があった。
 そして水月へ触れる指先と、体幹に響く衝撃。
 衝撃もかなりのものだが、正確に急所に当てられたことで映離射は動けなくなった。

「私には、全力を出せ」
 愛舞綺が走り出した。

 戦いの技が実用であるこの世界でも、愛舞綺の毒の技は忌まれるものかもしれない。
 覇主可は自分の技も似たようなものだと思う。

 毒を使う少女が、その技を自分と同じように磨き上げてきたことは、最初の襲撃のとき感じている。
 反則技を使う者同士なら、ある意味正々堂々の戦いになるのではないかと思う。

 恋人の胸に飛び込むかのように、愛舞綺が覇主可を押し倒そうとする。
 恋人を受け止めるかのように、覇主可は愛舞綺を抱きとめた。

 触れた部分から、毒と快感が二人に染みこんでゆく。愛舞綺は覇主可を押し倒すと、手品のように素早くアンダーを脱がせた。

 覇主可の肉棒は勃起している。少年が性技の技を使うとき、こうなっていることには気付いていた。
 濡れた秘所に導く。少年は抵抗しない。彼の技を活かすなら当然だろう。

 指先が触れるだけで動けなくなるほどの快感を与えることができる少年に、一番敏感な部分を貫かれた。
 愛舞綺は自分に薬を使って感覚を弱めていた。それでも凄まじい快感が駆け抜ける。

 覇主可は少女の膣内が致死の毒壺であることは予想していた。
 だが、最初に注入された毒もそんなに手加減はしていなかったはずだ。耐えられると思っていた。

 しかし予想より毒が強い。子宮から危険な気配を感じる。そこに仕込まれたものに触れたら、耐えられないかもしれない。

 子宮口が開くより、覇主可の射精が早かった。
 どんな回復のポーションより効く、と星璃逢が評した精液が子宮を洗う。
 害する液と癒やす液がせめぎ合い、混じり合って、無害で薬効もないものになった。

 覇主可が愛舞綺の唇を奪った。愛舞綺の舌が入り込んで来て、毒液でもある唾液が流し込まれる。かまわず舌を吸い出し、絡めとる。

 交合している性器と、絡め合う舌。入り口と出口を得て、覇主可のエネルギーが愛舞綺の身体を巡り始める。
 子宮より深いところ、本来なら届くはずの無い敏感なところが熱を帯びてゆく。

 その熱、どこか満たされないものが解放されるとき、自分は堕ちるだろう、と愛舞綺は思った。すでに身体を動かすことはできない。
 それでも毒を注ぎ続ける。
 射精しないと、私を堕とさないと死ぬよ、とねだるかのように。

 二度目の射精で、愛舞綺は堕ちた。
 精神を犯される快楽。愛おしさが止まらない。そうさせる技によるものであることは解る。それでも、そこまで磨き上げた使い手を自分は認めたのだ、とも思う。

 唇が解放されると、声は出せるらしいことを感じた。
「負けた……もう私はお前を殺せない……」
 暗殺者として終わったかもしれない、と思った。この少年に対する任務は果たせないだろう。

 少年が微笑む。
 その微笑みにとどめをさされた、と思った。暗殺者の自分が死んだのかもしれない。

「一つ教えてくれ……私の身体を愉しんだか?」
「うん、気持ち良かった……」

「私とこうして死なないのはお前だけだ……お前は女に困らないだろうが、もし私をときどき使ってくれるなら、その、うれしい……お前と一緒に行く。誘惑の技も磨く。私を抱きたいと思わせてみせるぞ」
「じゃあ、ひとつ約束してほしい。これから、致死の毒はできるだけ使わないでほしい」

「了解した。だが、それにはお前の協力が必要だ。私の子宮を、お前の精で何度も洗う必要がある。身体に染みこんだ毒を和らげるために、飲ませてももらうぞ。もちろんお前にたくさん射精してもらうためにがんばるぞ。それから、何かあったら何でも言え。たぶん私はお前の頼みを断れない」

 愛舞綺は少年にくちづけしようとしたが、身体はまだ思うように動かない。
 すると覇主可の方からキスされた。

 少年に心を読まれたのか、偶然か解らない。
 そのキスに満足しながらも、この少年は無意識にでも女をその気にさせるのではないかと感じて、少し嫉妬した。 覇主可は夜の中を走った。
 暗殺者らしい少女は気配を残していなかったが、星璃逢の気配が残っていた。

 星璃逢はやはり敵陣に連れてゆかれたようだ。
 遠くへ行くことになっても追うつもりだったが、そうせずに済んだようだ。

 見張りが居たが、気配を殺して行動することは覇主可にもできた。
 何人かの少女は動けなくする必要があったが、触れるだけで声も出させないようにできる少年には問題ではなかった。

 天幕で囲まれた本陣らしい所から星璃逢の気配を感じる。
 待ち構えられている感じがする。

 見張りがいないそこに入るとき、覇主可は隠れなかった。
 おそらく誰かが自分を待っている。

 星璃逢と暗殺者の少女、そして初めて見る少女が待っていた。
 星璃逢は拘束され、口元を布で覆われていた。

 見知らぬ少女は軽装に見えるが、戦闘用らしい装備をしている。
 暗殺者の少女にそっくりだ。姉妹だろうか。
 短めの二本の剣を帯びていた。

「ようこそ。星璃逢姫に手を出して済まなかった。でも、キミのことは何とかしないとね。相手は僕たち二人。僕は映離射(はりさし)、そっちは姉の愛舞綺(いとまき)。名前を教えてくれないか?」

「覇主可です。あなたたちを倒せば、星璃逢様を帰してもらえますか?」
「連れてゆきたまえ。僕たちに勝ったらね」

 映離射が双剣を抜いた。
 愛舞綺は動かない。

「みんなキミと戦いたがった。僕は指揮官の権限で、他の者にはキミに挑むことを禁じた。たぶんかなわないからね。僕でも無理かもしれない。でも、僕はキミと闘うことの魅力に抗えないくらいにはバカだったのさ」

 自分の技を知っているであろう相手に、戦いを望まれている。
 そして彼女が望むのは自分が与える快楽ではないだろう。

「それならば、普通の技でお相手します。あなたとは普通の技で闘いたいと僕が思ったから、勝手にそうします。これは僕の甘さです。そこに隙もあるかもしれません。でも、それで負けても後悔はしません」
 その言葉は、惑わせるための策略とも感じられない。
 おそらく少年は今、快楽の技を使わないだろう。

「ありがとう。でも、こちらは手加減しない」
 映離射は微笑むと、左手の剣を投げた。
 開始の合図は無い。覇主可もそれをとがめるつもりは無い。

 覇主可はわずかに移動してそれを避けた。
 頬をかすめたように見えたが、触れてはいない。

 飛翔する剣が視界から消えた瞬間、映離射の右手がわずかに動いた。
 そちらも投げつけられるのかと思った覇主可が一瞬で踏み込む。

 その動きが幸いした。
 映離射の視線が一瞬、覇主可の背後を観ていた。
 最初の剣が落ちたり、何かに当たった気配は無かった。
 覇主可は大きく身を躱す。

 剣が覇主可の背後から飛んできて映離射の手に収まった。
 躱さなければ覇主可を捕らえていただろう。
 映離射の二つの剣は引き合い、空中でもコントロールできるらしい。

 左手の剣が覇主可の頭上に投げ上げられた。
 同時に映離射が低い体勢で突き込んでくる。
 脚へのタックルに近い。
 脚を取られれば頭上の剣は躱せないだろう。

 覇主可は跳んだ。
 頭上の剣が方向を変えて向かってきたが、優しく指先で捕らえ、受け流す。
 そのまま剣の柄を取り、一緒に落ちてゆく。

 着地点で迎え撃つ映離射の剣が、覇主可の剣と交錯し、巻き流される。
 同時に覇主可の指先が映離射の喉元に伸びる。
 指先の突きを躱したとき、それは翻って顎をかすめた。

 弾かれるような衝撃と、脳震盪のダメージ。
 覇主可の指先による寸頸は相当な衝撃があった。
 そして水月へ触れる指先と、体幹に響く衝撃。
 衝撃もかなりのものだが、正確に急所に当てられたことで映離射は動けなくなった。

「私には、全力を出せ」
 愛舞綺が走り出した。

 戦いの技が実用であるこの世界でも、愛舞綺の毒の技は忌まれるものかもしれない。
 覇主可は自分の技も似たようなものだと思う。

 毒を使う少女が、その技を自分と同じように磨き上げてきたことは、最初の襲撃のとき感じている。
 反則技を使う者同士なら、ある意味正々堂々の戦いになるのではないかと思う。

 恋人の胸に飛び込むかのように、愛舞綺が覇主可を押し倒そうとする。
 恋人を受け止めるかのように、覇主可は愛舞綺を抱きとめた。

 触れた部分から、毒と快感が二人に染みこんでゆく。
 愛舞綺は覇主可を押し倒すと、手品のように素早くアンダーを脱がせた。

 覇主可の肉棒は勃起している。
 少年が性技の技を使うとき、こうなっていることには気付いていた。
 濡れた秘所に導く。少年は抵抗しない。彼の技を活かすなら当然だろう。

 指先が触れるだけで動けなくなるほどの快感を与えることができる少年に、一番敏感な部分を貫かれた。
 愛舞綺は自分に薬を使って感覚を弱めていた。
 それでも凄まじい快感が駆け抜ける。

 覇主可は少女の膣内が致死の毒壺であることは予想していた。
 だが、最初に注入された毒もそんなに手加減はしていなかったはずだ。
 耐えられると思っていた。

 しかし予想より毒が強い。
 子宮から危険な気配を感じる。
 そこに仕込まれたものに触れたら、耐えられないかもしれない。

 子宮口が開くより、覇主可の射精が早かった。
 どんな回復のポーションより効く、と星璃逢が評した精液が子宮を洗う。
 害する液と癒やす液がせめぎ合い、混じり合って、無害で薬効もないものになった。

 覇主可が愛舞綺の唇を奪った。
 愛舞綺の舌が入り込んで来て、毒液でもある唾液が流し込まれる。
 かまわず舌を吸い出し、絡めとる。

 交合している性器と、絡め合う舌。
 入り口と出口を得て、覇主可のエネルギーが愛舞綺の身体を巡り始める。
 子宮より深いところ、本来なら届くはずの無い敏感なところが熱を帯びてゆく。

 その熱、どこか満たされないものが解放されるとき、自分は堕ちるだろう、と愛舞綺は思った。
 すでに身体を動かすことはできない。
 それでも毒を注ぎ続ける。
 射精しないと、私を堕とさないと死ぬよ、とねだるかのように。

 二度目の射精で、愛舞綺は堕ちた。
 精神を犯される快楽。愛おしさが止まらない。
 そうさせる技によるものであることは解る。
 それでも、そこまで磨き上げた使い手を自分は認めたのだ、とも思う。

 唇が解放されると、声は出せるらしいことを感じた。
「負けた……もう私はお前を殺せない……」
 暗殺者として終わったかもしれない、と思った。
 この少年に対する任務は果たせないだろう。

 少年が微笑む。
 その微笑みにとどめをさされた、と思った。
 暗殺者の自分が死んだのかもしれない。

「一つ教えてくれ……私の身体を愉しんだか?」
「うん、気持ち良かった……」

「私とこうして死なないのはたぶんお前だけだ……お前は女に困らないだろうが、もし私をときどき使ってくれるなら、その、うれしい……お前と一緒に行く。誘惑の技も磨く。私を抱きたいと思わせてみせるぞ」
「じゃあ、ひとつ約束してほしい。これから、致死の毒はできるだけ使わないでほしい」

「了解した。だが、それにはお前の協力が必要だ。私の子宮を、お前の精で何度も洗う必要がある。身体に染みこんだ毒を和らげるために、飲ませてももらうぞ。もちろんお前にたくさん射精してもらうためにがんばるぞ。それから、何かあったら何でも言え。たぶん私はお前の頼みを断れない」

 愛舞綺は少年にくちづけしようとしたが、身体はまだ思うように動かない。
 すると覇主可の方からキスされた。

 少年に心を読まれたのか、偶然か解らない。
 そのキスに満足しながらも、この少年は無意識にでも女をその気にさせるのではないかと感じて、少し嫉妬した。

☆ 御主人様を安心させる方法

 映離射は動けるようになっていたようだ。愛舞綺が覇主可に負けた、と宣言したあたりで、動けるようになった。

「お似合いだね。でも、僕も仲間に入れて欲しいな。愛舞綺姉さんは僕の恋人でもあったんだから、その代わりに僕も愛してよ」

 彼女は星璃逢の拘束を外した。
 最後に口元を覆っていた布が外されると、星璃逢は愛舞綺を押しのけるように覇主可に飛びついて口付けした。

「覇主可、ありがとう、ごめんなさい、迷惑をかけて……でも、助けてくれたことはうれしいけど、なんで私に最初にしてくれなかったの?……この世界に来てからオマ×コに入れたの、初めてよね?」
 愛舞綺はまだ覇主可とつながっている。

 愛舞綺の膣肉が歓喜に躍動し始める。腰が動き始めた。快楽に弛緩して動けなかったが、少年の初めての相手をしたという感動が回復させたようだ。

「なんだ、私が初めてだったのか? では、これから他の女とするのは浮気だぞ? もちろんかまわない、全て許す、むしろ嬉しい……お前が多くの女に愛されるほど、お前の最初の女であることに優越感を感じられる」
「そんなの、戦いのためのエッチはノーカウントですわ!」
「さっきのはそうかもしれない。でも、今からのこれは戦いのためではないぞ?」

 愛舞綺の膣は献身的に覇主可に奉仕した。少年を感じさせようとするほど、自分も狂いそうな快楽に焼かれる。でも、それで壊れても良いと思った。

 覇主可は愛舞綺の膣内でまた射精した。愛舞綺の精神を気遣ったこともあるが、少女の気持ちに応えたいとも思った。愛舞綺はまた幸せに動けなくなった。

 覇主可が離れることを止められない。抜かれる寂しさに、自分がどれほど堕とされたか知った。

 すぐに星璃逢が覇主可を押し倒した。
「覇主可っ! 他の娘にしたら、私にも同じだけしなさい! それは私への奉仕とも、あなたへの御褒美とも別です! あなたが私のものなら、その証を見せなさい!」

 そんなことをしたら、一日の半分は星璃逢を抱いていなくてはならない。でも覇主可は主人の言葉が嬉しかった。
「申し訳ありませんでした、星璃逢様。僕はあなたのもので、コレもあなたのものなのに」

 一刻も早く脱出すべきだろうが、今星璃逢を抱かなければ、後悔すると思った。
 覇主可は星璃逢に肉棒を差し出した。星璃逢はそれにくちづけし、愛おしそうに頬擦りする。

「私にもしてくれますわね?」
 してくれないわけはないのだが、確認してしまう。

 覇主可を買ったのは確かに自分だ。
 でも、契約の主従関係だけが覇主可を自分につなぎ止めているとしたら……
 もし少年を契約から解放したら、それでも自分の相手をしてくれるのだろうか。

「覇主可、あなたはもう十分すぎるほど働いてくれています……燐さんにお支払いしたものは、こちらの世界ではたいした価値ではないものです……あなたの世界では価値があるそうですが」
 この世界では錬金術の発達のため、貴金属の価値はそれほどでもない。覇主可の値段は普通の戦闘士より安いくらいで、しかもそれで一生仕えてくれるという。

 異世界の闘技に期待しなかった訳ではないが、値段としては期待が持てるほどではなかった。それでも財政難の星璃逢女王はそれに賭け、その賭けに勝ったのだが。

「本来なら、あなたにはもっとたくさんの褒美を与えなければなりません。最初の働きだけでも、あなたのお値段で得られるものではないのです。でも、あまり財政に余裕は無いです。あなたには性愛の相手をすることも報酬ではないでしょう。むしろ、あなたに相手をしてもらったら、それに報酬を出さなければならないでしょう……」

「つまりもう、契約は十分に果たされているのです……あなたは自由なのです。私に買われたからあなたが尽くしてくれているなら、それはもう止めてください」

「ただ……あなたがそれでも私に仕えてくれるのなら、私を愛しているとみなします。愛してくれるなら、私を納得させてください。あなたが他の女の子に手を出しても、私のところに帰ってくると信じられるくらい」
 少年の愛を確かめる形だが、これは星璃逢からの愛の告白だろう。

「星璃逢様、先程の御命令通り、他の女の子にした分は星璃逢様にもさせていただきます。その分は星璃逢様に拒否されてもします……僕の相手をすることは報酬にならないと言われましたが、僕だってエッチも好きです……特に好きな人とは。今言った分のエッチは報酬として頂く訳ではありません。僕の愛を示すためです。報酬も頂けるなら、もっとさせていただきます……星璃逢様は特別なんです」

 覇主可は星璃逢の秘唇をぺろりと舐めた。どこか満たされない快感が星璃逢を襲う。このまま放っておかれたら、精神が壊れるだろう。

 少年が入ってきた。
 満たされる絶頂に、何もかも忘れる。

 膣肉が勝手に動いて、少年を貪っているような感覚。舌でねぶるように、オマ×コでオチン×ンの味を、感触を味わえる気がする。
 覇主可にそうできるようにされているようだ。少年のオチン×ンにオマ×コを調教されている感じがする。

 思い切り締め付け、味わう。
 少年が動き始める。
 抜かせまいと締め付け絡みつく方法を覚えた。

 射精は一番奥でされた。
 オマ×コ以外動けなくなった。
 そこだけなんだか動かせる気がするのは少年を求めるためだろうか。
 必死に絡みつけ、締め付けた。
 抜かずにもう一度射精された。

 覇主可が離れても動けない。
「僕たちにした分は、またお姫様にもするんだろう? じゃあ遠慮はしないよ。いっぱいお姫様にして、壊してしまえばいいさ。正直うらやましい」
 そう言って、映離射が少年の肉棒を頬張るのが見えた。
 あの分は帰ったらしてもらおう。

☆ 負ければ愛してもらえるとしても、全力でできるうちに

 星璃逢を抱えて覇主可は城に戻った。
 映離射と愛舞綺もついてきた。

 迎えた獅子桜院は、映離射と愛舞綺を見とがめた。
「お前にやられた者は、お前に忠誠を誓うだろうが、敵だった者たちだ。それを受け入れろというなら、私たちも倒して、従わせろ」
 獅子桜院が剣を抜こうとすると、詩嵐武と舞躍夏が進み出た。

「覇主可、初めてキミの技を見たときから、闘いたいと思っていた。やっと口実ができた。遠慮無く私たちを倒せ。愛人を増やすなら、お前がそれに値すると納得させろ」
「私たち二人一緒でも、かまわないでしょう? そのくらいでなければ、あなたが楽しめないでしょうから。闘うこと、好きよね?」

 獅子桜院はため息をついて先鋒を譲った。自分も覇主可に文句をつけたのは、闘ってみたいからだ。

「何をしているのです! 味方同士で……止めなさい!」
 星璃逢が叱って止めようとしたが、愛舞綺が星璃逢を止めた。

「星璃逢女王、私たちを寝返らせたのも覇主可の技だが、そのことは、私の毒の技よりある意味卑怯で、受け入れられることじゃない。そしてたぶん、覇主可に惹かれるのは敵だけじゃない。味方も、彼に負けたくなるだろう」

「全力を出せるうちに、全力で挑むしかないのさ。手加減したくさせるのも、覇主可の技のうちだけど、全力で戦えるうちに、戦った方が納得しやすい。これからも覇主可を闘わせるなら、必要なことだ」

 星璃逢は覇主可がもう闘わなくても良い、闘って欲しくないとも思う。無敵に思える覇主可でも、いつか傷つき、敗れ、死ぬかもしれない。

 しかしもともと覇主可に望んだのは、闘ってもらうことだ。覇主可が、闘えるから自分のところに来てくれたことも解る。
 少年への本当の報酬は、奪ってはいけないものは、闘いなのだ。

「……解りました。それを望む者は、覇主可に挑むことを許可します」

 覇主可はやや戸惑いながらも、詩嵐武と舞躍夏の技に興味を感じていた。

 やはり開始の合図は無かった。

 詩嵐武の武器は長い。
 先端の刃は手元の操作で槍にも鎌にもなった。彼女は覇主可が槍をものともしなかったのを見ている。

 舞躍夏は手甲を着けている。鎧も刃も持たぬ少年には本来不要かもしれない。しかしこの少年に生身で触れるわけにもいかない。

 詩嵐武の横薙ぎの攻撃を覇主可は跳んで避け、逆立ちに近い姿勢で刃を捕らえた。少年の指先は全てのものを優しく捕らえる。

 詩嵐武の長柄の上に、舞躍夏も居た。覇主可の動きを予測していた。
 体重を消す技は魔法によるものか、修練のたまものか。

 体当たりのような拳打が覇主可の腹部に撃ち込まれる。全員が爆発のような衝撃を感じた。この世界で覇主可の身体をまともに捉えた攻撃はこれが初めてだ。

 しかし、拳は覇主可に触れていなかった。わずかな間隔が空いている。
 舞躍夏は見えない何かに受け止められた、と感じた。

 覇主可の自由な方の指先が、舞躍夏の腕の手甲に覆われていない部分に触れた。舞躍夏は動けなくなる快楽を予感しながら、少年の手を捉えて投げようとした。

 覇主可に触れたことが幸いして、舞躍夏は動くことができた。捨て身投げのモーションに少年が巻き込まれる。

 詩嵐武は着地前の覇主可を突いた。モーションを支配しているのは舞躍夏だ。避けられないだろう。

 覇主可から見えない何かが発し、槍を逸らした。舞躍夏の拳を受け止めたのと同じ力のようだ。

 舞躍夏は快楽を打ち込まれ、もう身体をコントロールできなかった。
 舞躍夏と覇主可はもつれ合ったまま詩嵐武にぶつかってきた。ありえない動きだ。
 覇主可があの力で方向を変えたのだろう。

 舞躍夏がいなければ何とか攻撃できたかもしれない。詩嵐武は思わず舞躍夏を受け止めてしまった。
 快楽の予感。

 覇主可に触れた覚えはない。覇主可の快楽は舞躍夏の身体を伝わって詩嵐武を捕らえたようだ。
 直接触られなかったことに、少し腹が立った。

 覇主可はすでに離れている。追うために動けば、快楽に倒れるだろう。
 詩嵐武はそうした。動けなくなる快楽の技を体験してみたかった。

 詩嵐武と舞躍夏は動けなくなった。
 獅子桜院が前に出た。

 獅子桜院は覇主可の見えない力のようなものの正体を知りたいと思った。以前は使っていなかったと思う。
 最初に愛舞綺に襲われたときも、使わなかったのではないか。たぶん、そのときは使えなかったのだ。

「覇主可、その見えない力……おまえのこれまでの技とは異質に感じる。良かったら後で教えてくれ」
 気軽に話しかけながら、剣を抜いた。

 獅子桜院が構えた瞬間、覇主可には他の全てが見えなくなった。ただ美しい剣士だけが居る。

 これは一種の魅了の技だ。性的なものでもなく、ただ美しさに目を奪われる、そのことを昇華したのだろう。
 姿勢と動作の美しさを極めた剣技は、しかし実用の威力を備えているのだろうか。獅子桜院の挙動は全て覇主可に観られている。むしろ眼を逸らすことができない。

 覇主可も構えていた。
 こちらの世界で、覇主可が構えたのも初めてかもしれない。

 剣士の少女しか目に入らない、見えない世界で、間合いを詰める。獅子桜院の動きに合わせて歩を進めると、何かにぶつかった。

 不意をつかれた。
 意識していなかったものにぶつかって、少年がバランスを崩す。たぶんテーブルか椅子だろうが、少女の舞いがそれを確認することを許さない。
 そちらに意識を移した瞬間、斬られるだろう。そして意識を移すことを許さないほど美しい。観ていたい。まばたきすら惜しい。

 集中力を拘束された少年は、受け身もとれず倒れた。床がそこにあったことに意識を向けるのがもったいないと感じる。ずっと剣士の少女の舞いを観ていたい。

 斬撃も美しい。
 舞いの中に少年も組み込まれている。これを避けたりしたら、この美しい舞いを崩してしまうだろう。そうしたくなくなる技は覇主可のものに近くもある。そしておそらく避けられない位置に追い込まれている。周囲は意識できないが。

 覇主可は素直に指先で剣先を捕らえ、少女に応じた。
 美しい剣士の舞いをもっと際立たせよう、協力しようと動く。

 剣士の少女が意図していた動きは少年が斬られることだろう。
 少年はもっと違う動きを提案する。
 もう観客では無い。少女だけに任せない。

 社交ダンスのように抱きかかえられたとき、獅子桜院が舞いを止めた。
 周囲の光景が戻ってくる。

 ダンスパートナーのように二人が立ち尽くす姿は、剣が無ければ闘いとは思えない。覇主可は微笑みとともに、パートナーに快楽を送った。
 恥ずかしそうな笑顔は、少年を送り出したときにも見た気がする。少年は動けなくなったであろう少女を優しく座らせる。

 三人の少女たちが覇主可の技で動けなくなっている。
「今日はこれまで! 他に望む者は後日にしなさい」
 星璃逢が終わりを宣言した。

 覇主可は動けない三人に手を差し伸べる。少年に触れると、何とか動けるようになった。

「覇主可、良かったら教えて、あの力は何?」
 舞躍夏が尋ねた。
「私はアレを使わせられなかったな。以前は使えなかったのではないか?」
 獅子桜院も覇主可にすがって立ち上がった。快楽は消えてはいない。しかし覇主可に触れていると、満たされない感じは薄まる。

「硬気……身体の周りに出せる見えないパワーだ。かなりの威力で当てることもできる。防御とかにも使える。でも、僕はいつも使えるわけじゃなくて、エッチするとしばらく使えるんだ」

「エッチすると? 星璃逢様がさらわれたときは使えなかったようだが……つまり、お口ではダメなのか? オマ×コしてきたんだな?」
 詩嵐武は鋭い。

「覇主可の初めては、私がもらった」
 愛舞綺が誇らしげに胸を張る。

「……許せん。星璃逢様ならまだしも……お前の愛人になれば、してくれるのだろうな? まさか、敵だった女とはして、私たちとはできないはずはないだろうな?」
 少女たちが装束を脱いでゆく。

「覇主可、してあげなさい。あなたの技の後始末もしてね。あと、約束は守ってね」
 星璃逢が許可した。約束を守るために少年は後で自分を何回犯すのだろうか。

 覇主可は詩嵐武を後ろから貫いた。
「んんっ! あ、もっと優しくしろ……」
 かなり優しくされている。快感の大きさが責められているように感じる。

 膣内で射精されると、技による快楽からは解放された。しかし幸せな余韻に動けなくなった。

 舞躍夏は抱き上げられて、肉棒に貫かれる形で少年の上に座らせられた。軽い身体が跳ねるように動かされる。
「ん、ん、コレ良いっ! 何でもする、何でもできる……御褒美に、またしてくれるなら……」

 獅子桜院は正常位で脚を拡げられた。覇主可に観られている。
「……どうした?」
「剣舞の技を使って無くても、綺麗です」

「ば、バカっ! お前は星璃逢様だけ褒めればいいんだ! 他の女に期待させるな!」
 そう言いながら真っ赤になる騎士団長が喜んでいることは解った。覇主可は言葉を遮るように挿入し、膣内射精した。

 少年はそのまま星璃逢も押し倒した。
「星璃逢様、約束の分ですが、時間をかけてもいられなそうなので、ちょっと急ぎます、申し訳ありません!」
 覇主可は星璃逢の膣内に、一回突き込む毎に射精した。もとより星璃逢の細めのお腹で受け止めきれる量ではないが、連続射精の間隔が短すぎて溢れ出すことも間に合わない。

 子宮が膨らんでゆくのを感じる。癒やす力を持った精液が、星璃逢のお腹を押し拡げながら、拡がることによるダメージを癒やしてゆく。

 ようやくノルマを果たした少年が離れると、栓を抜かれた膣口からミルクが溢れ出した。星璃逢は反射的に閉じようとする。

「星璃逢様、覇主可さんの精液は負傷者に必要です。それに、出さないとまた注いでもらえませんよ」
 そう言われて力を抜くと、膣口から射精のような勢いで精液が迸った。芽凜愛がそれを容器に回収した。

「まだ残ってる……」
 沙流蘭が指先で星璃逢の膣口をなぞった。
「あとは普通に入る分ですから、無理に出さなくて良いのですわ」
「ダメ。お姉さんが綺麗にしてあげる」
 出し切れない分も沙流蘭に吸われ、舐め取られてしまった。 星璃逢を抱えて覇主可は城に戻った。
 映離射と愛舞綺もついてきた。

 迎えた獅子桜院は、映離射と愛舞綺を見とがめた。
「お前にやられた者はみなお前に忠誠を誓うだろうが、敵だった者たちだ。それを受け入れろというなら、私たちも倒して、納得させろ」
 獅子桜院が剣を抜こうとすると、詩嵐武と舞躍夏が進み出た。

「覇主可、初めてキミの技を見たときから、闘いたいと思っていた。やっと口実ができた。遠慮無く私たちを倒せ。愛人を増やすなら、お前がそれに値すると納得させろ」
「私たち二人一緒でも、かまわないでしょう? そのくらいでなければ、あなたが楽しめないでしょうから。闘うこと、好きよね?」

 獅子桜院はため息をついて先鋒を譲った。
 自分も覇主可に文句をつけたのは、闘ってみたいからだ。

「何をしているのです! 味方同士で……止めなさい!」
 星璃逢が叱って止めようとしたが、愛舞綺が星璃逢を止めた。

「星璃逢女王、私たちを寝返らせたのも覇主可の技だが、そのことは、私の毒の技よりある意味卑怯で、受け入れられることじゃない。そしてたぶん、覇主可に惹かれるのは敵だけじゃない。味方も、彼に負けたくなるだろう」

「全力を出せるうちに、全力で挑むしかないのさ。手加減したくさせるのも、覇主可の技のうちだけど、全力で戦えるうちに、戦った方が納得しやすい。これからも覇主可を闘わせるなら、必要なことだ」

 星璃逢は覇主可がもう闘わなくても良い、闘って欲しくないとも思う。
 無敵に思える覇主可でも、いつか傷つき、敗れ、死ぬかもしれない。

 しかしもともと覇主可に望んだのは、闘ってもらうことだ。
 覇主可が、闘えるから自分のところに来てくれたことも解る。
 少年への本当の報酬は、奪ってはいけないものは、闘いなのだ。

「……解りました。それを望む者は、覇主可に挑むことを許可します」

 覇主可はやや戸惑いながらも、詩嵐武と舞躍夏の技に興味を感じていた。

 やはり開始の合図は無かった。

 詩嵐武の武器は長い。
 先端の刃は手元の操作で槍にも鎌にもなった。
 彼女は覇主可が槍をものともしなかったのを見ている。

 舞躍夏は手甲を着けている。
 鎧も刃も持たぬ少年には本来不要かもしれない。
 しかしこの少年に生身で触れるわけにもいかない。

 詩嵐武の横薙ぎの攻撃を覇主可は跳んで避け、逆立ちに近い姿勢で刃を捕らえた。
 少年の指先は全てのものを優しく捕らえる。

 詩嵐武の長柄の上に、舞躍夏も居た。
 覇主可の動きを予測していた。
 体重を消す技は魔法によるものか、修練のたまものか。

 体当たりのような拳打が覇主可の腹部に撃ち込まれる。
 全員が爆発のような衝撃を感じた。

 この世界で覇主可の身体をまともに捉えた攻撃はこれが初めてだ。

 しかし、拳は覇主可に触れていなかった。
 数センチの間隔が空いている。
 舞躍夏は見えない何かに受け止められた、と感じた。

 覇主可の自由な方の指先が、舞躍夏の腕の手甲に覆われていない部分に触れた。
 舞躍夏は動けなくなる快楽を予感しながら、少年の手を捉えて投げようとした。

 覇主可に触れたことが幸いして、舞躍夏は動くことができた。
 捨て身投げのモーションに少年が巻き込まれる。

 詩嵐武は着地前の覇主可を突いた。
 モーションを支配しているのは舞躍夏だ。
 避けられないだろう。

 覇主可から見えない何かが発し、槍を逸らした。
 舞躍夏の拳を受け止めたのと同じ力のようだ。

 舞躍夏は快楽を打ち込まれ、もう身体をコントロールできなかった。
 舞躍夏と覇主可はもつれ合ったまま詩嵐武にぶつかってきた。
 ありえない動きだ。
 覇主可があの力で方向を変えたのだろう。

 舞躍夏がいなければ何とか攻撃できたかもしれない。
 詩嵐武は思わず舞躍夏を受け止めてしまった。
 快楽の予感。

 覇主可に触れた覚えはない。
 覇主可の快楽は舞躍夏の身体を伝わって詩嵐武を捕らえたようだ。
 直接触られなかったことに、少し腹が立った。

 覇主可はすでに離れている。
 追うために動けば、快楽に倒れるだろう。

 詩嵐武はそうした。
 動けなくなる快楽の技を体験してみたかった。

 詩嵐武と舞躍夏は動けなくなった。
 獅子桜院が前に出た。

 獅子桜院は覇主可の見えない力のようなものの正体を知りたいと思った。
 以前は使っていなかったと思う。
 最初に愛舞綺に襲われたときも、使わなかったのではないか。
 たぶん、そのときは使えなかったのだ。

「覇主可、その見えない力……おまえのこれまでの技とは異質に感じる。良かったら後で教えてくれ」
 気軽に話しかけながら、剣を抜いた。

 獅子桜院が構えた瞬間、覇主可には他の全てが見えなくなった。
 ただ美しい剣士だけが居る。

 これは一種の魅了の技だ。
 性的なものでもなく、ただ美しさに目を奪われる、そのことを昇華したのだろう。
 姿勢と動作の美しさを極めた剣技は、しかし実用の威力を備えているのだろうか。
 獅子桜院の挙動は全て覇主可に観られている。
 むしろ眼を逸らすことができない。

 覇主可も構えていた。
 こちらの世界で、覇主可が構えたのも初めてかもしれない。

 剣士の少女しか目に入らない、見えない世界で、間合いを詰める。
 獅子桜院の動きに合わせて歩を進めると、何かにぶつかった。

 不意をつかれた。
 意識していなかったものにぶつかって、少年がバランスを崩す。
 たぶんテーブルか椅子だろうが、少女の舞いがそれを確認することを許さない。
 そちらに意識を移した瞬間、斬られるだろう。
 そして意識を移すことを許さないほど美しい。
 観ていたい。まばたきすら惜しい。

 集中力を拘束された少年は、受け身もとれず倒れた。
 床がそこにあったことに意識を向けるのがもったいないと感じる。
 ずっと剣士の少女の舞いを観ていたい。

 斬撃も美しい。
 舞いの中に少年も組み込まれている。
 これを避けたりしたら、この美しい舞いを崩してしまうだろう。
 そうしたくなくなる技は覇主可のものに近くもある。

 そしておそらく避けられない位置に追い込まれている。
 周囲は意識できないが。

 覇主可は素直に指先で剣先を捕らえ、少女に応じた。
 美しい剣士の舞いをもっと際立たせよう、協力しようと動く。

 剣士の少女が意図していた動きは少年が斬られることだろう。
 少年はもっと違う動きを提案する。
 もう観客では無い。少女だけに任せない。

 社交ダンスのように抱きかかえられたとき、獅子桜院が舞いを止めた。
 周囲の光景が戻ってくる。

 ダンスパートナーのように二人が立ち尽くす姿は、剣が無ければ闘いとは思えない。
 覇主可は微笑みとともに、パートナーに快楽を送った。
 恥ずかしそうな笑顔は、少年を送り出したときにも見た気がする。
 少年は動けなくなったであろう少女を優しく座らせる。

 三人の少女たちが覇主可の技で動けなくなっている。
「今日はこれまで! 他に望む者は後日にしなさい」
 星璃逢が終わりを宣言した。

 覇主可は動けない三人に手を差し伸べる。
 少年に触れると、何とか動けるようになった。

「覇主可、良かったら教えて、あの力は何?」
 舞躍夏が尋ねた。
「私はアレを使わせられなかったな。以前は使えなかったのではないか?」
 獅子桜院も覇主可にすがって立ち上がった。
 快楽は消えてはいない。しかし覇主可に触れていると、満たされない感じは薄まる。

「身体の周りに出せる見えないパワーだ。かなりの威力で当てることもできる。防御とかにも使える。でも、いつも使えるわけじゃなくて、エッチするとしばらく使えるんだ」

「エッチすると? 星璃逢様がさらわれたときは使えなかったようだが……つまり、お口ではダメなのか? オマ×コしてきたんだな?」
 詩嵐武は鋭い。

「覇主可の初めては、私がもらった」
 愛舞綺が誇らしげに胸を張る。

「……許せん。星璃逢様ならまだしも……お前の愛人になれば、してくれるのだろうな? まさか、敵だった女とはして、私たちとはできないはずはないだろうな?」
 少女たちが装束を脱いでゆく。

「覇主可、してあげなさい。あなたの技の後始末もしてね。あと、約束は守ってね」
 星璃逢が許可した。
 約束を守るために少年は後で自分を何回犯すのだろうか。

 覇主可は詩嵐武を後ろから貫いた。
「んんっ! あ、もっと優しくしろ……」
 かなり優しくされている。
 快感の大きさが責められているように感じる。

 膣内で射精されると、技による快楽からは解放された。
 しかし幸せな余韻に動けなくなった。

 舞躍夏は抱き上げられて、肉棒に貫かれる形で少年の上に座らせられた。
 軽い身体が跳ねるように動かされる。
「ん、ん、コレ良いっ! 何でもする、何でもできる……御褒美に、またしてくれるなら……」

 獅子桜院は正常位で脚を拡げられた。
 覇主可に観られている。
「……どうした?」
「剣舞の技を使って無くても、綺麗です」

「ば、バカっ! お前は星璃逢様だけ褒めればいいんだ! 他の女に期待させるな!」
 そう言いながら真っ赤になる騎士団長が喜んでいることは解った。
 覇主可は言葉を遮るように挿入し、膣内射精した。

 少年はそのまま星璃逢も押し倒した。
「星璃逢様、約束の分ですが、時間をかけてもいられなそうなので、ちょっと急ぎます、申し訳ありません!」
 覇主可は星璃逢の膣内に、一回突き込む毎に射精した。
 もとより星璃逢の細めのお腹で受け止めきれる量ではないが、連続射精の間隔が短すぎて溢れ出すことも間に合わない。

 子宮が膨らんでゆくのを感じる。
 癒やす力を持った精液が、星璃逢のお腹を押し拡げながら、拡がることによるダメージを癒やしてゆく。

 ようやくノルマを果たした少年が離れると、栓を抜かれた膣口からミルクが溢れ出した。
 星璃逢は反射的に閉じようとする。

「星璃逢様、覇主可さんの精液は負傷者に必要です。それに、出さないとまた注いでもらえませんよ」
 そう言われて力を抜くと、膣口から射精のような勢いで精液が迸った。
 芽凜愛がそれを容器に回収した。

「まだ残ってる……」
 沙流蘭が指先で星璃逢の膣口をなぞった。

「あとは普通に入る分ですから、無理に出さなくて良いのですわ」
「ダメ。お姉さんが綺麗にしてあげる」
 出し切れない分も沙流蘭に吸われ、舐め取られてしまった。

☆ 見知らぬ心に惑う少年

 沙流蘭は相変わらず覇主可にくっついているが、独り占めはできなくなった。覇主可に敗れた少女たちも彼を誘惑しようとする。何故か他の少女たちは少し遠慮している。

 特に愛舞綺が激しく覇主可を求める。覇主可も応える。多く接しているのが解る。覇主可は自由に少女たちを選ぶことを許されている。愛舞綺に応えるのも自由だ。それでも沙流蘭は納得できない。

「そんなに愛舞綺さんが良いなら、駆け落ちでもすれば良いのに。そうすればすっきりするわ。星璃逢はもうあなたは自由だって言ってたのでしょう?」
 星璃逢の告白は暗殺者の姉妹によって少女たちに伝えられていた。

 星璃逢は一番多く愛される。でも、愛舞綺のように嫉妬はされない。覇主可が主人と認めていることもある。

 愛舞綺と覇主可が交わっている。沙流蘭が蜜に濡れた肉棒の根元に唇を寄せると、覇主可が射精した。

 愛舞綺の毒で沙流蘭を害さないためだ。少女たちが愛舞綺に触れることが覇主可には怖い。彼女の毒の強さは知っている。

 早く愛舞綺を自由に他の少女と触れ合えるようにしたいと思う。してあげたい、ではない。そうなってもらわないと、ずっと特別扱いすることになってしまう。

 特別なのだから仕方無いとも思う。でも、このままだと愛舞綺か他の少女たち、どちらかを捨てることになるだろう。
 おそらくは愛舞綺を。

 自分と同じような反則技の使い手の少女が、それを修めるために抑えなければならなかったことを想う。触れるだけで相手が死ぬ。恐ろしくないわけもないだろう。
 いつか訊いてみたい。
 でも訊くのも怖い。
 もう思い出せないくらい深く封じ込めてしまったものが、浮かんできてしまうような気がする。

 覇主可と愛舞綺の交わりはいつも真剣勝負でもある。解毒する精と毒の蜜の争い。覇主可の心が揺れたとき、少し毒が勝った。滴りを舐めとっていた沙流蘭が息を詰まらせる。

 それでもかなり薄まっていた。そうでなければ苦しむこともなく死んでいただろう。沙流蘭の異常に気付いた覇主可が唇を吸う。すぐに呼吸は落ち着いた。

 肉棒を含ませる。沙流蘭はまだ自由に動けない。動けない少女の口腔を激しく使う。急ぎ飲ませなければならない。

 口内に射精されると、飲み込んだ。飲み込めなかったら口付けして飲み込ませるつもりだったが、大丈夫なようだ。

 愛舞綺の姿が消えていた。
 覇主可は追う。星璃逢を助けに行った時よりも心が騒いでいる。
 精神を静かにすることは覇主可の闘いのスタイルでもある。こんなにまだ修行が足りなかったのだろうか。

 それでも、焦る心のおかげで愛舞綺に追いつくことができた。
 言葉では止められないと知っていた。触れるだけで動きを止められるはずの少年が少女を抱きしめ、押し倒す。

「放せ。私が居ると、お前、負けるぞ。お前が死ぬのは嫌だ」
「負けない」
「他の者が死ぬかもしれないぞ。一緒に居たら、我慢はできない。お前に抱かれると毒を止められない。止めなくても抱き合えるから」
「死なせない」

「その決意を他の女全てに捧げられるか? 私への気持ちが、星璃逢姫への想いを超えたら、お前は全て失うぞ。この国も護れない。お前は何のために来た?」

 愛舞綺に出会うため、という言葉が浮かんだ。
 それは言わない。
 それだけになってしまうだろうから。

「愛舞綺も護る。出会ったからもう手遅れなんだ。今、愛舞綺を行かせたら、たぶん僕は護れなくなる」
「星璃逢姫が、お前に浮気を許したのが間違いだったな。今更だが」

「星璃逢様だけだったら、星璃逢様しか護れなかったような気がする。少し解った。僕の技は自分の心も縛るんだ。護らなきゃならなくなる。護らせてもらうための技なんだ」

 愛舞綺はもう逃げようとしていない。
 二人の感覚は遠い敵意の気配を捉えていた。攻め寄せる軍勢の気配。

「済まなかったな。あまり考えるな。闘いが始まる。護ってもらうぞ」
 覇主可は笑顔で応えた。それでも恥ずかしそうな微笑みの面影は残っている。
 闘いの気配で安心した自分が可笑しかった。

☆ 少女たちと共に闘うこと

 覇主可と愛舞綺は急いで城に戻った。
 もとより闘いは望むところだが、今は特に望ましい。余計なことを考えずに済む。

「帰ったか。二人で駆け落ちでもしたかと思ったぞ」
「したかったよ」
 愛舞綺が笑った。珍しい。

 ほんの一瞬、手練れの戦闘士として少年と二人で旅する夢を見た。
 でも、他の夢の方がはっきり見える。
 星璃逢の夫として国を護る少年の姿。

 自分が選ばれない夢の方が、そこにいる少年が好ましく思えた。
 可笑しかった。

「敵が来ます。もうすぐ。かなり大勢です」
「解っている。覇主可のことも知られている。それでも来たのだから、おそらく厳しいぞ」
 獅子桜院の言葉に覇主可は肯く。この世界の闘技や魔法も決して油断できない。

 覇主可と共に少女たちは出陣する。
 少年と一緒に戦えると思うと心が躍る。

 戦場では、遠距離で倒せるなら、その方が良い場合が多い。特に籠城するなら、近接するのは厳しい。

 しかし、離れて闘うやり方を選んでいたら、覇主可は達人にならなかったかもしれない。接しなければならない技は、闘いを愉しむ心に合っている。

 相手を制しなければ、自分にも届く。
 だからこそ愉しい。

 攻め寄せる軍勢は、弓を大量に用意していた。矢の雨が降る。盾を持たずに出て行くのは自殺行為だ。

 覇主可はかまわず走り出す。少女たちとの交わりで、十分にパワーを得ている。
 降り注ぐ矢は身体に触れる寸前、見えない盾に弾かれた。

 弓兵の部隊は槍を持つ少女たちに護られている。
 覇主可に向いた槍が、突然乱れた。少年を見失ったかのようだ。

 獅子桜院が舞っていた。注意力を拘束する剣舞が少しでも眼に入った瞬間、他のものは見えなくなる。
 弓兵もかなりそちらに惹きつけられる。降り注ぐ矢は舞躍夏と詩嵐武が打ち落とした。

 獅子桜院の魅剣舞も、大勢を縛れるのは僅かな時間だけだ。自分を見る全ての方向に、完全な動きを見せられるほど極めてはいない。
 それでも少しの間、それしか見えなくなる。

 覇主可にはそれで十分だった。
 触れられる距離に達する。

 最初の敵兵に触れようとした瞬間、危険の気配を感じた。
 指先は感覚器と呼んで良いくらい敏感な部分だが、覇主可のそれは特に鋭い。反射的に手を引こうとしたが、鋭い痛みが走る。針にでも刺されたように感じる。

 それは人形のように小さな少女だった。手のひらに乗りそうな少女が敵兵の身体の上に居る。針のような短剣を持っていたようだ。

 身体の上を、地面を走るように移動できるようだ。素早い。一瞬で隠れてしまった。

 別の少女兵にも触れようとしてみた。やはり一瞬で現れた小さな少女に邪魔される。でも、今度は刺されずに済んだ。

 獅子桜院の魅剣舞がそこまでの行動を許してくれた。
 退却しながら触れようとしたが、少女兵たちは一人一体ずつ小さな少女に護られているようだ。

 敵兵たちが魅剣舞の呪縛から覚め、覇主可に対応できるようになってきた。
 襲い来る槍と短剣を見えないパワーで弾きながら下がる。性交で得たパワーが尽きてきたことを感じる。

 見えない盾が弱まり、槍先が覇主可に触れた。傷を受けたのは初めてだろうか。

 その時、愛舞綺と映離射が追いついてきた。映離射の双剣が自在に飛翔し、少女兵たちを怯ませる。愛舞綺が少女兵に触れようとすると、やはり小さな少女が指先を攻撃してきた。
 血がにじみ出る。それは霧状に拡がり、小さな少女は毒の血煙を浴びてしまう。
 愛舞綺は血を出しすぎないように抑える。致死の毒は使わないことを覇主可に誓った。

 小さな少女が、バランスを失ったように少女兵の身体から落ちる。
 覇主可の指先が近づく。遮るものは無い。少女兵は慌てて短剣を構えるが、剣を持つ指先に触れられた。快楽の予感に動けなくなる。

「ホムンクルス?……いや、使い魔か? よくこれだけ用意できたな」
 愛舞綺は少女兵たちに触れようとし、小さな少女を落としてゆく。すかさず覇主可の指先が躍り、少女兵たちは動けなくなってゆく。

 それでも敵は多い。
 槍先が、矢が、覇主可と愛舞綺の身体をかすめる。獅子桜院と映離射がいなければ致命傷を受けていたかもしれない。

 舞躍夏と詩嵐武が追いついた。詩嵐武は敵を寄せつけないように変幻の長柄を振り回す。
 その間に、舞躍夏が少年に抱きついた。

 肉棒はたくましく勃起している。快楽の闘技を使うときはこうなる。
 舞躍夏は膣で受け入れ、少年の腰に脚を絡める。

 軽い。質量が無いのではないか。振り回される感じが無い。

「ん、ふ、戦えるよね?……」
 舞躍夏は一緒に闘うつもりだったが、思うように動けない。快楽に耐えながら身体を密着させるだけで精一杯だ。

 覇主可は性交によるパワーが満ちてくる。舞躍夏のエネルギーをもらっている、吸い取っている部分もあるが、それだけでは無い。男女の交わりがパワーをもたらす。

 刃が触れることは無くなった。見えない盾が復活し、消耗して無くなることもない。小さな少女たちの妨害も問題では無くなった。見えないパワーで弾き飛ばすことができる。

 小さい少女たちも覇主可が触れると動けなくなった。触れると、小さい少女を操る存在を感じる。支配している存在をたどるように性闘技の快楽を伝えてみる。
 感覚共有していたのだろう。敵の少女兵たちの身体から、一斉に小さい少女が落ちた。

 敵兵が撤退し始めた。
 動けない少女たちを回収できるうちに引くつもりだ。

 覇主可に倒された少女は、死ぬわけでもなく、見捨てることもできない。
 放っておけば覇主可に従おうとして、星璃逢の軍を増やすことになるだろう。

 深追いはしない。城をあまり離れるわけにもいかない。

 一息ついたとき、舞躍夏が力尽きて落ちそうになる。体重を感じない少女も宙に浮くことはできないようだ。

 戦いの後、最も消耗していたのは舞躍夏だった。その後、星璃逢の膣内に注ぎ込まれた量と回数が、舞躍夏がよく耐えたことを伝えた。

☆ 妖術の少女たち

 攻撃は止んだが、敵軍が立ち去ったわけではない。近くに陣を敷いている。星璃逢たちから攻め込むには遠い。何かあった時、戻るのが遅れる距離だ。

 敵軍では、覇主可に触れられ、動けなくなった兵の処置に困っていた。快楽が打ち込まれているというより、感覚を創り変えられているようだ。少年の指先は性的感覚を超敏感にする触媒らしい。
 麻酔や幻覚で感覚を抑えても、根本治療にはならなかった。動ける程度にはなるが、少年の面影が消えない。覇主可の技は精神を犯す。

 敵陣の中で、武装せず舞姫のような衣装を着けた少女たちが居た。

「多流花(たるか)が止められなければ、なんとかなったかもしれないわね」
 指先に糸を絡めた少女がつぶやいた。糸が他の糸に絡み、弾き、生き物のように跳ね上がる。

 隣の少女は身体の上に多くの小さな少女を従えている。使い魔を通して快楽を打ち込まれ、動けなくなっていた。
「私だけでは無理。快楽の技がなんとかなっても、ホムンクルスたちは愛舞綺に落とされる。遙思(はるし)、見たわよね?」
 声はしっかりしていた。まだ快楽の予感に動けないが、精神は堕とされていない。

 遙思と呼ばれた少女は布で眼を覆っている。それでも見たのだろうか。
「彼は触れなくても、寸前に打撃力のようなものを伝えられるようです。矢を弾き返し、ホムンクルスたちも落としました。でもその能力は途中で途切れかけたように見えました。交合しながら戦い始めて回復し、今度は尽きませんでしたね」

「問題の快楽の技は、触れなければ使えないようですわ。愛舞綺や獅子桜院がいなければ倒せていたでしょう。私たちがみんなでかかれば問題なく倒せるでしょうね。もったいないけど。捕らえることもできるでしょう。そうします?」

「捕らえるのは危険。みんな欲しがるだろうし、欲しがる者は操られるかもしれない」
 多流花は覇主可の技を体験している。しかし直接触れられていないことでいらだっている。

「こちらが操れば良い。相手もそういう技の使い手。遠慮は要らないです」
 糸を繰る少女はそれができるのだろうか。
「この国を落とす戦いも愉しみのため。たまには危険も良いです」

「そうね、捕らえましょう」
 遙思が応じた。少女たちは愉しみのために闘っているらしい。この世界の闘士に共通する感覚のようだ。

「多流花をなんとかしなきゃね。愛紅璃(いとくり)、できる?」
 糸を弄ぶ少女の名が呼ばれた。愛紅璃の指が短い糸片を数本、多流花に飛ばす。糸片は少女の身体に貼り付き、生き物のように蠢き始める。本当に生き物なのかもしれない。

 多流花が立ち上がった。どこかぎこちない動き。
「愛紅璃に動かしてもらえば動けるね。自分で動くときは、快感に耐え続けるのは難しいけど。でも、動かされるのは、ん、動けなくなるくらいの快感が強制的に続くってことで、ああ、ん、やっぱり、あの子を捕えないと、あん、ダメだわ」
 多流花に貼り付いた糸は見えない場所に潜んだようだ。糸で身体を操られて動いている。

「つらそうね……あの少年に多流花を取られるわけにはいかないわね」
 遙思が多流花に目隠しした。眼を覆った少女は二人になった。そして遙思は多流花の秘所に口付けた。愛紅璃に操られて多流花は脚を開く。その動きすら覇主可を求める熱を発させる。

 多流花の目隠しされた眼に、自分の秘所に口付ける少年の姿が映る。遙思が居る場所に、覇主可の姿が見える。遙思であるはずの唇が少年のそれと感じられる。

 舌先が入ってきたとき、多流花は身を反らせた。少年に触れられる感触が渇きを癒やしてゆく。
「私にオチン×ンがあれば完全に解放できるかもだけど、後は本物を捕えてからね」
 感触が離れ、目隠しが外される。少年は居ない。

 覇主可に打ち込まれた渇きが少しだけ補給された。多流花は自分の意思で歩き始める。
「行くわよ。夜になるわ。奇襲の時間」
 三人の少女が夜を走る。

☆ 幻に囚われる少年

 星璃逢のベッドはもともと大きかったが、他のベッドを付け足して拡張されていた。覇主可を求める他の少女たちのためだ。

 星璃逢と覇主可の約束は、他の少女たちを愛した分、星璃逢も愛すること。少し奇妙な愛の誓いだ。無限の精力を持っているのではないかと思われる少年にとっては、浮気を止める理由にはならない約束。かえって、ベッドにやってくる少女たちを拒めなくなった。

「ん、私たちが覇主可にしてもらう分は、全部星璃逢様にもするのだよね……星璃逢様には手加減してるよね? ああんっ、私の分だけでも、心が融けそう……これを何人分も星璃逢様が受け止めているなんて信じられない」
 詩嵐武が覇主可に押し倒され、貫かれている。覇主可の尽きぬ精力も不思議だが、星璃逢が受け止めていることの方が不思議だ。

「手加減なんてしてないよ、でも、星璃逢様を強くはしてる。特別な奉仕、快楽を受け止められるように御主人様を強くする技も学んだ」

「それは私たちにはしないのだな? 星璃逢様がやはりお前の主人だからか?」
 獅子桜院の問いは嫉妬を含んでいる。

「えっと、みんなにそうすると、時間が全然足りなくなるし……でもしてないわけじゃないよ。技を解く時には必要だし、全く強化しないと、受け止められないと思うし」

「それでも、星璃逢姫が一番快楽に強くなってるのは確かだろうな。そうやって覇主可に愛されるってどんな感じなんだろうな。色狂いになるくらいじゃ済まない快楽を、しっかり受け止めて愉しめるようにされてしまって、そして手加減抜きでその快楽を与えてもらえるのか……羨ましいけど、ちょっと怖いくらいだ」
 愛舞綺は覇主可に堕とされた時の快感を思い出す。

 覇主可が与える快楽は渇きに狂わせるものとそれを癒やすものがある。表裏一体だが、少年は使い分ける技を修めている。

 渇望と充足の使い分けは性闘技に必要なことだが、その技はベッドでも存分に発揮された。性闘技が研究された理由は主人を守るためだけではないのかもしれない。覇主可が育てられた抱師としてのスタイルのひとつなのだろう。

 渇望の後に癒やしを与えられることで、性感が超回復してゆく。筋肉を鍛えるように感覚が鍛えられてゆく。弱い刺激に反応できなくなるようにもしない。感覚はむしろ鋭くなる。

 星璃逢がそれに気付いたのは、覇主可に鍛えられた感覚のせいかもしれない。何かが身体に触れた感覚。ほつれ糸がどこかに引っかかって身体を締め付けたような感覚。

 確認しようとすると、身体が動かせないことを知った。手足に何かが巻き付いているようだ。それは力ではなく、神経系に作用して星璃逢を操る。声も出せなくなった。

 星璃逢がベッドから降りてゆくのを止める者はいない。誰も異常に気付いていなかった。彼女が部屋から出ようとするとき、芽凜愛と獅子桜院が気付いた。何かおかしい。

「星璃逢様、どちらへ行かれるのですか?」
 星璃逢は応えず、走り出した。扉を抜ける。

 追おうとすると、三人の少女が現れた。舞姫のような衣装。一人は布で眼を覆っている。一人は小さな少女の姿の使い魔を大量に従えていた。

 吹き付ける花嵐のように小さな少女が吹き込んできた。互いに弾きあい、ジャンプして部屋中に拡がる。霧のような煙を撒き散らした。周囲が見えなくなる。

 大量の小さな少女に紛れて、眼を覆った少女が覇主可に近づいていた。彼女は視界不良でも相手を間違えない。

 覇主可は気配に向けて指先を伸ばした。剣が近づいても手を引く自信はあった。性交で得たパワーも十分だ。

 何か飛んできた。避けつつ、ひとつは指先で捕える。それは短い糸片のようだが、指先に絡みつき蠢いている。神経接続される感触。反射的に動きを止める快楽を送った。糸片が悶えるが、術者には伝わっていないようだ。

 その間にいくつかの糸片が身体に巻き付いた。最初の糸片はなんとかつまんで外す。快楽の技で動きは鈍るようだ。しかし、いくつもの糸が身体を支配しようとしている。他の者なら勝手に動かされているだろう。耐えつつ外してゆくのは時間がかかりそうだ。

「愛紅璃の糸を外せるのね。凄いわ。でも、そんなに時間かかるなら問題無し」
 眼を覆った少女に目隠しの布を巻かれるのを止められなかった。

 目隠しされた覇主可に星璃逢が見えた。そこには眼を覆った敵の少女が居るはずだ。眼を閉じてみる。それでも見えた。

「行きましょう、覇主可」
 声も星璃逢のものだった。匂いも、指先の感触も。

 周囲の光景が変わっている。いつしか城の外を走っていた。身体が勝手に動く。まるで動かされているようだ。

 隣には星璃逢。他には誰もいない。周囲の光景は見える。
(違う、これは見せられてるだけだ、この星璃逢様は、本物じゃない?……はずだけど……)

 星璃逢も操られて部屋を出たのを見た。隣に居るのは本当にニセモノだろうか? 最初はそうだっただろうが、今は操られた本物かもしれない。

 見知らぬキャンプに着くと、星璃逢が抱きついてきた。
「覇主可、せつないの、いっぱいして……あなたは私のモノよね?」

「星璃逢、様?……」
 操られる身体は勝手に動き、星璃逢を抱きしめる。

 その星璃逢は多流花だった。遙思と愛紅璃の術にかかった覇主可には解らない。本物の星璃逢は縛られもせず、覇主可が多流花と愛し合う様を見せられていた。

 覇主可の技にかかった兵士たちが運ばれてきた。動けない少女たちを覇主可が愛してゆく。愛紅璃の糸の行動支配はだんだん弱まってゆく。それでも少年は幻の星璃逢に応え続ける。

☆ 認識変換

 やがて覇主可には星璃逢だけでなく、仲間の少女たちが見え始めた。愛人たちはいつもより激しく覇主可を求める。それは幻と気付いていたが、振り払えなかった。余計な行動は愛紅璃の糸が許さない。

 星璃逢はそれを見せられながら、ぼんやりと考える。もし脱出できたら、覇主可はどのくらい自分に注ぎ込むのだろう。少年は約束を守るだろう。今度こそ覇主可に壊されるのではないだろうか。

 壊して欲しいと思っている自分に気付く。やはり覇主可を独占できないのが苦しい。女王として小国を支えるのはこれほど辛くなかった。戦争に負ける可能性も受け入れる覚悟があった。

 少年に助けられて、欲が出た。覇主可は自分を甘やかしすぎなのだ。もう少し厳しくしてくれても良い。独占を諦められるくらい。

 敵の少女たちを愛する少年から目を逸らせることができない。行動を操る糸のせいだが、苦しくはなくなった。少女たちを愛する少年の姿に癒される。これまでは、他の少女を愛する姿を素直に受け止めたことが無かった。

 少年はこうやって愛するのが似合う。彼の性闘技の技も、愛するための技術の一つに過ぎないように思える。そうなのだろう。彼は抱師と呼ばれる性技師で、もともと闘士ではないのだ。

 愛紅璃は覇主可に触れるのが少し怖くなっていた。覇主可の技にかかった少女たちが抱かれるのは仕方無い。やっと癒やされ、解放されているのが解る。

 少年の技は麻薬のようなものだと思っていた。心身を腐らせる毒だと思っていた。少し違うようなのだ。癒やし、愛おしくさせる技。薬も回復の魔法も過ぎれば毒だが、それとも違う。

 縛られないことで縛られる感覚。我慢もできる。強制もされない。ただ愛おしく、癒やされる。そして拒絶できなくなる。拒絶する精神が和らいでしまう。

「まいったな……想像以上に危険だ。さっさと殺しておくべきだったね」
 愛紅璃は覇主可に触れた。もう我慢できないことが解った。見ているだけで精神を愛撫された。

「愛……紅璃?」
 覇主可に名を呼ばれる。恋人を呼ぶような優しい口調だが、ぎこちない。

 星璃逢にも聞こえた。何故、愛紅璃の名を呼ぶのだろう? 覇主可は遙思の目隠しの中で味方の少女たちの幻を見ているのだと思っていた。そうではないのか?

 膣内射精された少女の膣からミルクが滴っている。愛紅璃は指先で掬って、舐めてみた。不味かったら止められるかもしれないと思った。

 予想外の美味。予感はあった。皆美味しそうに舐めとり、口に射精を受けていた。それは興奮するための方便だけではなかったようだ。そして魔力と生命力が満ちる感覚。星璃逢の軍が元気になった訳が解った。

「落ち着いて、大丈夫」
 遙思に目隠しを巻かれた。覇主可の姿はそのまま見える。周りの少女たちの姿が変わった。星璃逢の軍の闘士たち、覇主可が見せられている愛人たちの姿に変わった。

「ああ、そうか、味方だと思ってるから癒やすのか……それはそうだ、ありがとう、遙思」
 覇主可に奪われかかった心が戻った。彼は味方を愛している。少女兵たちや愛紅璃を見ていない。

「認識変換はもう少しかかるわ。まだこの目隠しが必要。完了すれば、あなたを見て愛してくれるわよ。もう少し待って」

「覇主可を操るの?」
 星璃逢が遙思に問う。
「ん、ちょっと違うかな。彼の愛する対象の認識を書き換えるの。彼が今、星璃逢姫や仲間だと思って愛してる相手が、そうじゃないのは見ての通り。少しずつ認識を変えるの。星璃逢姫の名前と信じて愛紅璃や多流花という名前を呼ぶようになるわ。そうなれば、あの目隠しも要らない」

「星璃逢姫も変えてあげましょうか? 覇主可の下僕にしてあげても良いわよ。立場を変えるには、名前を変えることになるけど、覇主可と一緒に居られるわよ」
「記憶を書き換えるの?」
「似てるわ。ねえ、覇主可のモノになりたくない?」

 星璃逢は一瞬迷った。これがチャンスに思えた。何のチャンス? 自分を壊すチャンス。

 いや、覇主可以外に壊されるなんて、嫌だ。

「私は自分から逃げるつもりはありません。覇主可が変えられるなら、直すわ」

 遙思は微笑み、多流花は笑った。愛紅璃は笑おうとしたが、精神のどこかが痛んで苦笑いになった。

☆ 擬感覚戦闘

 女王である星璃逢と、覇主可が捕らえられた。
 このままなら、戦も終わったようなものだ。星璃逢たちの負けだ。

 沙流蘭姫は星璃逢の姉として、救出指令を出した。二人を取り返す。
 獅子桜院、詩嵐武、舞躍夏、芽凜愛、愛舞綺、映離射の六人が、夜が明ける前に城を出た。

 残りの兵だけでは、城を守れないだろう。敵軍はそう思っているはずだ。事実、覇主可が来る前、城は落ちかけていた。

 それでも、精鋭たちは城を出る。
 残された少女たちは、絶望してはいない。

 覇主可を助ける。
 そのことを思うと、少女たちの魂が震える。
 そのために城も守る。

 自分たちを守ってくれた少年の、大切なモノも護る。
 それは星璃逢でもあり、この小国そのもの、少女たち自身でもある。

「覇主可はここに居なくても、この国を護るんだな」
 愛舞綺のつぶやきに獅子桜院が応える。
「全く、ありがたい守護者だよ。みんな嬉しそうだ。負ける気がしないな」

「場所が解りました。待たせちゃ悪いわ、急ぎましょう」
 芽凜愛の占術はかなりの魔法力、体力を消費する。しかし疲れたようには見えない。

 隠密行動は諦め、ただ急いだ。

 覇主可と星璃逢は同じ場所に捕らわれているようだ。敵陣の本隊からはやや離れたキャンプだ。

「兵が少ないな。罠かな?」
「そうかもね。いや、そうだろうさ」
 詩嵐武の問いに答えたのは映離射だ。

 精鋭の闘士たちに一般の少女兵をぶつけても、損失が大きい。しかし、それは兵士が少ない理由ではないだろう。

 闘士たちの体力も限界がある。物量で押されればかなわないこともある。精鋭ゆえに、一人の損失でも大きい。兵士をつぎ込む価値はある。

 そんな戦争の論理とは別に、強い相手と闘いたいという思いがある。星璃逢と覇主可を連れ去った少女たちもそうだろう、と思う。だから衛兵も少ないのだろう。
 そして、理由はおそらくそれだけでもない。

「あの舞姫たちは妖術師だ。兵は不要か、邪魔なのだろう」
 妖術、と呼ばれるものは魔法とも区別されている。麻薬が毒や薬と分けられるように。

 厳密な区別は難しい。闘技も魔法も妖術も混じり合い、補い合っている。ひとつだけを修めるものでもない。
 それでも解る。あの少女たちは妖術師だ。

 キャンプの中心、大きな天幕に踏み込むと、覇主可と星璃逢、妖術の舞姫たちがいた。

 覇主可は目隠しをしていない。
 星璃逢はそのことについて仲間たちに警告したいが、愛紅璃の糸が行動を封じていた。

「星璃逢様と覇主可を返してもらう」
 獅子桜院がいきなり魅剣舞の構えをとった。相手は星璃逢と覇主可を入れても五人。十分に魅了する自信はあった。

 獅子桜院が舞い始めると、詩嵐武は長柄を星璃逢に伸ばす。槍にも鎌にもなる武器は伸縮もできるようだ。その上には舞躍夏がいる。

 覇主可が飛び、舞躍夏が弾かれた。詩嵐武は吹き飛んできた舞躍夏を受け止めた。動けなくなる快感の予感。
 舞躍夏の身体を通して快楽を打ち込まれるのは二度目だ。覇主可から離れていたので油断した。時間差で伝えることもできるらしい。

 覇主可が正確に動いた。獅子桜院の魅剣舞に囚われていない。

「目隠ししてないように見えたでしょ?」
 遙思は多流花、愛紅璃にも目隠しを巻いていた。覇主可の目隠しも外していない。魅剣舞は誰も見ていなかった。
 目隠しの上からさらに仮面を付け、本人そっくりの顔を描いてあった。いずれ見破られただろうが、効果は十分だった。

 多流花の使い魔が空中に吹き上がった。小さな少女たちが弾き合いながら、霧を撒いてゆく。
 遙思の目隠しをつけた者には、霧による視界不良は関係ない。視界は遙思が伝える。邪魔な魅剣舞などは見せない。

 獅子桜院は目を閉じた。兜に芽凜愛が魔法図を描いてくれた。それを通して占術による位置情報を受け取り、空間に想い描く。霧の中でそれぞれの位置が解った。 静かな剣舞を舞い始める。魅剣舞ではない。

 遙思には獅子桜院が動いていないように感じられたが、何かおかしい。

 獅子桜院のその舞いは、魅剣舞の裏技だ。注意力を惹きつける派手な動きではない。植物が育つような、悟れない動き。動きが見えない。

 愛紅璃が行動を操る糸片を飛ばす。獅子桜院に命中しない。動いているように見えないのに、位置が変わっている。

 いつの間にか遙思の前にいた。剣は上段。動きは見えず、切られてから解るのだろう。

 遙思が後退できたのは、剣が止まったからだ。立ちはだかった覇主可の指が剣先を捕らえていた。

「助かったわ」
 遙思は覇主可を盾にするつもりだった。星璃逢の幻を見て守ったはずだ。剣を捕えるとは思わなかった。

 実際は獅子桜院が動きを止めた。剣先は捕らえさせた。

 獅子桜院の腰に納められていた短剣が飛んだ。映離射の双剣の一つだ。遠隔操作される短剣は覇主可の頬を掠め、仮面と目隠しを切り落とした。

☆ 陽兵陰忍

 覇主可の目隠しが外れた。

「放せ! 覇主可!」
 獅子桜院が叫んだのは、覇主可が剣を捕らえたまま放さないからだ。
 目隠しが外れれば、戻ると思っていた。幻を見せて操る技と見えた。

 覇主可の指先が伸びてきた。避けるために剣を放し、下がる。
 今、動けなくなる訳にはいかない。

「覇主可はもらっちゃった。あなたたちも、仲間にしてあげる。覇主可は殺さずに捕らえてくれるわ」
 遙思がそう言ったのは、精神を挫くためだろう。

 覇主可が遙思を振り返り、無事を安心したように微笑んだ。
 見覚えがある。星璃逢に向ける微笑みだ。
 目隠しが無くても、幻を見ているのだろうか。

 覇主可は幻を見てはいなかった。
 遙思という、目隠しを付けた少女をそのまま見て、護った。

 彼は愛する少女たちを護るために、ここに居る。
 それは誰だ?
 彼女たちだ。遙思、多流花、愛紅璃と言う少女たち。
 認識変換は完了していた。

 芽凜愛の占術が獅子桜院に危険を伝える。覇主可が本気で狙っている。
 獅子桜院は状況を漠然と理解した。
 感覚を操る技の使い手として、感じるものがあった。

 獅子桜院は魅剣舞を舞う。
 剣は覇主可に奪われたので、剣舞ではないはずだ。
 しかし、彼女の動きは剣を持っているように見えた。

 覇主可には美しく舞う少女しか見えなくなった。
 目隠しが外れ、魅剣舞を遮ることはできない。
 多流花の使い魔が集まり、霧を濃くしようとする。
 しかし、一度魅剣舞にかかった覇主可には霧も意識されない。

 遙思は愛舞綺と映離射を探した。
 どこかに隠れているはずだ。
 獅子桜院が覇主可に構っている間に探し出さねばならない。

 目隠しした少女の映像感覚は、通常の視界ではない。
 彼女の視点は自分の外にあり、自在に移動する。
 壊されることの無いリモートカメラだ。

 それでも、暗殺者姉妹の隠形術はやっかいだ。
 一度捉えれば、絶対に見失わないのだが……
 少なくとも一人は。

 映離射の双剣のひとつが戻って行った方向は覚えている。
 引き合う双剣の技は、戦場を観察していた時に見た。
 おそらく、この辺り……

 いきなり背後から、フェイスロックされた。
 覇主可にも気付かれなかった愛舞綺の隠形技だ。
 毒が染み込んでくる。

「愛紅璃!」
 遙思が呼んだ。
 彼女の身体には、愛紅璃の糸が巻き付いていた。
 それが愛舞綺に巻き付き、動きを操ろうとする。

 愛舞綺は離れない。糸は死んでいた。
 毒に耐えられなかったのだ。やはり生き物なのだろう。

「覇主可を返してもらう」
 愛舞綺が致命の毒を注がないのは覇主可との誓いだ。
 しかし、もう遙思は動けないはずだ。

「無駄よ。彼はもう、あなたたちを愛してないわ。私たちに変換させてもらったわ」
「解ってないな。覇主可が愛さない相手なんていない。それが問題なんだ……ああ、お前は愛されてないかもな。ちゃんとぶつかったか?」

 愛舞綺は遙思から離れ、覇主可に向かう。
 多流花の使い魔、愛紅璃の糸、どちらも愛舞綺を止められない。

 魅剣舞にかかっている少年を抱きしめるのは簡単だった。
「覇主可、また、本気で堕としてくれるのかな……愉しみだ」

☆ 瞬間衝動操作

 覇主可は抱きしめてきた身体に快楽を送った。
 動きが止まらない。触れているからだろう。

 自分の身体が、動けなくなるはずの渇きを癒やしてしまう。依存させ、自分を護るためだ。

 挿入して堕とす必要があるかもしれない。集中力を奪う剣舞のせいでそちらを見られないが、女だ。それは解る。自分に反応している。

 集中できない。あの美しい剣士の舞は邪魔だ。
 でも、相手も自分に抱かれたいようだ。当然だろう。僕に触れたのだから。

 毒が染み込んでくる。解毒と体内調整を開始……
 こんな相手と抱き合ったことがある。手強かった。もう一人居るとは思わなかった。
 もう一人? これは誰だ?

 視界には美しい剣士が舞っている。
 他の物が見えないのはその技のせいだ。
 今抱きしめている、毒を持つ身体に集中しなければ……
 毒が更に染み込んでくる……耐えられるだろうか。

 獅子桜院が舞いを止めた。
 覇主可に視界が戻る。

「愛舞綺……」
 覇主可が恋人を呼んだ。

「あら、破られた?」
 遙思は覇主可の表情を見ていた。彼女も愛舞綺の麻痺毒で動けないが、自在の視界は使えた。
 初めて見る表情。この認識は書き換えていない。
 愛舞綺は他の愛人とは違ったようだ。

 覇主可は愛舞綺を覚えている。書き換えられていない。他の恋人たちの認識は、敵の少女たちに替えられたのに。
 愛舞綺を敵と認識……できない。

 認識の整合性が破れた瞬間、覇主可は戻った。書き換えられた認識が戻る。

「退くよ! 遙思を走らせて!」
 多流花は愛紅璃に呼びかける。
 愛紅璃は放心したように立ち尽くしていたが、慌てて遙思に糸片を飛ばした。
 糸片に操られ、動けない遙思が立ち上がる。

「星璃逢姫、おめでとう。覇主可は戻ったわよ。あの娘のおかげで」
 遙思の言葉が、星璃逢に刺さった。

 覇主可を戻したのは、愛舞綺だ。
 星璃逢ではない。

 悔しい。
 自分ではダメなのか。変えたい。今の自分を壊したい。

 覇主可以外に壊されるなんて、嫌だと思っていた。
 ここだ。今がチャンスだ。覇主可に壊されてしまおう。

 愛紅璃の糸は星璃逢の行動を操り、見せるべきものを見せていた。
 愛舞綺と交わりながら口付けしている覇主可の姿。

「覇主可、私を壊しなさい。みんなをお願い」
 星璃逢が短剣を構える。いつの間にか持っていた。
 糸に操られているからだろう。
 いや、自分で動いている? どうでも良い。同じことをするだろう。

 その動きは閃光のようだった。
 神経系を操る妖術師の糸は、鍛えていない身体の限界を超えさせた。

 星璃逢の短剣が、愛舞綺の背を貫く。

「あーあ、殺しちゃったか。もったいないけど、仕方無いわよね。戦いだもんね」
 一人、いや一匹の小さな少女が、遙思の声でつぶやいた。多流花の使い魔だ。

「皆殺しも簡単だけど、それじゃつまらないもんね。星璃逢姫は、勝手に死んじゃうかな?」
 妖術師の少女の言葉はその通りかもしれない。
 あの少女たちが本気で殺戮を始めたら、止められるとも思えない。

「愛舞綺……」
 覇主可が恋人を抱きしめる。

 背を刺されたまま、少女が応える。致命傷だと解った。
「最高だ。覇主可に抱かれたまま死ぬなんて。覇主可、気にしないでくれ、お願いだ。死ぬなんて、珍しいことじゃないんだぞ? 特に、私の周りでは」
 身体を毒に変えた暗殺者の少女は、どれくらいの死を見てきたのだろう。

「あっ、あ、ああっ……」
 星璃逢が震えながら声を上げる。言葉が出せない。
 短剣が抜けない。愛舞綺が筋肉を締め、止めている。

「離れてくれ……血がかかる……」
 その血も毒だ。

 覇主可は愛舞綺を抱いたまま立ち上がり、駆ける。

 後を追う者は無い。毒を散らさないためだから。
 しかし、そうでなかったとしても、止める者はいただろうか?

☆ 蘇生交合

「愛舞綺……死んじゃ嫌だ」
 少女はもう応えない。死の淵を渡ったのかもしれない。
 覇主可はその身体と交合している。まだ温かい。

 回復の精はもう効かないのではないか?
 死人を蘇らせるようなことが、できるのか?

「忘れてた。ごめん」
 覇主可の精が愛舞綺の体内に迸った。
 同時に快楽のパワーが神経を走り、血流を回す。
 回復と再生の精液が染み込み、巡ってゆく。

 禁じられた、いや、自ら禁じた……記憶の奥に封じられた技だ。

 覇主可の性闘技の技は相手を殺さない。
 快楽を与え、愛を強制する。

 闘いを望んだ少年は、それが嫌だった。
 だから記憶を、心を封じた。

 相手を殺すから、自分は生き残る。
 それが闘いではないのか?

 愛や快楽で縛る技の、何といやらしいことか。

 遠い記憶。
 修行の日々の中、とある少女との闘い。
 未熟な快楽の技は彼女の動きを封じきれず、ただ渇かせ、自分を求めさせたが。

「お前のモノになるくらいなら死ぬ!」
 そう言って自らの命を絶った少女。
 彼女を生き返らせたのは、いつのことだったか。

 あの頃はまだ、そんなことを言わせてしまうくらい未熟だった。

 もう、みんな魅了し、求めさせ、それに応えることができる。
 一人前の抱師として送り出された。

 死なせてしまった記憶は封じた。生き返らせた記憶も封じた。

 でも、闘いを求める心は残った。

 おかしな抱師ができた。
 闘いを望む性愛師。

 思い出した。
 愛舞綺を生き返らせるために。

 愛舞綺の背から短剣を抜いた。傷も塞がってゆく。
 何度射精しているだろう。何度でもできる。それが抱師だ。

「んっ、んあっ、覇主可?」
「愛舞綺、大丈夫?」
「ダメっ、激しいっ! あ、あう、まだ出すの? あぐっ、お腹突き抜けて、胸に来てる!」
 愛舞綺の感覚は正しい。精液も快楽も彼女の心臓を愛撫し、再生している。

「だいぶ、毒が薄まっちゃったかも」
「それは良い、が、私、星璃逢姫の短剣を受けて……治したのか?」
「うん」

「お前は何だ? やっぱり淫魔なのか? 悪魔の一種だろう? あっ……この世界で何をするんだ? 私はもう、死ねないのか?」
「いや、僕が護りきれないこともあるかもしれない。今は間に合ったけど……」

「いつも傍にいて、お前を護れば、私は死なないかもな? あっ……みんなでお前を護れば、みんな……星璃逢姫が心配じゃないのか? 早く行ってやったらどうだ?」

「うん、でも、まだっ!」
 覇主可の先端が愛舞綺の膣奥をえぐる。再生の精液を出すために、快感が必要だ。

「あっ、ああっ! そうだな、星璃逢姫が自害したりしても、治すんだな? やっぱり悪魔か? お前を召喚した姫には、責任をとってもらわないとなっ! あっ!」

 まだ、死んではいなかったのだろう。間に合っただけだ。
 死んだと思われた者が息を吹き返した例は多くある。傷を癒やし、パワーを与えただけだ。

 医者も癒やし手も、闘士も暗殺者も、望むまま生や死を与えられるものではない。
 手遅れは、ある。
 でも、間に合うなら、届くなら……癒せる傷もある。

 初めて生き返らせた、あの少女は、その後も、覇主可を拒絶した。
 彼女の傷は癒えただろうか……身体の傷は治したけど。
 また会えたら……もう会うことは無い。大丈夫だ。昔のこと、別の世界のことだ。

「誰のことを考えている? お前の相手は誰だ?」
 愛舞綺の言葉は落ち着いてきた。
 異世界から来た少年は、時々迷い子のように見える。
 導いてやらないといけないような。できるなら、導いてやりたい。

「愛舞綺……星璃逢様……星璃逢様だ。僕の主人は……」
「そうだな。でも……いや、すまない、忘れろ。お前の相手は星璃逢姫だ。行ってやれ」

 少年が望めば、手に入らない女はいないだろう。
 星璃逢さえも、多くの相手の中の一人に過ぎないのだろう。

 でも、覇主可の心を捕らえるただ一人の女がいるとしたら。

 愛舞綺は、覇主可の心の中に住んでいるらしい、見知らぬ少女の気配を感じた。嫉妬した。

 でも、今、覇主可の隣に居るのは自分だ。

 もしかして、今、死んでいたら、少年の心の中に住めたのかもしれない。
 でも、そんなことは必要ない。

 今夜、明日、抱き合える方が良い。
 嫉妬されるのは自分の方だ。

☆ 優愉復心

 星璃逢は迷っていた。

 愛舞綺を刺した。
 覇主可は愛舞綺を抱いたまま、走り去った。

 死のう、とも思った。
 愛舞綺を刺した自分を、覇主可は赦すだろう。恨まないだろう。

 何ということだ。
 知っていたけど。知っていたのに。

 糸に操られたのは確かなのだろう。抵抗もできなかったのだろう。
 でも、抵抗しようともしなかった。それも確かだ。

 女王である自分を罰するのは、自分しか居ないのかもしれない。
 いや、戦に負ければ、罰せられるだろうけど。

 負ければ。この小国が敗れれば。
 でも、それはできない。

 負けようとすれば、恐ろしいことになるだろう。

 死ぬよりも恐ろしいことになるかもしれない。死なせてくれ、と思うようなこともあるらしい。負けようとすれば、そんな扱いを受けるかもしれない。
 闘う楽しみのために仕掛けられた戦だから。

 全力で戦うしか無いのだ。
 降伏も、負けるための手加減も許されない。

 全力で戦って敗れるなら、救いはあるかもしれない。
 敵の闘士たちを満足させるくらい、闘えたなら。

 あの妖術の舞姫たちに会って、解った。戦いの愉しみのために、攻められている。

 星璃逢の国の闘士たちは、良い戦いをしてしまった。しかも、まだ戦える。

 覇主可に救われず、敗れていた方が楽だったのかもしれない。覇主可を喚んでしまったのは、間違いだったのだろうか。そうかもしれない。

 覇主可も闘いを楽しんでいるようだ。
 狡い。
 私は闘えないのに。

 星璃逢は闘士たちに嫉妬した。
 覇主可の心をとらえるのは、闘いだ。

「星璃逢様!」
 覇主可が来た。
 愛舞綺も一緒だ。

 ああ、治したのか。
 覇主可なら可能だろう。間に合ったのだろう。良かった。

 失敗した。
 これでは、本当に、恨んでもくれない。

「星璃逢様!」
 覇主可に抱かれる。挿入される。動けないほどの快感。

 ああ、そうか。他の女を抱いた分、星璃逢も抱く。二人の約束。
 愛舞綺を治すために、抱いたのだろう。
 約束を守ろうとしているのだろう。

 何ということだ。
 愛舞綺を刺して、そのことで抱かれる。
 こんなことは、ダメだ、いけない。

「覇主可、抱いて、使って、私のこと、変えて! 壊して、壊して!」

「星璃逢様」

「あなたの奴隷にして! あなたのために、みんなを護らせて! 覇主可のために、他の女の子を差し出すようにして! 覇主可が他の女の子と抱き合う、そのことが嬉しくて、それを考えただけで、絶頂して、満たされるようにして!」

「もう、他の女の子としても、私にはしないで! あの約束、ダメ! あの約束、あの約束が、私を壊した……」

「星璃逢!」
 初めて、呼び捨てにされた。

 少年の奴隷になれたのだろうか?
 主人である自分が、それを望んだから?

「星璃逢様は、僕の主です。そして、星璃逢は、僕の奴隷だ。互いに奴隷で主で……そんな関係は、恋人かもしれない」

「恋人? 今更? 覇主可の恋人は、愛舞綺でしょ?」

「僕が普通の男の子だったら、そうなったかも。普通の男の子は、愛舞綺を抱きしめられないけど」
 暗殺者の毒体を抱きしめられるのは、覇主可だけだろう。

「僕は抱師です。普通の男の子じゃない。星璃逢様に買われた、性技師です」

「抱師の夢なんです。御主人様を恋人と呼ばせてもらえること。でも」

「それは簡単なことで、簡単じゃない。恋人と呼ばせてもらうだけなら、簡単なんですけど……普通の恋人には、なれない。抱師は御主人様を支配してはいけないんです。ごめんなさい、星璃逢様、迷わせた」

「星璃逢、僕の奴隷なら、恋人なら、愛舞綺とも仲良くして。愛舞綺、星璃逢にキスしてあげて」

「えっ? それって、あっ! ああっ!」
 覇主可が動く。星璃逢の言葉は快感で遮られた。

 愛舞綺のキスは、星璃逢に致死の毒を流し込むだろう。
 ああ、そうだ。それは正しい。
 不思議に思えるくらい正当だ。

 愛舞綺のキスで死ぬ。
 覇主可に抱かれたまま。
 それは良い考えだ。
 愛舞綺には、復讐の権利がある。

 愛舞綺の唇が近づく。
 吐息が甘い。
 毒は果実に仕込むものだ。

 甘い……甘いキス。
 美味しい唾液。吸う。
 頭が痺れる。身体が熱い。
 優しい。苦しくない。

 星璃逢の身体から、数本の糸が落ちた。
 神経系を操る愛紅璃の糸が死んだ。
 愛舞綺の毒に耐えなかった。

「ありがとう、愛舞綺。星璃逢、がんばったね、ありがとう。僕を喚んでくれて、ありがとう」

 星璃逢の意識は途切れなかった。死んでいない。妖術師の糸を殺すほどの毒、星璃逢に耐えられるはずはないのに。でも。

 覇主可の治癒の射精が体内を洗っている。容赦なく染み込んでくる。毒で痺れていたから、耐えられたのだろう。この快感に。

「覇主可、私、操られたんじゃない、操られたけど、私も望んだ、愛舞綺に嫉妬した」
「いや、操られたんだ。あの妖術師たちの技だ。操られたことを気付かせない」

「操られたのは解るの、でも、私も望んだの」
「それを迷わせる技だ。恐ろしい技」
 操られた行動を、自ら望んだと思わせる。あの舞姫たちには容易いだろう。

「いやらしい、汚らわしい、忌まれる技だ。でも、僕の技も、そうだ。負けない」
 覇主可の性闘技の快感が、星璃逢に走った。性交の快楽とは別だ。
「!!」
 星璃逢は声も出せない。

 これが、闘いで覇主可が使う快楽なのか。
 動けない。それどころではない。

 心臓の鼓動が、呼吸が痛い。いや、それは痛みではなく快感なのだが。
 なるほど、闘いの技だ。

「星璃逢、僕の主人、特別な人。僕が護る。愛舞綺の言う通り、僕は悪魔、淫魔にもなれる。それだけじゃないけど」

 覇主可が離れる。
 痛いほどの快感が弱まってゆく。しかし、消えない。

 動けないほどではない。
 しかし、動くたびに快感が走る。
 それはわずかな渇きと、大きな癒しの快感だ。

「覇主可、私、満たされるのね、ずっと。でも、あなたが欲しくなるのね、時々」

 少年は恥ずかしそうな笑顔を見せる。

 覇主可の操る快感は渇かせるモノだけではない。
 癒す快感の優しさ。満たされる。

 恐ろしい技だ。
 優しく絡め捕るそれを、拒むのは難しいだろう。

 覇主可はどこか落ち着かない。
 この技、優しい快感こそが、本来の抱師の技だ。でも、それを使うのはどこか恥ずかしい。
 卑怯に思えるからではない。自分が目指した方向ではないと思えるから。

「非道い技だな。あの舞姫たちに劣らないな」
 愛舞綺が羨ましそうに少年をなじる。

「うん、あの娘たち、凄い術師だ。今度は、負けない。ありがとう愛舞綺、助けてくれて」
 覇主可の瞳は夢を観ている。
 あの妖術の舞姫たちと、非道の技を競う夢。

 そうだ、これも自分だ。
 愛と快楽の闘技を捨てられない。それがどんなに卑怯に、いやらしく見えたとしても。

「覇主可、あの妖術師たち、捕らえて。戦にも勝つわよ。こっちは迎え撃ってるのよ。遠慮は不要。楽しいでしょ?」
 星璃逢は勝てと言った。護って、ではなく。

☆ 燃える心は

 妖術の舞姫たちが退くと、敵陣もやや退いた。

 今攻撃されたら、修羅のように闘えるだろう。星璃逢と覇主可は取り返したが、心は燃えたままだ。
 それを知っているのだろう。

「こちらから攻撃しましょう。遠慮は要らないわ。死にかけても、覇主可が生き返らせてくれるわ」
 星璃逢は攻撃指令を出した。
 どこか雰囲気が変わった。明るかった美貌が妖しさを備えたように見える。
 覇主可に打ち込まれた癒やす快感と、そこに混ぜられた、わずかな渇きのせいだ。

 覇主可が愛舞綺を致命傷から回復させたことは、皆を驚かせた。
 間に合っただけだと言う。そうなのだろう。
 しかし、覇主可にしか治せない重傷だった。彼が居なければ死んでいただろう。

「生き返らせてもらえると思うな。解っているだろうけど。覇主可に抱かれるために死ぬなんて、許されない」
 獅子桜院の警告は自分に言い聞かせるためでもある。でも、大丈夫だろう。覇主可に抱かれるために敵に敗れる、それは望まない。

「あの妖術師たち、捕らえたら、どうするのですか?」
 舞躍夏が星璃逢に訊く。妖術の舞姫たちは、できるだけ捕らえるように指令が出た。

「覇主可の虜にしてもらって、戦力にするわ。愛舞綺や映離射や、あの娘たちみたいに」
 星璃逢が言ったあの娘たちは、これまで覇主可が捕らえた兵士たちのことだ。

 他の女を抱いた分、星璃逢も抱く。その約束は解いた。
 覇主可は、快楽の技で捕らえてあった兵士たちを抱き始めた。星璃逢を抱くために使っていた時間をかけて、少女兵たちを抱いた。
 抱かれた少女兵は、覇主可に従い、この国を護ると誓った。彼と共に戦いたいと言う。

 意思を奪っているわけでもない。抑えつけているわけでもない。覇主可の虜になった少女兵たちは、皆、心が燃えている。兵士として、以前より強くなっただろう。

 あの妖術師たちが覇主可を操ったことと、それほど違うことではない。あの舞姫たちを責める理由は無い。
 でも、遠慮する理由も無い。同じような技だからこそ、競いたい。遠慮なく競える。

「戦力、増えたな。どこまで押せるかな」
 愛舞綺がつぶやく。敵の勢力の方がまだ多いだろう。

「どこまでもよ。まだ、戦力は増えるわ。覇主可が増やしてくれるわ」
 星璃逢が応える。

 覇主可は今、芽凜愛を抱いていた。
 彼女の占術は役立つ。パワーを注ぐ。覇主可には魔法は使えないが、彼が注ぐパワーは魔法のエネルギーになる。

「星璃逢姫、あの後、覇主可に抱かれたか?」
 愛舞綺が問う。

「いいえ」
「求めないのか? 遠慮してしまうのは解るが。でも、覇主可の正当な相手は、あなただ」

「そうなのかしら?」
「そうだ。星璃逢姫、覇主可を守るのは、つなぎ留めるのは、あなたの役目だ。私や少女兵が寝返ったのは、あなたの国があったからだ。覇主可が寝返らないのは、あなたに買われたからだぞ」

「ああ、そうね。覇主可は私が買ったから、此処に居るのよね。この小さな国を捨てないのよね。覇主可に従う娘たち、みんな連れて、出て行くこともできるでしょうけど。そうしないのは、私のせいなのね」

「まあ、そんなに深刻に考えることではないが。あの舞姫たちも知っていたさ。あなたは王だ。この戦いのプレイヤーさ」

「そうね、そうなのよね。そして、降りることはできない」
「まだ、降りる必要は無いだろう。戦況は以前より悪くない」

「でも、大変だよな。それは解る。負けたくもなるだろう。だから、覇主可を使え。心を燃やすために」

 星璃逢は微笑む。
 皆、心が燃えているらしい。
 頼もしい。

「私の心も燃えてるわ。静かに、頼りない炎だけど、燃えてる。ありがとう、愛舞綺」

 星璃逢は覇主可を背後から抱きしめる。
「星璃逢様、少し待ってください」

「ええ、待つわ。戻って来るのよね? 私の所へ」
「ええ。みんなを抱くのも、あなたのためです」
 味方を癒し、敵を寝返らせる。そのために抱く。
 それは、星璃逢のためだ。

「覇主可、それは、私を求めてくれてるということよね?」
「はい」
「待ってるのよ。早く、来てね」

 星璃逢は、覇主可の射精をどれだけ受けただろう。他の愛人たちの十倍、いや、百倍受けたかもしれない。
 十分に愛された。思い残すことなど無い。

 でも、まだ、今夜が、明日があるなら。
 来てくれるだろう。抱き合えるだろう。

 明日を創ろう。生き残ろう。
 そのために、戦おう。

☆ 追撃そして

 覇主可と精鋭たちは出陣した。星璃逢も一緒だ。城は沙流蘭に任せた。あの妖術の舞姫たちを追う。

 あの舞姫たちを捕らえ、従えるのは、覇主可の望みだ。戦の利ではない。しかし、覇主可の望みは、女王である星璃逢の望みだ。そして、覇主可の愛人である王国の少女たちの望みだ。

 敵兵たちはまだ、攻めてこない。そうだろう、覇主可の虜になるだけだ。城に残る守護兵は増えた。覇主可が抱き、従えた少女兵たちが増えている。

 芽凜愛の占術が妖術師たちの位置を知らせる。占術と言うより、探索魔法に思える。未来を占うのではなく、現在を知っているように見える。しかし、遠くに着くのは、未来のことなのだ。だから、占術なのだろう。
 それは強力だが、消耗も激しい。でも、覇主可が魔力を供給してくれた。パワーに満ちた精液を注がれ、飲み、魔力が満ちた。

 妖術師たちが居るはずのキャンプが見えてきた。敵の少女兵たちが立ちふさがる。目隠しを着けた少女兵たち。あの遙思という妖術師の兵だろう。目隠しは、獅子桜院の魅剣舞を遮るためだろう。

「侮られたかな? この数じゃ、魅剣舞を使うまでもない」
 獅子桜院、詩嵐武、舞躍夏が前に出る。特殊な技を使わなくても、負けるとは思えない。武術のレベルの差は明らかだ。

 しかし、少女兵たちの槍が、鋭く、速い。一般兵とは思えない。手強い。数本の槍が同時に、互いに邪魔もせず、密集して攻撃してくる。前に出た三人は大きく下がる。距離をとる。

 目隠しを着けた少女兵たちは、完璧なコンビネーションで正確な攻撃を行った。遙思が伝える自在の視界と、おそらくは愛紅璃の糸の行動支配で操られ、完璧なコンビネーションを可能にしているのだろう。

「なるほどね、そして、あの使い魔たちが護るのか。手強いな」
 目隠し少女兵たちの肩に、多流花の使い魔が乗っている。縫い針のように小さい剣を持っている。覇主可の指先を警戒しているのだろう。

「あの使い魔は、私の毒や覇主可の見えないパワーの技で落とせる。でも、それは相手も分かっているはずだ。別の目的があるかもしれない。気をつけろ。刺されたら、死ぬかもしれないぞ」
 愛舞綺は、かつて打ち破った使い魔を警戒している。あの妖術師たちが、同じ失敗をするはずが無い。
 縫い針のような剣でも、致命傷を与えることは不可能ではない。危険な急所はある。毒を使っていないとも限らない。

 覇主可が前に出た。
 目隠しした少女兵たちが怯む。彼から何かが吹き付けて来る。心地良く危険な何か。
「抱師の技、色々、忘れてた。燐さんに怒られるな。でも、思い出した」

 愛舞綺を生き返らせた時、封じていた記憶と共に、いくつかの技の有効性を思い出した。技そのものを忘れていた訳ではない。使わなくても済むと思っていた。使いたくなかった。でも、今は使える。あの舞姫たちが相手なら。
 身体の奥底、深い所から湧き上がる衝動に、自分の色を混ぜ、解放する。それは、勝手に周囲の女性に向かう。

 目隠しを着けた少女兵たちが震える。視覚は関係ない、香り? そうでもない。熱? いや、雰囲気? 彼の傍に居るなら、遮ることはできない何か。
 快感? 渇き? 動けないほどのものではない。でも、力が抜ける。覇主可に触れたい。抱かれたい。

 触れずに発情させる技だ。この技に特化した抱師なら、動けなくすることもできる。覇主可はそこまではしない。行動を縛るために、ずっと対象の傍でパワーを発している訳にはいかない。
 自分のやり方は違う。一瞬、触れれば良い。

 少女兵たちの動きが鈍る。愛紅璃の糸による行動支配に、少女兵たち自身の身体が反抗する。覇主可の欲情を感じる。彼も女性を求めている。覇主可に触れたい、触れられたい。

 覇主可の指先が走る。少女兵たちに触れてゆく。遙思の視界、愛紅璃の糸、合わせても躱せない。止められない。
 満たされない快楽が打ち込まれる。動きが止まる。

 神経系を操る愛紅璃の糸で、強制的に動かすことができない。これまでの、痛みの予感で動きを縛る技ではない。
 覇主可を求めるために、自分のために、糸の支配に反抗する。自分を失いたくない。動けないのは、糸の支配に耐えるためだ。

 覇主可が微笑む。目隠しをした少女兵たちには見えない。遙思が見せない。見えないなら、心を融かす効果も無いはずだ。
 でも、感じた。彼が笑った。笑ってくれた。自分たちが妖術師の支配に反抗できたから。
 笑顔の気配は、覇主可が発する発情の雰囲気に混じり、しっかり感じた。

 これも、この笑顔も、妖術師の技と同じようなものだ。心を導く技。操られることと、それほど違わない。
 でも、心地良い。自分で選んだ、自由の、解放の感覚。少年の技による、自由の強制、それは解る。そのことを隠さないことさえ、技の一部だ。狡い。でも、欲しい。心地良い。

 詩嵐武と舞躍夏が動けない少女兵たちの間を抜け、キャンプの天幕に迫ろうとする。

 少女兵たちの一人が動いた。至近距離。舞躍夏は放たれる糸を躱せなかった。詩嵐武が鎌に変形した長柄を振るう。相手が分解。糸の塊だった。

 愛舞綺が走り、唇を噛む。糸の塊に毒を吹き付ける。舞躍夏は操られて跳ぶ。詩嵐武が伸ばした長柄に乗らない。当然だけど。

 多流花の使い魔が霧を撒く。舞躍夏が見えなくなる。覇主可と詩嵐武が使い魔を落とそうとする。避けられる。霧が薄くなり、散る。

 舞躍夏は目隠しを着けられていた。

☆ 妖術巨兵陣

 舞躍夏が目隠しを付けられた。遙思と呼ばれる妖術師の技だ。以前、覇主可も着けられた。その目隠しは本人には外せない。認識できないのだ。
 周囲の光景は見える。それは遙思から送られる映像だ。幻覚も混ざる。そして、目を閉じても見える。
 操られるのは視界だけではない。自在に幻覚を見せられるなら、行動、精神を操るのは難しくない。幻覚を見ていると解っている相手も絡め取る、それこそが妖術師の技だ。

 舞躍夏が詩嵐武に跳びかかる。敵と見えているのだろうか。詩嵐武は長柄で撃ち落とそうとする。詩嵐武の変幻の長柄は、刃を収めることもできる。

 空中で全て躱される。舞躍夏を捉えられない。風に舞う綿毛を捉えられないように。
 それでも達人なら捉えることもできるはずだ。詩嵐武はその域に達している。空中の綿毛を貫く自信はある。
 しかし、その綿毛が意思を持ち、風の中を泳ぎ、刃を蹴って躱すとしたら?

 舞躍夏の体重消去の技は、詩嵐武の長柄と組んで有効だった。二人はパートナーだった。舞躍夏の技、実力は良く知っている。彼女が本気になったら捉えられないだろうことは知っている。
 しかし、幻覚を見ているだろう彼女は、自分を別人と思っているはずだ。知られているはずの技も通用するかもしれない。
 脚を薙ぐ。舞躍夏を跳ばせる。空中で突く。武器に乗られた。このままなら、長柄の上を駆けて来る舞躍夏の打撃を躱せないだろう。
 変幻の長柄が爆ぜた。束ねた鞭のように枝分かれし、舞躍夏を包み込む。この形状変化は滅多に見せない。隠し技は隠すものだ。

 蜘蛛の脚のように包み込むそれは、舞躍夏を捕らえていない。遙思の目隠しが伝える外部からの視界は、脱出口を見定めていた。閉じる寸前に飛び出した。舞躍夏の体術だからこそ可能なことだ。
 でも、空中に飛び出す形になった。そこに覇主可も跳び上がっている。詩嵐武のアイコンタクトに応えた。

 空中での体術なら舞躍夏が上だ。でも、覇主可の身体に触れる訳にはいかない。触れれば快楽を打ち込まれ、動けなくなる。
 それでも空中で打拳。触れてはいない。舞躍夏の拳は爆発のような衝撃を発する。体重を消す彼女が相手を押すことはできない。空中ならもっと無理だ。だから、彼女の拳の威力は爆発する。押さずに衝撃を打ち込む。

 覇主可に効かない。硬気、見えないパワーの壁だ。覇主可の指先が舞躍夏に向かう。避けられた。空中で彼女を捉えるのは難しい。

 風に舞う木の葉のように落ちてくる舞躍夏を詩嵐武の長柄が捕らえようとする。また躱され、跳ばれた。
 覇主可もまた跳んでいる。指先が伸びてくる。肩に触れようとするそれを、舞躍夏は身体をひねって躱す。
 覇主可の腕の影に隠れていた、飛翔する短剣が舞躍夏の頬をかすめる。目隠しを切り落とそうとしていた。紙一重でやはり躱される。遙思は一度、この映離射の短剣に技を破られている。予測していた。

 躱した短剣は空中で反転し、再び襲ってくるはずだ。でも、躱せる。覇主可はまだ空中、少し距離は離れた。空中で移動する技は覇主可には無いはずだ。仕切り直しだろう。
 伸びてきた詩嵐武の長柄を蹴り、覇主可が空中で進んだ。でも当然、遙思には見えている。映離射の短剣も反転、舞躍夏の背後から向かってくることも問題ではない。自在の視界に死角は無い。
 この程度か? 予測できる範囲。自在の視界でサポートする舞躍夏なら、全て躱せる。

 目隠しを着けられた舞躍夏が詩嵐武、覇主可、映離射を抑えている。精鋭四人を抑えられている。

「芽凜愛、あの舞姫たちの位置を探ってくれ」
 獅子桜院は加勢しない。その争いに囚われることを避ける。まだ、あの舞姫たちの姿は見えない。でも、近くには居るだろう。術師を抑えれば舞躍夏は止まるかもしれない。

 兜の裏側に描かれた魔法図から、占術の結果が送られてくる。何も無いように見える一角。天幕も張られていない。
 目を閉じ、静剣舞の動きに入った。動いていることを悟られない剣舞、魅剣舞の裏技。一般の少女兵では止められない。
 獅子桜院の剣が、偽装された天幕を切り落とした。ただの絵ではない、観る角度に合わせて変化する偽装絵が描かれていたようだ。以前、覇主可が目隠しの上から着けられた、本人そっくりの顔を描いた仮面が思い出された。

「さすがね。騎士団長殿、やっぱりあなたが面倒だわ」
 偽装天幕の向こう側。妖術の舞姫たちは、地面に掘られた穴を囲むように立っていた。
 黒い穴。その中に何かが居る。
 少女兵の死体? 詰め込まれている? いや、動き出した。死体ではないようだ。

 大きい。少女兵たちの身体が組み合わさり、一つの巨人の身体を作っている。愛紅璃の糸による身体操作、組み合わさった身体の隙間を埋める多流花の使い魔、そして遙思の目隠しによる感覚と認識の統合がこの技を可能にする。

「派手な術だな。でも、それだけか? それも覇主可には敵わないだろう」
 この巨人も、覇主可が触れれば倒されるだろう。覇主可の快楽は組み合わさった身体を伝わり、構成する少女たち全員を解放するだろう。

「そうかもね。でも、あなたには、この娘は倒せないかもね」
 目隠しを着けられた少女たちには、魅剣舞は効かない。普通に切りつけても、この巨人に効くのだろうか? 巨人にとっては、普通の剣は小さな棘に過ぎないかもしれない。

「あ……あああ、あ……」
 巨人が吼えた。何人もの少女たちの声が組み合わさったそれは、美しい歌声のようだった。

☆ 瞬迷解体

 覇主可、詩嵐武も妖術の巨人を認識している。
 獅子桜院だけに任せるのは違う。目隠しされた少女兵で構成された巨人、覇主可が対するのが適切だろうことが解る。
 その焦りを操られた舞躍夏が突く。蝶のように舞う拳士の攻撃が激しくなる。
 彼女は殺さずに捕らえなければならない。味方だ。傷つけずに捕らえるなら、覇主可の技が必要だ。詩嵐武だけに任せ、覇主可が巨人の方に向かうことができない。
 たった一人、術にかかっただけで、二人以上を抑えられている。

 巨人が動く。動きは鈍い。大きければ遅くなる、予想通り。だから、あまり効果的な術には見えない。
 巨人の指は少女兵たちの腕だ。その指先が短剣を持っている。爪のようだ。

 腕が、爪が振られる。獅子桜院は大きく下がって避ける。動きは速くない、でもリーチが長い。威力もあるだろう。避けるのは良いが、受け止めることはできないだろう。避ける動きも大きくなる。意外と強敵なのかもしれない。

 巨人の腕が伸びる。巨人を構成する少女たちの身体が流動するように変化し、腕を伸ばす。
 獅子桜院はその爪を剣で受けるが、弾き飛ばされる。体格差がありすぎる、受け止められない。

「強いな。侮ってた」
 巨人の正体は、組み合わせを変えて形状変化できる少女兵の塊だ。人型をとっているのは、偽装と威圧のためだろう。多流花の使い魔が身体の隙間を埋め、この変化をサポートしているようだ。

「うふふ……」
 巨兵が笑う。もう人型ではない。たくさんの少女兵たちの声が重なる。どこか狂気を含むような、耳障りな声。

 獅子桜院は静剣舞を舞い始める。巨兵の攻撃が空振りする。
「その技、この娘には効かないわよ」
 遙思の声。巨兵を構成する使い魔の一匹が発したようだ。
 巨兵が変化し、大きな投網のように獅子桜院に襲いかかった。

 静剣舞を舞う獅子桜院の姿は見える。ただ、動きが見えなくなるだけだ。気がつくと位置が、姿勢が変わっている、そんな剣舞。だから、一撃は躱せた。
 でも、見えない動きの移動距離には限界がある。彼女が見える位置から遠く離れることはない。普通に可能な限り動くとしても、この投網の範囲は抜けられないだろう。

 巨人が再び人型に戻る。獅子桜院が居ない。いや、居る。巨人に取り込まれている。
 目隠しはされていないが、愛紅璃の糸に巻き付かれた。身体が動かない、いや、動かされる。
 少女の身体で構成された巨人の身体が、一人分増えた。

「凄いわね。これが妖術師の闘い方なのね。闘いたくなる気持ち、解るわ。憧れる気持ち、解るわ。でも、闘いたくても、私じゃ足りない、それも解る。覇主可、交代よ」
 星璃逢が進む。覇主可、詩嵐武、舞躍夏の方に向かう。

「星璃逢様! 危険です!」
「みんなやられたら同じよ。覇主可、舞躍夏は任せて。獅子桜を助けて」
 星璃逢は獅子桜院の強さを知っている。騎士団長が敵わないなら、他に誰が?
 覇主可だ。

 獅子桜院とあの巨人は、相性が悪かった。皆それぞれ特徴があり、弱点もある。
 そこを突くのは妖術師だけの戦法ではない。闘いの基本だ。
 相手を知り、自分にできるやり方で弱点を突く。あたりまえのこと。
 でも、あの妖術師たちがそれをすると、特別なことに思えてしまう。あたりまえのことなのに。そこが妖術師の技だ。過度に恐れさせ、判断を狂わせる。

 覇主可が舞躍夏に抑えられている。ならば、あの巨人はやはり覇主可に弱いのだろう。彼を向かわせれば良い。

 目隠しを着けられた舞躍夏の攻撃が覇主可に集中する。爆発する打撃が連打される。覇主可の硬気も尽きてきた。躱さなければならない。そのせいで、彼から攻撃するのが難しい。

「わかった、星璃逢、舞躍夏を押さえてて。怪我しないように。がんばってね」
 覇主可が下がり、星璃逢とすれ違う。一瞬、口付けし、抱きしめ、指先が秘所に触れた。
「!」
 星璃逢の中にパワーが燃え上がる。

 星璃逢が舞躍夏を遮る。動きは非戦闘員とは思えない。伸ばす指先は覇主可の技を思わせる。
 舞躍夏が避け、下がる。

 星璃逢の指先に危険は無いはずだ。でも、違うかもしれない。覇主可の技、触れれば動けなくなる快感を使うかもしれない。
 触れ合う少女の身体を通して送ることができる、それは知っている。触れた少女の身体に溜め、他の少女に伝えることもできる、それも知っている。
 でも、その技の媒体になるなら、星璃逢も動けないはずだ。星璃逢は動いている。覇主可の快感を持ってはいないはず。でも、あの星璃逢だ。覇主可の主人、彼の射精を最も受けた女。覇主可の快感に耐性があるかもしれない。いや、耐性は一番あるだろう。

 一瞬迷ったのは、舞躍夏を操る遙思だ。その間に、覇主可は巨人に達している。巨人の動きは鈍い。遙思が迷ったから。

 舞躍夏は星璃逢に打拳。星璃逢が受け止める。覇主可と同じ、見えないパワーが護ったようだ。手甲に覆われていない腕に触れる。覇主可の、いや、星璃逢の快感が走る、舞躍夏の身体に。
 その瞬間、詩嵐武の長柄が爆ぜ、舞躍夏と星璃逢をまとめて捕らえる。

 覇主可は優しく巨人に触れる。近付いただけで動きは更に鈍っている。触れずとも動きを縛る、覇主可の周囲に展開する発情力のせいだ。
 巨人の身体に覇主可の快感が打ち込まれる。少女たちの身体を伝わる。

 巨人が解ける。動けなくなった身体が折り重なる。

 一瞬の迷いが全てを壊す。
 儚く脆い、満開の花のような技だった。

☆ 堕落の魔宴

 巨人が解けた。組み合わさった少女兵たちの身体が、覇主可の快感で動けなくなり、人型を保てなくなった。
 そこに組み込まれた獅子桜院も動けない。愛紅璃の糸に巻き付かれている。操られるより、動けない方が良い。

 愛紅璃の糸は恐ろしい。神経系に作用し、行動を操る糸片。それ自体が生き物であり、密かに近付いて巻き付くこともできる。
 幻を見せて操る遙思の目隠しは、本人には外せない。でも、仲間がそれを外すことはできる。愛紅璃の糸を外すのは難しい。身体のどこかに潜んだ糸を見つけることも容易ではない。
 確実に外すなら、愛舞綺の毒と覇主可の回復を合わせるしかないかもしれない。何本か見つけて外しても、潜む糸が残っているかもしれない。

 覇主可は少女兵たちに近付く。獅子桜院を助けようとする。
「覇主可、近付くな! まだ、糸が……」
 そう、糸は死んでいないだろう。でも、糸が動かす少女たちの身体は封じた。そのはずだ。獅子桜院を助け、愛舞綺の毒の協力を得て糸を外さねばならない。

「んふっ、みんな、愛されてるなあ。そうよね、彼の愛人だものね」
 また、遙思の声。

 巨兵が動いた。いや、もう巨兵ではない。ただの少女兵の集団だ。
 動けないはずの身体、立ち上がりはしない。でも、少しだけの動き、その動きを合わせる。遙思の目隠し、愛紅璃の糸、多流花の使い魔のサポートが動きを助け、増幅する。

 覇主可の脚を捕らえる手。たくさんの手が、腕が、触手のように伸びてくる。
 避けられないスピードではない。でも、広い、多い。

 それでも、下がれたはずだ。
 でも、覇主可は迷った。
 巨兵を、この少女たちを解いたはずだ。解放の快感を送った。操られることに対抗してくれるようにしたはずだ。
 でも、少女兵たちは妖術師に協力している。解放できていない。解放の快感を拒否された。

 少女兵たちは思う。何故、解く? 解放を強制する?
 せっかくつながっているのに。
 何故、お前に従わなければならない?

 確かに、欲しくなる。愛されたくなる。眩しい自由の気配も感じる。
 でも、この役目、妖術師に強制されたと思っているのか?

 お前の仲間が操られるなら、そうだろう。
 でも、違う。お前は敵だ。

「そう、そうなんだよね、知ってる。敵だよね。でも、だから、解くよ。敵だから、容赦しない」
 覇主可の笑顔。
 相手は手強い。望むところだ。

 彼の笑顔が最前線の少女兵を怯ませた。
 危険と蠱惑の気配。敵わない。彼は魔物だ、淫魔だ。触れたら堕とされる。

 でも、仲間の感触が彼女を励ます。この術なら、あの妖術の舞姫たちなら、彼を止めてくれるかもしれない。こんな危険な少年を野放しにしてはいけない。

「ほら、コレ、あげるよ。抱師のミルク、貴重品だよ?」
 覇主可が射精。いつの間にか勃起を現している。
 少女兵たちに降りかかるそれは、どんな魔法薬より効く回復の液。そして、この世界には無かったかもしれない美味と快感。

 少女兵たちに怒りの気配。
 なんてことをするのだ、もったいない……いや、そんなモノ、要らない。麻薬だ、毒だ。触れてはいけない。
 でも、触れた。前線の何人かは触れた。彼女たちはもうダメだろう、堕とされただろう。
 いや、まだ、助けられるかもしれない。自分が前に出て、代わりに……その液体が欲しい訳じゃない、仲間を助けるため。

 彼女たちは遙思の目隠しを着けている。でも、その液体の感触は防げない。香りは防げない。彼の熱、気配は防げない。
 相手が覇主可でなかったら、遙思の目隠しがその気配も感触も別のモノと思わせ、少女兵たちを抑えることもできただろう。でも、抑えられなかった。覇主可だから。

 覇主可の精液を浴びた少女兵たちが、別の少女兵に押し倒される。その液体を舐めとられる。顔や身体で拭き取られる。そして、奪われる側も抵抗しようとする。
 少年が浴びせたのは、解放などではない。でも、確かに糸と目隠しの支配からは解放されている。いや、違う。糸と目隠しこそは、仲間だ。仲間を拒否するように強制された。誘惑された。

 この少年は悪魔だ。悪魔が敵だった。
 いや、敵に対して悪魔になるのは、彼だけではない。戦場ではよくあること、必要かもしれないこと。自分たちも、そうなろうとした。

 でも、自分たちは、悪魔になりそこねた。彼に敵わなかった。
 悔しい。でも、美味しい。気持ち良い。身体が燃えている。暖かい。熱い。
 宴だ。悪魔の宴だ。夜明けは遠そうだ。

 少女兵たちは絡み合い、慰め合う。気持ち良い。我慢できない。
 少女同士では満たされないことも知っている。
 でも、彼はまだ、忙しいだろう。
 良い子にして、待とう。宴を盛り上げて、彼を待とう。悪魔が来てくれるように。

☆ 操る者、操られる者

 闘いの中、愛舞綺と映離射の姿が見えなくなっている。いつの間にか、消えていた。
 愛舞綺と映離射は陰に潜む。暗殺者姉妹の恐ろしさはそれだ。遠隔操作される短剣や、毒の身体だけではない。
 隠形術の正体は、その時、術者しか知らない。様々な方法はある。その時、何処にどう潜むか、いつも同じではない。いつも同じなら、簡単に見つけられてしまうだろう。
 今、彼女たちは何処に潜んでいるのか。必ずしも影、暗がりとも限らない。陰は心の隙間だ。陽動が惹きつける裏側、手品師が視線を向けない所に仕掛けは潜む。

 多流花の使い魔が霧を撒く。これまでの霧とは色が違う。黒い霧、いや、闇? 夜の気配。
 巨兵陣は破れた、潮時だ。見せる技は終わった。視界は要らない。

 多流花の使い魔はホムンクルスだ。魔法で造られた、小さい人間型の生き物。多流花と感覚共有しつつ、自律行動もする。
 軽い身体は素早い動きと大きな跳躍が可能だ。しかし、パワーは無い。筋力も体重も無い。筋力はサイズ比で言えばかなりのものだが、それでも脅威ではない。
 しかし、一本の針でも、手練れの暗殺者が使うなら脅威となる。また、毒を使うなら、小さくても侮れない。
 多流花は毒を使うのだろうか? 使うかもしれない。そのことにためらいは無いだろう。
 でも、使わないかもしれない。妖術の舞姫は暗殺者ではないようだ。騙し、絡め取り、操る者だ。でも、使うかもしれない。迷わせる、それはもう、そのことが妖術師の技だ。

 愛舞綺が愛紅璃の背後に現れた。抱きしめ、麻痺毒を送る。他の者なら、糸が巻き付き、行動を操られただろう。しかし、生物であるらしい愛紅璃の糸は、愛舞綺の毒の身体を操れない。毒が糸を殺す。

「予想通りだね。まあ、愛紅璃の糸は怖いよね。愛紅璃を押さえようとする、正解だ。でも、予想通りに現れちゃダメだよ」
 多流花の声。小さな少女が愛紅璃の身体の上を走り、愛舞綺の身体に飛び移る。針を刺される感触、小さな痛み。
 愛舞綺が飛び退く。彼女の意思ではない。身体が勝手に動いた。
 身体に針を刺し、動作を操る。有り得る技だ。針を刺して治療する技術もある。殺す技もある。あの妖術師たちなら、動きを導き、操るだろう。遙思、愛紅璃だけではなかった、多流花も相手を操る術師だったのだ。

 愛舞綺の毒の身体も、針の刺激には対抗できない。身体の上を走る小さな少女、その使い魔には毒は効く。しかし、身体の動きを操られるのに、毒を浴びせることができるのだろうか?
 愛舞綺は唇を小さな少女に向ける。毒を吹き付けるつもりだった。でも、できない。首の後ろに針の感触。身体が勝手に動き、口内に溜めた唾液を飲み込んでしまう。
 愛舞綺に飛び乗った使い魔は一匹ではない。もう、数匹の使い魔が身体の上を走っている。首筋、脇、肘の内側、股間……動作を操るための要所にとりついている。

「やっと捕まえたわ。愛舞綺、覇主可の恋人」
 愛舞綺は遙思に目隠しを巻かれた。黒い霧の中だが、目を覆った妖術師は相手を間違えない。
 妖術の舞姫たちにとって、予定通りの行動。愛舞綺は愛紅璃を抑えようとし、術中に落ちた。愛舞綺を捕らえれば、十分な戦果だ。覇主可を捕らえるための切り札になる。

 覇主可を捕らえなければならない。この国を攻めた、真の理由。闘いの楽しみのために攻めた、それだけではない。
 星璃逢には、覇主可を買うことができた。覇主可をこの世界に喚ぶことができた。それは、星璃逢の国が攻められたからだ。燐という異世界の商人から、覇主可を買うことができた。
 抱師を売る商人は、相手を選ぶ。遙思たちが仕える、あの人には買えなかった。

 それは解る。覇主可があの人に買われて、幸せになれるとも思えない。
 だから、買えた者から奪う。星璃逢は買えた、そう、星璃逢なら覇主可を買えるだろう。美しく優しく強い心を持つ星璃逢なら、買えるだろう。
 そのために、買わせるために攻めた。星璃逢に異世界へのアクセスを勧めた者、その者の認識も操った。遙思の認識変換の技は、操られたことにも気付かせない。
 結果、覇主可が来た。覇主可は抱師という性愛師であり、星璃逢とその国を救いかねない強力な闘士でもあった。でも、確かに抱師、待ちかねた性愛師だ。

 そして、覇主可は男性だ。この世界の男性は、みんなあの人が奪ってしまった。そのことに気付いている者は少ない。遙思たち妖術の舞姫にかかれば、記憶も認識も変えられる。もともとこのような、男性がほとんど居ない世界だった、そう思い込ませることができる。

 覇主可なら、あの人を満足させられるのだろうか? 彼ならできるかも……いや、無理かな……あの人は、世界中の男性を集めても足りなかったのだから。でも、試してはみたい。命令も受けた。

 覇主可を捕らえる。手強く、楽しい。負けたら、覇主可の虜にされるのだろう。それも楽しそうだ。
 勝ったら、あの人に届けなければならない。少し寂しいけど、仕方ない。

☆ 流星影縫

 遙思が愛舞綺に目隠しを着けた。もう愛舞綺には外せない、術中に捉えた。
 このまま愛舞綺を連れて退却しよう。覇主可を捕らえることは今は諦めよう、十分な成果だ。
 遙思は自在の視界で周囲を確認する。多流花の使い魔が黒い霧を撒いている。この霧の中で見えるのは遙思だけだ。芽凜愛の占術も相手の位置が解るだけだ、実際に見える遙思が圧倒的に有利だ。

 覇主可は巨兵陣を破った。しかし後始末に追われている。糸に絡まれた獅子桜院を助け、巨兵陣を構成していた少女兵たちをなだめている。
 詩嵐武は舞躍夏と星璃逢をまとめて捕らえ、護っている。舞躍夏に着けた目隠しは星璃逢に外された。しかし舞躍夏の身体に潜んだ糸はまだある。愛紅璃の糸を外すことは難しく、時間もかかる。

 残る相手は映離射だけ。遙思は映離射の姿を捉えていない。それが気になる。自在の視界は映離射以外の全員を捉えているのに。映離射の隠形術を破れない。映離射が動いていないから見破れないのだろう、でもこのまま動かないとは思えない。
 隠形術の使い手の一人、愛舞綺は捕らえた。もしかしたらそれは陽動だったのだろうか? 映離射は何処に?

 戦局は転換点を迎えている。舞躍夏は制され、巨兵陣は破れた。今回は遙思たちが負けた。そう思わせ、愛舞綺を捕らえた。
 何か違和感がある。覇主可が愛舞綺を呼ばない、まだ呼んでいない。何故だろう? 舞躍夏と獅子桜院から糸を外すために愛舞綺を呼ぶはずだ。覇主可の回復の精液と愛舞綺の毒を合わせて、身体に潜む糸を殺すために。いや、そのためには時間と手間がかかる。今そうしなくても不思議ではない。でも、では覇主可はどうするのか? そして映離射は?

 短剣が飛んできた。黒い霧の中でも遙思には見える。見えたから避ける。短剣が反転し、再び向かって来る。やはり映離射の引き合う双剣の一つのようだ。背後で反転したがその軌道も見える、自在の視界に死角は無い。
 しかし見えても避けられるかどうか。それは別のことだ。避けられない場合もある。飛翔する短剣より速く動けないなら、避けられない。
 でも、捕らえた。短剣の柄を手で捕らえた。その短剣はまだ動こうとしている。強く握りしめ、押さえる。

 第二の短剣が飛んで来た。引き合う双剣は二本ある、しかし一つは術者が持つはずだ。いや、本当に二本だけなのか? もっと多い可能性はある。何本ある?
 遙思が第二の短剣を避ける。捕らえ握りしめた最初の短剣が引き寄せているのかもしれない。でもこれを放せば、二本の短剣に同時に襲われるかもしれない。そうなれば避けきれないだろう。
 映離射の短剣はそれほど速くない。落ちないのが不思議だ。飛行しているのだろう、魔法を使っているのかもしれない。
 飛行する短剣の動きを封じるには? 遙思は握りしめた短剣を地面に突き立てる。柄尻を踏み、深く押し込む。その間に二本目の短剣が遙思の背に刺さったように見える。血が流れる。
「残念でした」
 短剣が刺さったのは遙思ではなかった。多流花の使い魔、人形のような小さな少女が身代わりになった。

 遙思は二本目の短剣も地面に突き立てようと思う。握る。その瞬間、天から流星のように高速の短剣が落ちてきた。その剣は遙思の足甲を大地に縫い付けた。
 遙思は地面に突き立てた短剣の上に居る。足を縫われ、移動できない。天から短剣が降って来る。自在の視界が捉えている。映離射の引き合う剣は何本もあったらしい。
 自在の視界が切り替わる。黒い霧の外、やや遠くに映離射と芽凜愛を見つけた。映離射は短剣を投げ上げている。それらは遙思の足元にある大地に刺さった剣を目指し、重力で加速されて落ちて来るのだろう。
 芽凜愛の占術が遙思の位置を教えたのだろう。短剣を握りしめた時、映離射にもはっきり位置を知られたのだろう。
 流星のように降る短剣が遙思の身体を貫いた。

「やった?」
 黒い霧の外。芽凜愛が映離射に訊く。
「手応えは有りだ。でも、どうかな。相手は妖術師だ。代わり身かも」
「そうね、でもとにかく、倒すしかないわ。あの遙思と言う妖術師は危険だわ。私も操られてた」
 芽凜愛は遙思に認識変換の術を受けていた。そして星璃逢に異世界の闘士を召喚することを進言した。異世界の商人へ呼びかけ、覇主可を売ってもらうことができた。
 覇主可に何度も抱かれ、回復の精液を飲む中で、認識変換の術が解けた。術が解けたと同時に、異世界への扉を開く魔法も記憶から消えた。しかし、それが仕組まれたことだったことを知った。

 敵は覇主可を得るために攻めてきた。しかし覇主可を渡せば戦いが終わるわけでもない。戦いの楽しみのため、それも確かにあるのだ。
 あの妖術師たちの背後に誰か居る。覇主可を、抱師を求めた者。芽凜愛を、そして星璃逢を利用しなければ抱師を得られなかった者が居る。

 少し感謝の気持ちもある。覇主可に会えた。抱師に抱かれることができた。最高の快楽を体験できた。彼を求める気持ちは良く解る。
 でも赦さない。覇主可を喚ばせて、会わせておいて奪おうとするなんて。赦さない。
 戦いたいなら受けて立つ。この赦さない気持ちも戦いのために誘導されたのだろう。でも、妖術師を相手に迷っても無駄だ。受けて立つ。

☆ 惑迷敗想

 映離射の技が遙思を捉えた。その瞬間、妖術の舞姫たちの技が乱れた。巨兵陣の後始末をしていた覇主可にはそれが解った。少女兵たちに着けられていた目隠し、糸、使い魔、全ての作用が止まり、乱れた。

 覇主可は愛舞綺を探した。愛舞綺の熱を探した。覇主可は愛人たちの熱を感じ、霧の中でも探すことができた。
 愛舞綺を見つけた。愛舞綺は遙思の目隠しを着けられていた。でも、操られて襲ってはこなかった。その目隠しを簡単に外すことができた。
 おそらく遙思に何か起こったのだろう。今なら妖術の舞姫たちを捕らえられるかもしれない。
「愛舞綺、大丈夫?」
「ああ、大丈夫だ。妖術師に何かあったな。映離射の技が決まったのかもしれない。急げ、妹の技ならすぐ死ぬぞ」
 急げば間に合うかもしれない。覇主可が間に合うなら、死にかけた少女を蘇生し、魅了することができる。

 霧が晴れてきた。仲間たちを確認できる。妖術の舞姫たちは? 近くに愛紅璃と多流花を見つけた。二人とも立ち尽くしたまま動かない。
 離れた場所に遙思が倒れている。その身体に数本の短剣が刺さっている。
 覇主可は遙思に駆け寄る。抱き起こし唇を奪う。まだ冷めきってはいない、間に合いそうだ。快楽のパワーでその身体を緩め、交合する。
 蘇生交合。覇主可の再生の精液が遙思の体内に迸る。快楽のパワーが血流を回し、薬効を運ぶ。短剣を抜く。その傷も塞がってゆく。

 愛舞綺は多流花と愛紅璃の方に向かう。二人の妖術師も遙思の認識変換の技を受け、操られていたのかもしれない。遙思が倒され、技の効果が途切れたのかもしれない。だから動かないのかもしれない。
 かもしれない、そればかりだ。そうだ、不確定要素が多すぎる。まだ危険かもしれない。しかし、今がチャンスかもしれない。麻痺毒を注いでおけば良い。動けないようにすれば良い。不確定要素を確定すれば良い。

「愛舞綺、どうしたの?」
 覇主可の声。あれ? 何故、覇主可? 多流花と愛紅璃の方に向かったはずだ。おかしい、行動を操られた? 目隠しは外してもらった、糸に絡まれてもいない、使い魔に取り付かれてもいない。妖術の舞姫たちの技にかかってはいないはずだ。何故、覇主可の傍に来た?
「覇主可、その女も抱くのだな。死にかけた女の味はどうだ? アソコの締まりが良くなったりするのか?」
 自分は何を言っている?
「愛舞綺!」
 覇主可の指先が伸びてきた。そうだ、操られているかもしれない自分を止めるため、触れようとするだろう。
 しっかり受け止める。その手を取り、優しく握りしめる。動きを封じる快楽のパワーが伝わって来る。でも弱い。遙思を生き返らせるために多くのパワーを使っているからだろう。
「そんなことでは私は止められないぞ。星璃逢姫ほどではないが、私もお前にたくさん抱かれた。お前の快楽の技にも、少しは耐性ができているだろう」
 そうだ、そのために覇主可に近付いた。毒の身体を持つ自分を覇主可は特別に意識した。癒しの精を持つ彼にしか抱けない身体。

 遙思が覇主可を抱きしめた。蘇生したのだろう。覇主可はまだ遙思と交合し、その体内に回復の精液を注いでいる。
「んっ……ふー、生き返るわ。んふ、覇主可、やっと抱いてくれたね。ねえ覇主可、愛舞綺が心配? 私を堕とせば、助けられるかもよ? あん、ん、ああっ、ねえ、もっと、いっぱい、注いで」
 遙思の身体に潜んでいた糸が覇主可に巻き付く。遙思が覇主可の唇を奪う。遙思に巻かれている目隠しが外れ、覇主可に巻き付く。遙思の目隠しもまだある、何重にも巻いているのだろう。

「私はどうすれば良い?」
 愛舞綺が遙思に訊く。
「星璃逢姫を連れて来て。獅子桜院や舞躍夏、詩嵐武、闘士たちを捕らえても良いわ。愛舞綺、あなたならできるでしょ? 覇主可の愛人たちは必要よ。みんなこちら側に引き込めば、覇主可もこちら側に来るわ」
「戦いは終わりか?」
「そうねえ、終わりかもね。そろそろ終わるわ。次のゲームはいつかしらね。私たちも参加できたら良いわね。そのために、がんばりましょ」
「つまらないゲームだったな。必ず勝てる戦いだった」
「私は面白かったわ。勝てるから戦うのよ。勝つから、次も遊ぶ権利が得られるのよ。覇主可には、あなたや星璃逢姫、愛人たちが合うわ。一緒に届けるわ」

「届けるのか。誰にだ? 覇主可の心に住んでいたあいつか?」
「あら、会ったの?」
「抱師と言う異世界の性愛師のことを、何故この世界で知ることができたか。あいつがお前たちを操っていたなら、理解できる。あいつがどうしてこの世界に来たのか、それは解らないけどな」
「知らない方が良いわよ。くだらないことよ」

「この世界では、覇主可以外の男性を見ないよな。お前たちがそうしたのかと思ったが、もしかして、もともと居なかったのか?」
「そうかもね。でも、考えても仕方ないわよ。この世界が彼のために用意された、そうだとしても、私たちには関係ないわ。楽しく生きるだけ」

「お前に訊いても仕方ないことだったな。あいつは何処に居る?」
 遙思は笑った。目隠しした少女が笑う。
「ねえ、愛舞綺、あなたもともと、こっち側の暗殺者だったわよね? こっち側の軍のこと、星璃逢姫たちに訊かれなかった? 謎の軍隊の一員として、疑問に思わなかった? あなた、自分を傭兵だと思ってたのでしょうね。だから詳しく知らないと思ってたのでしょう。でも傭兵でも、何も知らないのはおかしくない?」

「私は認識変換を受けていたから、疑問に思うことも無かったのだろう」
「以前、覇主可にかけた認識変換は、あなたの存在で破られたわ。この術は絶対じゃないのよ、破れることもあるの。あなたにかけた術も破れそうだと思わない? 覇主可なら、彼の快楽と癒しの精液なら、認識変換の術も破れそうじゃない?」
「私は認識変換を受けていた、今、その確信がある。それが解ると言うことは、その技はもう解けているのか? 何故、私は今、お前を止めない? 覇主可に従い、彼と星璃逢姫たちを護る、そう誓ったはずだ。何故……」
 愛舞綺の心に疑念が巻き起こる。自分は誰だ? 毒の身体を持つ暗殺者。覇主可の心を奪える可能性を持つ女。いや、覇主可の相手は星璃逢だ。自分は彼が求めたとしても、二番目で良い。彼が求める? 覇主可の一番になれる可能性がある?
 何故迷う? いまさら迷う? 何故、覇主可を奪われようとしているこの時に……
「あやあっ!」
 雷声とともに愛舞綺の毒手が空を薙いだ。
 そこに居たはずの遙思と覇主可の姿が消えている。そうだろう、覇主可は糸と目隠しを巻かれていた。操られ、蘇生した遙思と共に消えるだろう。

「一度目隠しを巻かれたからな。術にかけられたか。短時間で破ったが、致命的だったな」
 遙思が思わせぶりな会話をしたのは、愛舞綺を迷わせ、回復の時間を稼ぐためだろう。

「愛舞綺!」「姉さん!」
 芽凜愛と映離射が来た。妖術の舞姫たちの姿は無い。多流花、愛紅璃の姿も消えている。遙思が復活し、彼女たちも動き出したのだろう。
「済まない、覇主可が捕らえられた」
「ええ、でも、これ……」
 黒い霧が完全に晴れた。この場所は敵軍の兵士に囲まれていた。多数の弓に狙われている。

「負けたな。やられるな。でも、覇主可が蘇生回復してくれるだろう。アレは凄いぞ、楽しみにしていて良い」
 詩嵐武、舞躍夏、星璃逢、獅子桜院の姿も見える。皆、虚脱したように動かない。覇主可の気配が無い、奪われたことが解る。
 覇主可を助けるために何ができるだろう? ここではまだ、殺されない気がする。覇主可への人質として、いや、覇主可という性愛師の道具、ペットとして捕らえられる気がする。
 殺されないなら、覇主可を助けるチャンスもあるかもしれない。いや、心を操られたらやはりチャンスは無いか? でも、死んだら本当にチャンスは無い。心は戻るかもしれない。覇主可は一度戻った。
 迷う少女たちに、矢の雨が降り注いだ。

☆ 敗北認識

 覇主可は目隠しを着けられ、糸を巻かれた。その瞬間、心を閉じた。認識変換を防ぐためだ。それでも愛紅璃の糸は彼の身体を操り動かす。覇主可は遙思と共に走った。
 覇主可が心を閉じるのは予想された対応だ。遙思の目隠しは本人には外せない。目隠しされていることが認識できない、眼を閉じても映像が送り込まれる。
 心を閉じる、それができるなら、心を操られることは防げるかもしれない。いや、防げなくてはおかしい、防げるはずだ。しかし遙思の技には効かない。
「心を閉じるなんて無駄なことよ。私の技は防げないわ」

「覇主可、起きて!」「覇主可!」
 星璃逢と愛舞綺の声が聞こえる。心を閉じた少年に大切な主人、恋人が呼びかける。それは遙思が造る幻覚だろう。でも、そうではないかもしれない。星璃逢も愛舞綺も捕らえられ、覇主可に呼びかけているのかもしれない。
「覇主可、助けて! あなたが助けてくれなきゃ、みんな死んでしまう! みんな重傷なの、助けて!」

 覇主可は眼を開いた。目隠しは認識できないが、着けられているはずだ。この周囲の光景は遙思から送られる映像であるはずだ。でも、それは幻覚とは限らない。現実がほとんどであるはずだ。
 暗い。でも、ランプが一つだけある。その周りだけ見える。
 仲間たちが倒れている。血を流している。矢が刺さっている、抜かれていない。過度の出血を防ぐためだろうけど。
「覇主可! お願い、みんなを助けて」
 星璃逢は軽傷だ。舞躍夏と詩嵐武が盾になり護った。しかし、舞躍夏、詩嵐武、獅子桜院、芽凜愛、映離射、そして愛舞綺。仲間たちが、愛人たちが倒れている。死にかけている。

「星璃逢! 手伝って!」「んぶっ!」
 覇主可は勃起を現し、星璃逢の唇に含ませた。星璃逢が唇を滑らせる。彼を喜ばせる方法は知っているつもりだ。すぐに抜かれた勃起から回復の精液が迸る。仲間たちの傷にふりかけ、唇に含ませて飲ませる。
「みんな弱ってるな。でも星璃逢、大丈夫だ、みんな助ける」
 愛人たちの身体は愛し易いように並べられている。唇に注ぐと皆飲み込んだ。荒い息遣いが聞こえてきた。覇主可が送り込んだ快楽のパワーの影響だが、傷のせいでもある。
「覇主可、みんなを助けられる? 間に合う?」
「星璃逢、僕に目隠しは着いてる?」
「着いていないように見えるわ。でも、私の感覚も操られてるのかも」
「大丈夫、着いていない。星璃逢に触れて解った」
 星璃逢は覇主可の言葉を信じる。全てがまやかしのようで、信じられなくなる戦いだけど。でも、彼を信じられる。触れた指先から伝わってくる優しい快感。これは覇主可だ、この感触は覇主可以外にありえない、良く知っている。

 覇主可は周囲の気配を探った。ここはかなり広いようだ。床には柔らかな布が敷き詰められている。ランプの光が届かぬ場所には複数の人間の気配がある。隠れている感じでもない。ステージを見守る静かな観客のような気配。
 その間も仲間たち全員に必要な処置を行う。肉棒を含ませ、精液を飲ませ、膣内にも注ぐ。癒しの快感も送る。全員の呼吸が落ち着いてくる。
「星璃逢、大丈夫だ。みんな助かる」
「ありがとう覇主可。本当にありがとう」

 星璃逢が立ち上がり、暗闇に呼びかけた。
「負けました。敗北を認めます。私があの国の王です、私はどうなってもかまいません、でも、部下と国民には寛大な処置を求めます」
 笑い声が起こる。暗闇から声が響く。
「星璃逢姫、ご立派だわ。でも、寛大な処置を求める? あなたはそのために何ができるの?」
「あなたの命なんて要らないわよ。あなたが奴隷になるとしたら、そうね、それなりに高く売れそうだけど、対価として釣り合うと思う? あなたも、あなたの部下も、国民も、全員売り飛ばしても良いのよ。全員殺しても良いの。あなた、要求とかできると思ってるの?」

「要求します。覇主可が居るから。覇主可は、私たちに何かあったら、あなたたちを赦さないでしょう」
「そうね、覇主可なら、対価として十分ね。覇主可を差し出してくれるの?」
「いいえ。覇主可は私の恋人ですが、私のモノではありません。差し出すとか、そういうモノではありません」
 再び笑い声。
「そうね、そうよね。星璃逢姫、あなたは覇主可を解放したのよね。覇主可に十分な報酬は出せなかった。だから愛で縛ったのよね。彼に言ったんでしょ? 買われたから従うならそれは止めろ、でも、愛してくれているなら助けて、と」

「星璃逢姫、あなた、非道いわ。覇主可が断るはずは無かった。あなたは大切な御主人様なのだから。抱師にとって主人がどれほど大切か、あなたも知っているはず。でもね、だから、助けてあげるわ」

「星璃逢姫、良くやったわ。愛するあなたのためなら、覇主可は何でもしてくれるでしょう。星璃逢姫、そして覇主可の愛人たち、覇主可のために尽くしなさい。覇主可、彼女たちと城に残った娘たちを護りたいなら、こちらに従いなさい」

「そうか、そうだよね。もう僕の認識を操る必要も無い。星璃逢様やみんなが人質だ、僕は従うしか無いよね」
「そうよ。あなたが抱師なら、主人に従うでしょ? でも覇主可、あなたは闘士でもあるわ。闘士のあなたは、素直に従う?」
「従うよ。従います。闘士の僕も負けた。最後に巻かれた目隠しを、気付かぬうちに外された。負けました」
 星璃逢の国を護っていた少年、最強の守護者が、敗北を認めた。

☆ 闘える世界の夢

「星璃逢姫、あなたは覇主可の奴隷になってもらうわ。あなたの国の闘士たちもね。そして覇主可、あなたは私のモノになるの」
「星璃逢様は僕の主人だ。それは変わらない。僕はあなたのモノにはなれない」
「抱師はそうよね。御主人様を捨てたりしないわ。それでかまわないわ。でも例えば、姉妹を主人としたり、二人以上の主人に仕える抱師も居るわよね。星璃逢姫、仲良くしましょう。私に覇主可を分けて」

「私には、それを拒むことはできません。あなたが覇主可に愛されることを止めはしません。でも、覇主可があなたを主人と認めるかどうか、それは私にも決められません」
「そうねえ、契約だけではなく、心の問題だものね。覇主可、久しぶり」
 周囲が明るくなる。一段高い所に居る少女が見えた。彼女は、多くの少女たちを従え侍らせているようだ。その中に妖術の舞姫たちも居る。

「キミか。久しぶりだね、火璃奈(かりな)」
「名前、覚えててくれたのね」
「僕が欲しくなったの? あの時は拒んだのに」
「だって、あの時は、あなたに負けたんだもの」
 その少女のことは覚えていた。思い出していた。愛舞綺を初めて生き返らせた時、蘇生交合の技とともに思い出していた。
 覇主可が修行時代、初めて生き返らせた少女。彼女は自ら命を絶った、絶とうとした。生き返らせた後も覇主可を拒絶した少女。

「あの頃は未熟だったな。武術も性愛の技も。女の子に拒まれるなんて、抱師として未熟すぎた」
「あの頃は修行中だったじゃない。あなたも私も、まだ抱師じゃなかったわ」
「燐さんはキミがこの世界に居ることを教えてくれなかった。キミも抱師になれたの? あそこから出られたなら、そうなのだろうけど」
「抱師になったわ。そしてお金を貯めて、自分を買い戻したわ。私の主人は私。だからあなたのように、主人に従うという弱みは無いわ」

「自分を買ったのか。そういう抱師も居たらしいね。でもその抱師は男女二人で、恋人同士になるために自分たちを買い戻したらしいよね。キミは一人だ。抱師が一人なんて、おかしいな」
「一人じゃないわ」
 火璃奈は遙思の首筋を撫でる。遙思は満足そうに微笑む。癒される快感。
「その娘たちは抱師の技で従えたのか。どうやってこの世界に来たの?」
「夢界転生。知らないかしらね、禁じられた技よ。夢の世界に入るの」
「この世界は、キミの夢?」
「どうかしらね。そうだったのかもね」
「そうか、この世界はあまりにも僕に都合が良かった。綺麗な女の子しか居なくて、闘えて、星璃逢様という優しい御主人様も居て。僕を誘うため?」

「そうだったのかもね。でもたぶん、もう、違うわ。星璃逢姫や愛舞綺、あなたが愛した女の子たち、もう私の夢じゃないわ。もう夢じゃない。私もあなたも、この世界に居るのだもの」
「夢界転生、危険な技だな。どうやって知ったの?」
「買ったのよ。燐さんから買ったの。あの人なら売ってくれるわよ。私の心があなたに囚われてること、知ってたでしょうから」
「僕のせいか。僕は抱師なのに、性愛師なのに闘いを求めたから。抱師なのにキミを満足させられなかったから」
「そうよ。あなたのせいよ」

「覇主可、私たちは、この世界は、夢なの?」
 星璃逢が訊く。不安というより、混乱している。
 記憶も心さえも、都合良く変えられてしまうことがある、そんな技があることは知っている。それなら、変えられる前の自分は何だったのか? それとも全ては夢、何も無かったのか?
「この世界に限りません。みんな夢です。でも現実です。夢の中では、それが現実です」
「でも、じゃあ、夢見る彼女が目覚めたら、私たちは消えるの?」
「いいえ。彼女ももう夢の中に居ます」

「星璃逢様、僕たちは戦いに負けました。でも、寛大な処置を受けて、みんな助かりました。僕はまだ星璃逢様と一緒に居られるみたいです。火璃奈様は優しいです」
「ええ、そうね」
「火璃奈様は僕を望んでる。応えなきゃ」
「ええ、そうね。お願いね、覇主可。火璃奈様をお願い」
 星璃逢は心からそう思う。覇主可なら彼女を癒せるかもしれない。

「火璃奈様、星璃逢様と仲間たちは、僕の奴隷になるのですか?」
「ええ。覇主可には必要でしょ? あなたのこれまでの愛人たち、それだけじゃないわ。私の愛人たちも、あなたにあげる。この世界の女の子、みんなあなたにあげる」
「火璃奈様も?」
「ええ。でも、あなたは私のモノ。私に従う義務があるわ。互いに主人で奴隷、そういう関係は?」
「恋人? 火璃奈様は僕の恋人になってくれるのですか?」
「覇主可、あなたは私の恋人になってくれるの?」

「まだ、なれません。僕は火璃奈様を、恋人として愛していません」
「そうね。こればかりは命令しても、魅了しても無理なのよね。命令しても主人になれるだけ。魅了しても奴隷を得られるだけ。だから抱師の夢なのよね。恋人を得ること」

「覇主可、あなた、たくさんの女の子と心をつないだわよね。星璃逢姫だけじゃない。愛舞綺とも、他の娘たちとも。誰のおかげ?」
「火璃奈様のおかげです。この世界を用意してくれた火璃奈様のおかげです」
「でも、私とは心をつないでいないわよね。まだ」
「ええ、でも、これからです」

「そうね。これからよね。覇主可、あなたは闘う姿が綺麗よ。あなたのために、敵を用意するわ。この世界、まだ攻める国はあるはず。あなたのために、いつまでも戦争を続けるわ」
「傷を負う者も居るでしょう。命を落とす者も居るかもね。でも、覇主可ががんばれば救えるでしょう。傷つけずに従わせることもできるわよね」

「闘いよ、覇主可。楽しみでしょ?」
「ええ、ありがとうございます、火璃奈様」
 覇主可は主人の爪先に口付けた。

☆ 優柔惑迷

「あっ、ああんっ!」
 少女たちが嬌声をあげた。覇主可から熱い何かが吹き付けてくる。それは身体と精神に染み込み、欲情を燃やす。
 彼が欲しい。でも、勝手に押し倒すこともできない。火璃奈の許可は出ていない。
「んー、覇主可、どうしたの? 女の子を発情させて、どうするの?」
 火璃奈は火照ってはいる。しかし、他の少女たちのように悶えてはいない。彼女も抱師だったらしいから、覇主可の気に耐えられるのも解る。
 覇主可と火璃奈、二人の抱師が抱き合い始めたら、どうなるのだろう? 周りに居る者は狂ってしまうのではないか。

「火璃奈様は僕が欲しくないのですか? 僕は火璃奈様が欲しいです。ご奉仕して良いのですか?」
「んふっ。ご奉仕してくれるの? したいの? そう、抱師はそうよね。主人に仕える存在。私も、あなたにご奉仕したいわ」
 火璃奈は覇主可のアンダーを脱がせ、勃起に触れた。優しく撫で回す。覇主可は射精しそうになるが耐える。まだ表情には出さずに耐えられた。
「さすがね、覇主可」
 火璃奈の指先も、覇主可のように触れるだけで相手を落とせるのだろう。快楽の技の使い手が二人。どちらが強いのだろうか?
 しかし、どちらが強いとしても、勝敗は決まっている。覇主可は火璃奈に従う。

「ああ、覇主可のオチン×ン。凄く久しぶり。昔、生き返らせてくれて、ありがとうね」
「間に合っただけです。傷を癒しただけです」
「そうね。あの時は、間に合ったのよね。覇主可、今回は間に合ったと思う? 手遅れかもよ」
「何が手遅れなんですか?」
「あなた、遙思の術にかかったでしょう。手遅れかもよ」
 手遅れ? 何が? 星璃逢の国を護れなかったことか?
 それは確かにそうだ。でも、悔やんでも仕方ない。護れるはずもなかった。この世界は火璃奈の夢の中らしい。世界を統べる彼女の軍勢に勝てるはずもなかった。

 しかし、闘いはそこまで絶望的ではなかった。敵も味方も少女たちだ、覇主可なら十分に勝算はあったはずだ。敵はみんな快楽で落とし、味方はみんな癒し、護ることができたはずだ。
 何故、敗れた? 遙思のせいだ。あの妖術の舞姫たちのせいだ。非道の技で競い、敗れた。
 非道の技? それは何だ? 妖術。心を惑わす技。
 遙思の目隠しの技は、現実に幻覚を混ぜ、認識を作り替えることができる。神経系に作用して操る愛紅璃の糸、霧を撒き視界を遮り、針の刺激で操る多流花の使い魔がサポートする。しかし、精神に作用するのは遙思の目隠しの術だ。

 いや、微妙に違う。精神に作用するのは欺瞞の技だ。自在に幻を見せられたとしても、何を見せるかが問題だ。
 惑わし迷わせ、信じさせる。それが彼女たちの妖術の本体だ。心理術だ。
 心理術の闘いに敗れた? そうなのかもしれない。それはあらゆる闘いで重要な要素だ。虚実の妙。それを卑怯と呼ぶのは違う。戦いはもともと騙し合いだ。

 覇主可の快楽の技は少女たちを魅了し、従ってもらうことができる。彼と抱き合う可能性を夢見させる代わりに、仲間を捨てさせる。それも非道の技だろう。
 戦いに破れるなら、命を、全てを失うかもしれない。闘士ならそれは覚悟するだろう。しかし、敵に寝返り、かつての仲間と闘うこと、それは多くの闘士が避けようとするだろう。
 でも、何故それを避ける? 闘いを求めるなら、それでも良いのではないか?
 卑怯だから? そうだ、仲間が後ろから刺してくるとしたら困る。でも、そうではない。敵になったことは伝える。正面から闘う。
 でも卑怯だ。覇主可に敗れ、彼のために闘い、そして愛される。そんな仲間を許せるわけがない。
 闘いは終わらない。覇主可が全ての少女たちと闘い、勝利するまで、この世界の闘いは終わらないのかもしれない。いつまで続く? 永遠に?
 永遠に闘いと快楽を楽しめるのか? 闘いを楽しむ抱師、覇主可のために用意された世界。多くの少女と闘い、従わせ、愛する。彼に都合の良すぎる世界。

「火璃奈、この世界は、キミが僕のために造ってくれたの?」
「そうかもね。もう忘れたわ。そうだったとしても、もう、違っているでしょうけど」
「何かおかしいけど、受け入れないのもおかしい。こんな、僕に都合の良い世界、受け入れないのはおかしい。確かに楽しかった。闘いも、エッチも……」
 しかし覇主可の心は晴れない。何かおかしい。
 星璃逢の笑顔を思い出す。最初この世界に来た時、彼女に笑顔は無かった。星璃逢は憂う表情だった。それを笑顔にできたのは、自分が闘い、彼女とその国を護ったからだ。
 星璃逢を護る。愛する少女たちを護る。そう決意した。でも、護れなかった。いや、そうなのか? 愛人たちは誰も死んでもいない。護ったのではないか?
 火璃奈を、遙思を、愛紅璃を多流花を愛したら、彼女たちも護れるのだろうか。これからも戦いは続くらしい。護れるかもしれない。
 護れる? 何から? 闘う理由は?
 何から護る? 自分から?

 星璃逢の笑顔は安心していた。自分が、覇主可が居れば大丈夫だと安心していた。その前、負けそうな戦いの中で覚悟していた、その強さを失っていた。
「抱師は御主人様を支配してはいけないのに。僕は星璃逢様を惑わせた。僕が居なきゃダメだと思わせた」
「そうよ。もう手遅れよ」

☆ 見えない夢の終わり

 手遅れ。覇主可はそう火璃奈に言われた。
 悲しい言葉だ。やり直せないか? いや、無理だ。夢の中ですら、やり直しは効かない。時間が戻ることはない。もし戻ったとしても、そのことに気付かず、同じ間違いをするのだろう。
 夢の中ですら、やり直しは効かない。間違いを覚えているなら、それはもう起こったことなのだ。記憶はもう起こったことだ。そして忘れたとしても、無かったことにはならない。
 そう、覇主可は昔、火璃奈の心を傷つけた。彼女を魅了しきれず、死を選ばせた。そして生き返らせた。生き返らせた後も、火璃奈に拒絶された。

 それらの記憶は忘れていた。封じていた。思い出したくない記憶だったから。
 思い出したくない? 何故? 自分の未熟さの記憶だから? そうかもしれない。それとも、少女を傷つけた記憶だから? そうかもしれない。でも、本当にそうか?

「違うわ。私が望んだからよ。あなたは私のお願いを聞いてくれたの。私のこと、忘れてくれたのよ」
「あの頃のあなたと私、本当に未熟だったわ。忘れてもらうことを望んだ私、未熟だったわ。あなたも、本当に忘れてくれるなんて、非道い、未熟な闘士だった。私は負けたのに。敗者の願いを聞くなんて、非道いわ」
「火璃奈、でも、僕は思い出した。そして、今度はキミに負けた。いや、違う? 今度はキミとは闘ってない。いや、でも、キミの配下に負けた……いや、おかしい。僕は生きてて、拘束もされてない」
「死ななきゃ負けを認めない、そんなわけでもないでしょ?」
「うん、でも、何で僕は負けを認めたんだろう?」
「遙思に負けたでしょ? あの娘の目隠しを巻かれて、捕らえられた。あなたの負けよ」
「そうだ、あの目隠し、気付かぬうちに外された……だから、負けを認めた、負けだと思った……もう僕の心を操る必要もないから外された、そう思った……いや、でも、外す必要もないはずだ」

「そうだ、まだ、あの目隠しは外れてない、たぶん。これはあの目隠しが見せる幻覚だ」
「そうかもね。でも、あなた、敗北を認めたわよ。負けたわよ。敗者として、私に仕えなさい」
「恐ろしい技だ。着けられていることも解らない目隠し。現実に幻を混ぜる技。現実も夢も解らなくなって、心が操られる」

「でも、一度受けた技だ。対策してないと思う?」
 暗転。世界が暗くなった。いや、光は感じる。目隠しされていることが解る。覇主可は妖術の目隠しを外す。認識できないはずの目隠しを外すことができた。遙思の術が乱れている。

「覇主可、大丈夫か?」
「愛舞綺」
 覇主可は毒体の暗殺者に応える。星璃逢が居たはずの場所に愛舞綺が居る。
 ここは火璃奈の部屋らしい。見せられていた光景はほとんどが現実そのままだったようだ。覇主可は見知らぬ少女を抱いている自分に気付く。
「認識を変えられてたな。火璃奈と妖術師たちには逃げられたか。星璃逢様も居ないな。連れて行かれたか」
「ああ。私も目隠しを着けられていた。見せられた幻覚、最後の方はもう、逃げるための時間稼ぎになっていた。それでも星璃逢姫を連れ去ったのはさすがだ」

 部屋の中、火璃奈の多くの愛人たちは動けない。動きを縛っているのは覇主可の快感だけではない。麻痺毒を受けた。
 その毒は覇主可と愛舞綺の身体から発している。汗に混じり、空気を麻痺毒に変える。しかしその毒は、気付かせないほど薄い。気取られる可能性は低いが、効果を発揮するために時間がかかる。
「覇主可の気のおかげで気取られなかったな。動きが鈍ってくるのは、覇主可に近くに居るせいだと思われたのだろう」
 覇主可は愛舞綺に習って、身体に麻痺毒を仕込んだ。癒しの精と相殺せず混じり合うそれは、毒ではないのかもしれない。麻酔薬は薬の一種ともされる。
 覇主可の精神に集中していた妖術師は、その身体に仕込まれた毒に気付くことが遅れた。

「まだ手遅れじゃないな。逃げられた。追おう」
「ああ」
 今、動けるのは、癒しの精を持つ覇主可と毒に強力な耐性がある愛舞綺だけのようだ。覇主可の愛人たち、星璃逢の闘士たちは麻痺毒への耐性薬を使っていたが、傷が響いた。

「結局、お前たち二人で行くのか。星璃逢様をよろしく頼むぞ」
 獅子桜院が送り出す。
「しかし覇主可、この世界はあいつの夢なのか?」
「違うよ。彼女はこの世界に居て、眠ってもいない」
「そうだな」
 覇主可と獅子桜院は微笑みを交わす。

「行くぞ覇主可!」
 愛舞綺の嫉妬の声。覇主可のあの笑みは他の女に向けられることもある、それは知っている。でも今、それに嫉妬する資格が自分にはあると思う。彼と一緒に行くのは自分だから。
「星璃逢姫を助け出して、あいつらも倒すぞ。まだ、勝負は着いていない」
「そうだね」
 覇主可の笑み。この笑顔はいつも、彼が迷った後に見る。

☆ 幻の舞姫

 覇主可と愛舞綺は、火璃奈と妖術の舞姫たちを追った。すぐに追いついた。まだ館から出ていない。彼女たちは麻痺毒に気付くのが遅れた、動きが鈍い。
 連れ去られた星璃逢は、火璃奈と手をつないで歩いている。快楽のパワーで操られているのだろう。
「火璃奈!」
 火璃奈は覇主可の声に応えず、妖術師たちに触れた。快楽のパワーを送る。麻痺毒に対抗して身体を動かせるように。

 多流花の使い魔たちが小さな身体を組み合わせ、長い鞭のようになった。その鞭がうねり、大きな円になって覇主可と愛舞綺を囲む。
 愛紅璃と遙思が火璃奈を護るように立つ。愛紅璃が糸片を覇主可に飛ばす。
 覇主可は避けない。多流花の使い魔の鞭には棘が生えている。使い魔たちが針を持っている。針を避け、糸片は避けない。
 愛舞綺が覇主可に口付けし、毒を流し込む。覇主可に巻き付いた愛紅璃の糸片が落ちた。神経系を操る糸片は生き物らしい、それが愛舞綺の毒で死んだ。癒しの精を持つ覇主可は毒に耐えられる。

 火璃奈には、覇主可のような癒しの能力は無いようだ。だから麻痺毒に気付いて逃げたのだろう。妖術師たちに送った快楽のパワーは、解毒では無く、一時的なパワーの増強であるようだ。上手く動かない身体を無理に動かすため。
 抱師にも色々なタイプの者が居るらしい。それは覇主可も知っている。火璃奈の能力はどのようなものだろう? 修業時代、一度は観たはずだ。しかし、火璃奈との闘いの記憶は霞んでいる。仕方無い、一度は封じた、忘れようとした記憶だ。
 しかし予想はできる。火璃奈の能力は、夢や幻に関するものではないだろうか。夢界転生の話は本当のことなのかもしれない。
 夢を操る能力は、抱師の能力としては異質にも感じる。それはどのように性愛の奉仕に活かされるのだろうか? そして、どのようにして覇主可と闘ったのだろうか?
 幻を操る闘士は一人知っている。遙思だ。遙思は火璃奈に従っているように見える。しかし、本当にそうなのか?

「遙思」
 覇主可が目隠しを着けた妖術師に話しかける。
「何? 降伏勧告? それとも命乞い?」
「キミなら、火璃奈に従う必要も無いはずだ。でもキミなら、従うと見せて、操ることもできるだろう。そうしてるの?」
 目隠しした妖術師が笑う。
「そうね、できるかもね。でも、必要無かったわ。火璃奈様は闘わせてくれたわ。あなたとも」
「闘いが好きなんだね」
「そうよ」
「キミたちは剣も持たない。拳も握らない。それなのに強い。凄いな」
「あなただって、そうじゃない」
「うん。だから、そんな卑怯な技を競いたい」

「遙思、愛紅璃、多流花、キミたちに勝利したい。抱師の技で魅了して、僕のオチン×ンの虜にしたい」
「覇主可、あなたに負けたら、あなたのオチン×ンの虜にされるの? それって……」
 遙思の心に妄想が湧き出した。それはどんなに素晴らしいことだろうか。その快楽はどれほどのものだろうか?

 覇主可を捕らえた時、快楽の技にかかった少女兵たちを解放するために抱かせた。彼の萎えない肉棒のことは知っている。
 覇主可に抱きしめられ、快感を送られる。その快感は渇かせる。彼の肉棒に貫かれ、膣内に射精されないと癒されない渇き。
 そして膣内射精を受けたら、もう彼の虜になるのだろう。彼の肉棒が全てになる。
 彼のために、他の女を操り捧げることまでも、するようになるだろう。
 そして、待つ。満たさない快感に焼かれながら、彼がご褒美をくれるまで待つ。彼は忙しいだろうから。自分より優先されるはずの愛人は多いはずだ。
 でも、ご褒美はもらえるはずだ。それが、星璃逢の膣内から溢れた一滴の精液に過ぎないとしても。
 その一滴の美味、快感はどれほどのものだろう。全てを捨て、彼に仕える価値があるほどのものだろうか? そうだろう。彼に堕とされた者たちを見れば解る。

 遙思が迷った一瞬に、覇主可は跳んだ。多流花の使い魔の鞭が覇主可を追う。空中の獲物は避けられないはずだから。
 覇主可の指先が舞う。使い魔たちが持つ針をそらし、小さな身体に触れてゆく。速い。
 それでも全ては落とせない。覇主可の身体に針が刺さった。その針の刺激は身体を操るはずだ。

「しまった! いや、当然だ、覇主可に触れたのだから……危険なのは指先だけじゃない、当然だ」
 多流花の使い魔たちは覇主可の身体に着地した。針を刺し操るために、彼の身体の上を走るために。しかし、触れた足裏から凶暴な快楽を送られた。それは感覚共有する多流花にも伝わり、動きを封じた。

 多流花の鞭の結界が解けた瞬間、愛舞綺は愛紅璃に迫っている。愛紅璃の指先から糸片が飛ぶ。その糸片は愛舞綺に絡みつくが、行動を操る効果を発揮できない。愛舞綺の毒で死ぬ。だから愛舞綺は避けない。
「んぐっ!」
 愛舞綺の首筋に絡みついた糸が締まった。愛紅璃のこれまでの糸とは違ったようだ。生き物ではない、武器だ。毒で殺せない。ゆっくりと収縮してゆく糸。
 愛舞綺は爪でその糸を切った。何とか切れた。愛舞綺の爪は鋭い。相手の服に傷をつけ、毒を流し込むためだ。
 愛紅璃がさらに糸を飛ばしてくる。避ける。避けなければならない。指先の動きを封じられたら、糸を切れなくなる。近付けない。

 覇主可は遙思の目前に着地した。快楽の指先で触れようとする。
 遙思は避ける。避けた。避けられた。覇主可は両手を使い始める。避けられる。触れられない。二人の動きは加速する。舞闘のように。
 遙思の視点は身体の外にあり、自在に移動する。普通なら視界に入らないはずの、近接した相手の動きも全て見える。だから避けられる。しかし覇主可の動きについて来られるのは凄い。
「凄いな。僕の指先を避けられるなんて。でも反撃も無いなら、そのうち終わるよ」
「反撃、無いと思う?」
 遙思は舞姫のようなその衣装を翻す。布が覇主可を覆う。視界が遮られる。大きな目隠しだ。
 遙思の目隠しは、相手に幻を見せる。

☆ 幻の砂漠で

 遙思の衣装が翻り、覇主可の視界を覆った。覇主可はとっさに下がろうとはした。遙思の布に包まれるのはまずい。しかし布が予想外に広がる。避けきれない。

 覇主可の周囲に広い砂漠が広がった。誰も居ない。これは遙思が見せる幻覚だろう。
 布に包まれた? そうなのだろう。でも、そのことが認識できない。覆われても包まれてもいないとしか思えない。
 覇主可は手を伸ばし、周囲を探る。何にも触れない。遙思は自分から離れたのだろうか?

「覇主可」
 遙思の声。何処からか響く。
「そのまま、その砂漠で渇いて死ぬ? それとも、負けを認めて私たちに従う?」
「この砂漠、抜けられない自身があるの? あるのだろうな。愛舞綺はもう倒した? 獅子桜院や舞躍夏、詩嵐武はそろそろ動けるようになるだろう。急がないの?」
「急ぐわ。急いでるわ。でも、そこに居るあなたとはゆっくり話もできるわ。あなたはもう、そこから逃げられないもの」
「こんな広い場所、拘束もされてないのに、逃げられないのか。そうだろうな。どんなに走っても、この砂漠は抜けられないのだろう。キミが造る幻覚の世界だものね」

「凄いな。凄い技だ。世界を造ってみせるなんて、凄い。火璃奈みたいだ」
「覇主可、あなた、火璃奈様に勝ったことがあるのよね。どうやったの? 火璃奈様があなたに負けるなんて思えない」
「昔のことさ。修業時代のことだ。僕も火璃奈も未熟だった。でも、その時のことは覚えてない。忘れようとした記憶だ」
「勝利の記憶を忘れようとしたの? おかしいわね」

「勝利の記憶か。そうだったのかな。そうだったんだろうな。でも、そうじゃなかったのかも。僕は抱師なのに、火璃奈を魅了できなかった。それが悔しかったのだろう。だから、忘れた」
「悔しい記憶を忘れられるの? それも凄いわね。普通は忘れられないのに」
「そうだ、そうだね。何で僕は忘れることができたんだろう?」
「火璃奈様に忘れさせてもらったんじゃない? 火璃奈様が負けたなら、あなたの望みに従ったでしょうから」
「そうだ、それはありそうなことだね。でも、僕が望んだのかな? 火璃奈のことを忘れること、僕が望んだのかな? 未熟だった、それは仕方ない。誰だってそこから始まる。失敗もあるだろう、当然だ。そんなあたりまえのこと、忘れたかったのかな?」
「忘れたいわよ。誰だって、未熟だった自分のことなんて忘れたいわよ。嫌な失敗をしたのなら、なおさらよ」
「嫌な失敗だったのかな。うん、失敗は嫌なものだ。でも仕方ないのに。失敗するかもしれない、それでもやらなきゃ、できるようにならないのに」
「あなたはできるようになったのでしょう? そのことを忘れさせてくれた、火璃奈様のおかげかもよ」

 覇主可は空を見上げる。空は広い。広い砂漠には何もない。地平線いっぱいに広がる空。
「遙思、キミが造る空も綺麗だね。この景色は覚えていられるのかな」
「さあね。そんなの、あなたしだいよ。覚えているかどうかなんて、その人のことよ」

「さあ覇主可、答えて。私たちに従う? いえ、私に従う? あなたが従ってくれるなら、その砂漠から出してあげる。拒むなら、そのまま渇いて死ぬわよ」
「このまま渇いてしまいたくはない。でも、この広い空も名残惜しいな。遙思、こんな綺麗な場所、一緒に来てくれれば良かったのに」
「まだ一緒には行けないわよ。あなた、私を倒そうとするでしょう?」

「ねえ、遙思、従うと言えば解放してくれるの? その言葉をどうして信じられるの? 僕は嘘をつくかもしれないよ」
「そうね。覇主可、あなた、まだ諦めてないものね。負けたと思ってない。しばらく渇いてみないと解らないわよね」
「渇かせるのか。そうだね、この砂漠、水は無いのだろう。すぐに渇いて、欲しくなるよね。渇いて、欲しくなって、キミにお願いするようになるよね。良く知ってる。僕もよくやる、非道いやり方だ」

「ねえ、遙思、キミに勝ち目は無いよ。僕が欲しくなってない? キミは僕に従えと言ってる。僕の精神を変えようともしてない、このままの僕が欲しくなってる。だから受け入れるよ。抱いてあげる、抱かれてあげる。僕の精液、飲ませてあげる。身体を傷を癒やすだけじゃない、凄く美味しくて、気持ち良いよ。知ってるよね」

「でもまだ、味わったことはないかな。味わったことがあるなら、もう僕の虜になってるよね。キミの仲間、兵士たちにもたくさん飲ませた。みんな気持ち良さそうだったよね。最高の美味、快感、キミは手に入れることができるのに、まだ我慢するの? 強いな。さすがだ」

「ねえ、この砂漠、ここに来てくれれば、僕を独り占めできるよ。僕はキミを堕とすために、最高の快楽の技でがんばるよ。キミが造った幻の世界、その中でも、僕を楽しむ自信は無い?」

 世界が揺らいだ。いつの間にか日が沈み、夜空が広がっている。星空。
 いつの間にか、目隠しを着けた舞姫が覇主可を抱きしめている。
「遙思、やっと捕まえた」
「覇主可、来たわよ。この世界にはあなたと私、二人だけ。もうこの世界から出さないわよ。あなたは私のモノ」

☆ 彼と彼女の闘い

 覇主可は遙思を抱きしめる。目隠しした舞姫に口付けする。唇が触れた瞬間、世界がぶれた。周りの光景が変わりそうになった。覇主可の口付けを受け、遙思の術が破れそうになった。

「凄いな。この砂漠、キミが造った幻なんだよね。遙思、キミは好きな世界を造れるの? 望みの夢を見せられるの?」
「そうよ。あなたが私に従ってくれるなら、あなたが望む世界を見せてあげるわ」

「僕が望む世界か。火璃奈は、あの世界を僕のために用意したと言ってた。確かに僕に都合が良い、楽しい世界だった。闘えて、エッチできて、星璃逢様や愛舞綺も居て。でも、何か違った。望みを訊かれたとしても、あんな世界を望むことは無いと思う」

「僕が望む世界は、まだ知らない世界なんだ。行ってみないと解らない、そんな世界だ」

「遙思、キミが見せてくれる世界にも限界はあるだろう。キミ自身が知らないモノは見せられないだろうな」
「そうかもね」
「キミは僕にこんな広い空を見せてくれたけど、僕はキミが知らない場所を見せられない。だから寂しい。一緒に楽しみたいのに」
「楽しませてよ。あなたならできるでしょう? 抱師なら、私が知らない快楽の世界を見せてくれるのでしょう?」

「この砂漠、誰も居なかった。キミが見せる幻は、誰かを別人に見せるモノが多かった。誰も居ない所に幻の人物は造れないのだろうな」
「どうしてそう思うの?」
「キミの術は感覚を騙す術だ。人間を造る術じゃない。誰かを別人と見せることはできても、何も無い所に人を造るのは難しそうだ」
「そうね、あなた、私の目隠しを何度も着けられたものね。術の特性も解るわよね。それでどうするの?」

「今、キミを抱いてる。でもこの身体が、遙思、本当にキミとは限らない。そんな疑念を抱かせるなんて、寂しい術だね」
「でも、この身体はたぶん、遙思、キミ自身だ。だって、僕が誘ったんだもの、キミは来る。他の女の子に任せたりしない」
「僕は燐さんに認められた抱師だ。僕が誘ったら、女の子は欲しくなって、来る。疑う必要なんて無い。遙思、来てくれてありがとう」
 覇主可は抱きしめた身体に快楽を送る。動きを封じる渇きの快楽と、心を癒やす優しい快楽を交互に送る。リズムを刻む。
 覇主可の快楽のリズムに合わせて世界が揺らぐ。昼と夜が目まぐるしく変化する。幻の世界が乱されている。

「んあっ、覇主可、私を堕とすの? 動けなくするだけじゃなくて、快楽の虜にして、従わせるの?」
「うん、そうしないと、遙思は僕をこの幻から解放してくれないでしょ?」
「じゃあ、オチン×ン入れてよ! 何でオマ×コに入れないの? 私、もう動けないわ。入れてよ!」
 覇主可は微笑み、目隠しの少女を撫でる。
「入れて欲しい?」
「入れて欲しいわよ! 我慢できないわ、でも、動けないわ。あなたの技、非道いわ。身体は動けないのに、精神は燃えて暴れてる。いや、身体も燃えてる。オマ×コが熱い、いや、全身が熱い、あなたに触れてる部分が気持ち良くて、でも、満たされない。非道いわ」

「だって、遙思、キミと僕は敵だよ。闘ってるんだよ。それとも、もう闘いを止める? 負けを認める?」
「負けを認めたら、してくれるの?」
「どうしようかな。でも、負かした敵にしてあげる義務も無いよね。負けを認めるならしてあげる、そんな言葉は言わないよ。だって、闘いだもの、取引じゃないもの。キミは強い闘士だ、そんな言葉、もったいないよ」

「そうね。それに、私は妖術師だものね。私の言葉なんて信じてはいけないものね。負けたなんて言葉は無意味よね」
「そうじゃない。諦めさせるんだよ。解るよね。僕の技は非道いんだ、たぶん、キミの技より。身体も心も、仲間も、全部諦めて、僕に捧げて、それでも愛される約束は無い。そこまで追い込める」

「僕に愛されるかどうか解らない。でも僕に従うしか無い。その渇きを癒やすには、僕にお願いするしかない。非道いよね。でも、闘いだものね。仕方ないよね」

「この渇き、耐えられないモノでも無いわ。動こうとするのはつらいけど、動くのを諦めれば、何とか耐えられるかも。息をするだけでも、心臓が動くだけでも気持ち良すぎて、でも満たされない、つらいけど、我慢できないくらいじゃないわ」
「私が我慢すれば、あなたはこの砂漠で渇いてゆくでしょう。どっちが先に諦めるのかしらね。たぶん、あなたよ。私はあなたに抱きしめられて、我慢できるわ」
 覇主可に触れていると、彼の渇かせる快感は少し満たされる。それは覇主可にも止められない。

「遙思も僕の技の特性を解ってるな。少し本気を出そうかな」
 覇主可が立ち上がり、勃起を現した。その肉棒で遙思の頬を叩いた。
 遙思は思わず咥えようとする。覇主可が少し引いた。追う。遙思の身体がひきつり、倒れそうになる。動くことで凶暴な快感に襲われた。
 その快感は痛みに近い。我慢できない痛み。癒されるには、彼に触れなければならない。
 そして、その勃起こそが、解放への鍵だと解る。本当はオマ×コに欲しいけど、そこまで余裕は無い。唇に含みたい。彼を射精させることができたら、この痛みが消える気がする。この飢えを満たせる唯一の美味なのだ。
「覇主可、ちょうだい、ください! いや、止めて、要らない……我慢して、狂ってしまえば良い……私は狂って、あなたを永遠に閉じ込めるわ、相討ちよ」
「それは困るな。あげるよ」
 唇に彼の肉棒が触れた。吸い付き飲み込む。我慢なんて、できなかった。

☆ 堕ちた自分を観た少女

 目隠しした舞姫が、少年の男性器を咥えている。激しく舐め回している。彼はまだ射精しない。感じてくれてはいる。口内の感触が硬度を増したような気がする。そして目隠ししていても、彼女の特別な視界は彼の表情を捉えている。嬉しそうな、でもどこか意地悪な笑顔。
 術中に捉えた自信があるのだろう。彼は抱師、性愛師だ。敵の女に勃起を咥えさせて、自信たっぷりに笑っている。噛んでやりたくもなる。でも、そこは彼にとって弱点でもないのだろう。最大の武器だ。噛まれない自信も、噛まれても大丈夫な自信もあるのだろう。

 彼の勃起は美味しい。本当に美味しい。彼は抱師だ、美味しいのは当然だ。そのように身体を作り替えている。
 抱師、異世界の性愛師。でも、それだけなら、遙思の主人である火璃奈も同じ、抱師であったらしい。でも違う。火璃奈は女性、覇主可は男性だ。男性の抱師。この世界で唯一の存在。

 唇、口内に感じる頼もしい肉棒、これは火璃奈には無い。その先端から迸る白い液体は、天上の美味なのだ。それが解る。こんなに美味しい肉棒が、もっと美味しいご褒美をくれる、だから舐める。彼を感じさせたい。射精して欲しい。その美味な液体で口内を満たして欲しい。心からそう思える。彼の肉棒を味わってしまったから。

 遙思は覇主可の精液を飲んだことは無かった。彼を捕らえた時も我慢した。彼の精液は身体を癒す、負傷者にこそ必要だった。そして、彼に快楽を打ち込まれ動けない兵たちに必要だった。
 でも、味見する余裕もあったはずだ。彼の精液は尽きない。軍団がそれだけで生活できそうなくらい尽きなかった。遙思が味見することもできたはずだ。でも、しなかった。

 味わったら堕とされるから? そうかもしれない。でも、たぶん理由は違った。遙思の目隠しを着けられ、幻に操られた覇主可に興味は無かった。いや、全く無かったわけでもないが、それほど惹かれなかった。むしろ、彼の美味に溺れる仲間たちに惹かれた。彼を捕らえ、操っていたのは遙思の目隠しだ。自由に動かせた。操ることができた。そんな彼で仲間に奉仕する方が楽しかった。

 今、彼は闘っている。敵の女に勃起を咥えられたまま、闘っている。抱師として、性愛師として快楽で遙思を堕とそうとしている。遙思に操られていないのに、敵なのに、快感をくれる。
 嫌がって抵抗しても、動きを封じられ、唇を使われ、口内に射精されるのかもしれない。でも、嫌がることもできない。唇が、舌が勝手に動く。それが気持ち良い。我慢できない。

 彼の射精を口内に受ける、そのことを考えるだけでオマ×コが燃える。いや、唇が燃える。絶頂しそうになる。いや、しているのかもしれない。唇の感度も上げられている。唇の感度を性器以上に変えられている。彼に触れたらこうなる。でも、オマ×コに入れられたら、性器の感度を上げられたら、これ以上の快感なのだろう。

 咥えた唇を離せない。オマ×コに欲しいけど、唇を離せない。放したくない。話したくない。
 唇を解放したら、彼に哀願する言葉を発してしまうだろう。敗北を認め、服従を誓い、仲間を捧げるから、だから飲ませてください、オマ×コも使ってくださいと言ってしまうだろう。

 彼は咥えさせたまま射精しない。我慢している。いや、我慢でもない。楽しんでいる。抱師なら射精も、射精しないことも自在だろう。唇を舌を弄ばれているのは遙思の方だ。彼には余裕がある。
 優しく頭を撫でられる。ぽんぽんと叩かれる。そのたびに舌が喉が絶頂している。でも、絶頂ではない。その先があることが解る。

「遙思、射精して欲しかったら、お尻を上げて振るんだ」
「んんっ……」
 非道い。非道い言葉。唇を離さなくてもできる返答を示された。
 嫌だ、そんなことはしない。このままで良い。覇主可の肉棒を捕らえたままで良い。彼に応える必要など無い。
 遙思は首を振った。頭を振った。彼の肉棒を咥えたまま、頭を振った。感じさせるための動作ではない。彼の言葉を否定することを表すため。

「ん、そんなに欲しい? そんなに僕の精液を、お口の中に出して欲しい? 咥えたまま、そんなに激しく動かすなんて」
 違う、彼の肉棒を感じさせるためではない、否定の意志を表すため。そのために頭を振る。腰が動きそうになる、でもそれはいけない、お尻を振ることを我慢するために、頭を振ることに集中する。

 深く咥えたまま振るから、肉棒が口内で暴れる。喉をかき回す。気持ち良い。彼は指先が触れるだけで、女を快感で堕とすことができる。そんな彼にオチン×ンで喉を突かれる。耐えられるわけがない。いや、彼が突いているのではない、自分が頭を振っている。こんな美味しい、気持ち良い行為、我慢できるわけがない。

 遙思の自在の視界は、少年の股間にしゃぶりついている目隠しの舞姫の姿をとらえている。彼女はもう堕ちているのだろう。彼の性奴隷にしか見えない。
 彼女の尻が高く上げられ、振られる。激しい。彼がそう命じたから。お口に射精して欲しいなら、飲ませて欲しいなら、尻を振れと命じたから。
 あの女はもうダメだ。彼のためなら、喜んで仲間も差し出すだろう。世界中の少女を操って、彼に捧げるだろう。たったこれだけ、彼の肉棒を喉奥に差し込まれ、射精してもらう、それだけのために。

「うん、良い娘だ。可愛いよ」
 覇主可に撫でられる。嬉しい。自分は射精される前に堕ちたのだ。いや、とっくに堕ちていた。彼のどんな要求にも従うだろう。咥えさせてもらったのはもう御褒美だった。こんなに美味しい、気持ち良い。
「キミに勝てて嬉しい。もう解るよね、僕に負けたこと」
 予感は一瞬だった。彼が射精するだろうという一瞬の予感。すぐに喉奥で爆発した。彼の精液が溢れる。美味しい。彼が御褒美をくれた。負けを認めたからではない、気持ち良くご奉仕できたから。

 覇主可が射精した瞬間、遙思には何も見えなくなった。自在の視界の能力は一時的に切れた。いつもは使わない彼女自身の眼の視界に切り替わった。彼女は目隠しを着けているから、見えない。
 光が挿してくる。目隠しを外された。でも、そんなことはどうでも良い。覇主可の射精が口内を満たし、まだ続いている。ごくごく飲む。舌を泳がせる。美味しい、気持ち良い。
 飲み干しても離れない。咥えたまま、上目遣いで彼を見る。優しい微笑みが見えた。彼も楽しんでくれたようだ。良かった。彼のオチン×ンに負けた。彼が楽しんでくれて、幸せだ。

☆ 切れた操りの糸は、つながりの糸へ

 愛舞綺は闘っていた。
 覇主可は遙思の布に包まれた。しかし遙思も動かない。二人の闘いは幻覚の世界で行われているのだろう。それで良い、遙思は覇主可に任せる。
 残りは三人、向かって来るのは一人だけだ。多流花は覇主可の快感を打ち込まれ動けず、火璃奈はまだ麻痺毒が抜けないようだ。向かって来るのは愛紅璃だけだ。

 愛紅璃が糸片を飛ばして来る。行動を操るその糸片は生き物であり、愛舞綺の毒の身体には効かないはずだった。しかしそう思って巻き付かれた糸は、身体を締め付ける武器だった。何とか切ったが、危ないところだった。
 糸を切れるからと言って、巻き付かれるわけにはいかない。指先、爪の動きを封じられたら切れなくなる。だから避ける。避けなければならない。近付けない。

 愛舞綺が微笑む。危険の感触が心地良い。敵が自分を倒そうとしている。だから、自分もこの敵を倒しても良いのだ。
「やるな、闘士として公正に闘いたくなるな。でも私は違う、暗殺者だ。お前も違う、妖術師だ。正々堂々の闘いなんて要らない」

 もとより正々堂々の闘いなどではない。捕らえられ、一度は敗北を認めた。それすらも欺瞞だった。身体に隠した毒のおかげで反撃が可能になった。
 麻痺毒は今も愛舞綺と覇主可の身体から滲み出し、空気中に広がっている。気付かれないほど薄いそれが効果を発揮するには時間がかかる。でも、遠くへ逃げられないなら、いずれ相手の身体は動かなくなる。
 三人の妖術の舞姫たちは、火璃奈の快楽のパワーに助けられて動いていた。その効果もいずれは切れるだろう。もうほとんど勝利は決まっている。

 愛紅璃が長い糸を振るった。空中で広がるそれは網だった。愛舞綺は避けようとしたが、避けきれなかった。網が締め付け、愛舞綺は動けなくなる。指先も締め付けられ動かせない、糸を切れない。負けた?
 その瞬間、愛紅璃の動きが止まった。網の締め付けが緩む。愛舞綺は身体をひねり抜け出そうとする。覇主可と遙思が見えた。

 遙思が覇主可の股間にしゃぶりついていた。覇主可は相変わらず布を被せられている。覇主可が遙思の目隠しを外す。
 遙思は喉を鳴らして彼の精液を飲んでいる。嬉しそうだ。そうだろう、その美味と快感は愛舞綺も良く知っている。もう彼に逆らえないだろう。覇主可の勝ちだ、遙思は堕ちた。

「遙思が堕ちたのね。負けたのね」
 愛紅璃が網を外した。
「お前はまだ負けていなかったはずだ。何故、闘いを止める?」
 愛紅璃が微笑む。寂しそうな笑み。
「解放されたからよ。遙思の術が解けたわ。助けてもらったようなもの。助けられた相手と、このまま闘いたくはないわ」
「そうか、お前も操られていたのか。操られて闘っていたなら、それを解放されたなら、続ける理由は無いだろうな」

「少し寂しいけどね。愛舞綺、あなたに勝てたかもしれないのにね。ごめんなさい、途中で止めてしまって。でも、できないの」
 愛紅璃は指先に糸片を絡め、弄ぶ。この糸片を飛ばし絡めれば、遙思の身体を操ることもできる。遙思に心を操られていた。その相手の身体を操ることができる。
 でも、できない。闘いは楽しかった。それをさせてくれたのは遙思だ。復讐など必要ない。

「私は闘いが苦手だったの。心の問題よ。遙思はそんな、闘士として弱い私の心を変えていてくれたわ」
「闘いが苦手か。それは普通のことだ。失敗すれば命に関わる。怖いはずだ」
「あなたたちは、そんな闘いが好きなのよね。命に関わるどころじゃない、心を奪われるかもしれないのに。愛舞綺、あなたは、彼のためにかつての仲間と闘ってるのよね」
「そうだ」
「裏切って闘うなんて、怖くないの? 闘えるなら、相手は誰でも良いの?」
「いや。誰でも良いわけじゃない。闘うなら、強いヤツが良い」
「変よ。相手が強ければ、負けるかもしれないのに」

「弱い相手を蹂躙する、それも愉しいだろう。確かに愉しいだろう。でも、そんなことばかりしていたら、闘えなくなる。自分も弱くなって、いつか蹂躙される」
「でも、相手が強かったら、ただ蹂躙されるだけよ。殺されるかもしれない。それで終わりよ」
「そうだな。言い方が違った。楽しくないのさ。すぐ諦めるような、そんな弱いヤツと闘っても楽しくない」

「相手が強すぎるなら、諦めることは解る。それは仕方ない。どうしても敵わない相手は居る。でも、そこで諦めて、自分より弱いヤツを探す、そんな心なら、勝利も愉しめないだろう」
「諦めない相手が欲しい。それは実力の問題だけじゃない、心の問題だ。だからせめて、自分も諦めないのさ。相手が強くても弱くても関係ない」

「あなたは強いわ。みんな強い。闘える相手が居て良かったわね」
「お前も強いぞ」
「技はそうかもね。でも、心は弱かったのよ。ごめんなさいね」
「弱い心でその技を得られるとは思えない。一時的に心が弱っているだけだ。そういうことはある」
「そうね。本来なら、それは私たちのやり方。心を弱らせて自滅を誘うのが妖術師。本来なら私には向かない、できないことよ。遙思のおかげで闘えてたの」

「んくっ……こくっ……ちゅ……」
 遙思が覇主可の射精を飲み干したようだ。丁寧に彼の肉棒を清め、唇を離した。そして覇主可に被せた布を外した。
 覇主可が微笑む。

 愛紅璃の寂しそうな笑みに光が射す。この少年に負けたら、彼の虜になれたら、どうなるのだろうか。彼を求める愛人たちの闘いは激しいだろう。でも、互いを傷つけることは彼が禁じるだろう。安心して彼を誘惑し、淫らに奉仕すれば良い。

 彼のお気に入りになれるだろうか? そうすれば、あの微笑みの近くに居られるのだろうか。そして、あの美味な精液を飲ませてもらえるのかもしれない。
 遙思に飲ませていた。自分も欲しい。そのためなら何でもする。しかし、彼は女に困らないだろう。そんな彼を誘惑できる女になれるか? 解らない、でも、目指すことはできる。

「遙思、負けたわね」
「ええ、愛紅璃、多流花も、まだ彼に抵抗する? それなら私も相手になるわよ。彼にあなたたちを捧げるわ」
「遙思、あなたが負けたなら、私たちの負けよ。喜んで彼に捧げられてあげるわ。術で操る必要は無いわよ」
 覇主可は愛紅璃と多流花の頭を撫でる。癒される快感。彼はちゃんと御褒美をくれる。快楽の闘技で戦う少年は、堕とした女の扱い方を知っている。時間ができたら、飲ませてもくれるだろう。そのためにできることがあれば、もちろん手伝う。

「ただいま、愛舞綺。こっちも終わってたか」
「おかえり、覇主可。終わってはいない。まだ最後の強敵が残ってるぞ」
「火璃奈か。星璃逢様を返してもらわなきゃな」
 星璃逢は火璃奈に手を握られ、目を閉じたまま寄り添っている。

☆ 大事な人との闘い

 火璃奈は座り込んで放心しているように見える。麻痺毒が回り過ぎたのだろうか? そうかもしれない。でも違うかもしれない。違うとしたら、火璃奈は何をしているのだろう?
「火璃奈」
 覇主可が呼びかける。
「遙思は倒した。多流花と愛紅璃も倒せる。僕の虜にできる」

「火璃奈、キミも倒す。抵抗しないなら、すぐ終わるよ。抵抗はできないかな。キミは毒のせいで動けないのかな。僕がそうしたんだけど、ちょっと寂しいな」

「覇主可様」
 火璃奈が応えた。声は出せるようだ。いや、動けるのかもしれない。
「覇主可様、遙思を楽しんでいただけましたか?」
「うん、良い娘だ。気持ち良かった」

「火璃奈も楽しんでいただけますか? それとも、やはりこの星璃逢がお好みですか? 星璃逢にご奉仕させましょうか?」
「星璃逢様は返してもらう。僕の主人、大切な人だ」
「いいえ、覇主可様、あなたが御主人様です。星璃逢はあなたに従うでしょう。星璃逢もそれを望むでしょう」

「抱師は、主人を支配することは禁じられてる。そのために御主人様を強くしたり、快楽に溺れそうになったら、正気に戻すこともできる。癒しの能力はそのためのモノでもある。火璃奈もたぶん、知ってるよね」

「知ってます。火璃奈も抱師でした。でも、私の主人は私。自分を買い戻しました」
「私の御主人様は私。でも、火璃奈は御主人様を癒せません。自分を癒せません。だから、主人を支配してはいけないという、抱師の禁令を守れません。欲望の虜になることを止められません」
「私は欲望に逆らえなかった。覇主可のためにこの世界を造って、星璃逢に覇主可を喚ばせて、闘いも楽しんでもらって」

「覇主可に全てを捧げたい、そんな自分の欲望に逆らえなかった。だって、私の主人は私なんだもの、止める人なんて居なかった」

「燐さんは、私に覇主可を売ってくれなかった。でも星璃逢には売ってくれた。理由も解るわ。私は覇主可に全てを捧げようとしたもの。それは主人じゃない、だから抱師を売らない、解るわ」
「火璃奈、僕に全てを受け取って欲しいの?」
「ええ」
「何で? 何のため?」
 覇主可は笑っている。楽しそうな、でもどこか意地悪な笑顔。

「その笑顔のため。いや、違うわ。あなたのその笑顔、それも良いけど、違う。あなたが困って、でも、希望を見る時の笑顔、あれが見たいの」
 覇主可の笑顔が変わった。たぶん今、火璃奈が言ったあの笑顔。愛舞綺にも見覚えがある。闘いに行く時、見せてくれることが多かった。未来を夢見る時、彼が見せる笑顔。

「この世界の全てを捧げられるなんて困るな。でも火璃奈、キミは欲しい。キミにまた勝ちたい。今度は、しっかり虜にしたい」

「覇主可、あなたは御主人様の星璃逢以外、みんな自分の虜にするのよね。そしてみんな大人しくさせて、待たせるのよね。みんな待たせたまま、あなたは星璃逢に奉仕して楽しませるのよね。それがあなたの、抱師の使命だものね。御主人様を護り、快楽で奉仕すること」

「でも、それはダメね。赦せないわ。この世界、星璃逢のために用意したんじゃないわ。あなたのため」
「僕のための世界には、星璃逢様が必要だよ」

「覇主可、闘いましょう。互いに支配と服従を押しつけ合いましょう」
「うん、闘おう。久しぶりだね、火璃奈」

 火璃奈が立ち上がった。やはり動けるようだ。時間はかかったが、解毒できたのかもしれない。
 星璃逢も立ち上がった。火璃奈に手を取られている。

「星璃逢様、お助けします。少し待っていてください」
「いいえ、必要無いわ。覇主可、今は私がしてあげたいわ。あなたにご褒美あげなきゃ」
「火璃奈を倒してから、いただきます」
「火璃奈さんを倒すの? まだ闘うの? そうね、覇主可への本当のご褒美は、奪ってはいけないものは、闘いよね」

「私も覇主可に、闘いのご褒美、あげなきゃ。やっと、やっとよ。覇主可、あなたが求めるモノ、ずっと、あげたかった」
 星璃逢が闘いの構えをとった。

「さすがだ、手強いな。星璃逢様は僕の快感に耐性がある。僕がそうした。星璃逢様は僕の御主人様だから。でも、快楽の技を使わなくても負けないよ。星璃逢様は武術は素人だ」

「そうね。星璃逢だけならね」
 星璃逢から、火璃奈の声。火璃奈は何処だ? いや、此処は何処だ?
 辺りが霧に包まれている。多流花の使い魔に霧を撒かれたのだろうか。

 霧の中、覇主可は突いてきた槍の一撃を避けた。その槍は鎌に変化する。引き戻す攻撃は跳んで避ける。これは詩嵐武の長柄の攻撃か?
 空中に手甲の拳士。舞躍夏だろう。拳の一撃を捕らえ、肌に触れる。快感を送る。

「ん、私には効かないわよ。いえ、効いてるけど、耐えられるわ」
 星璃逢の声。触れた相手は星璃逢だった。やはり相手は星璃逢だ。
 星璃逢の短剣が突いてくる。以前、愛舞綺を刺した短剣だ。覇主可はその手を捕らえ、短剣を奪おうとする。
 短剣が爆ぜる。これは詩嵐武の変幻の長柄だ。大きく避ける。

「覇主可、あなた、快楽の技を封じられたらそんなに弱いの?」
 星璃逢が笑う。やはり星璃逢だ。攻撃の瞬間だけ、闘士たちに変わるのだろう。

☆ 薬功成就

 覇主可は笑っている。闘いの時、彼は笑顔になる。今、星璃逢と闘っている。愛する主人との闘いが愉しい。
 火璃奈と闘おうとしたら、星璃逢に変わった。星璃逢は覇主可の快楽に耐性があるからだろう。

「火璃奈、キミは現れないの? それとも、星璃逢様に任せて、それで僕に勝てるつもり?」
「覇主可、あなたは私に勝てるつもり? あなたの快楽の技は私には効かないわよ」
 星璃逢も笑う。覇主可を倒せるかもしれない。そう思えるなんて、心が躍る。

「星璃逢様、あなたでは僕は倒せない」
 覇主可の指先が星璃逢に触れる。弾いた。星璃逢は大きく跳ね飛ばされる。
 瞬間、星璃逢の姿が舞躍夏に変わり、ふわりと着地する。しかし再び覇主可の指先が迫っている。
 少年の指先を受けたのは星璃逢だ。仕方ない、快楽の技に耐えられるのは星璃逢だけなのだ。彼に触れられて墜ちないのは星璃逢だけだ。

 星璃逢は一瞬で抱きしめられ、脚を払われ、倒される。そのまま脚を広げられる。いつも、何度もしてきたこと。覇主可に抱かれる。膣に勃起を挿入される。
「あふっ、覇主可様……」
 喘いだのは遙思だ。星璃逢を温存するためだろう。

「また、変わった。火璃奈、そんなに僕が怖いの? キミだって抱師なんでしょ? 抱師が闘うなら、抱き合うことを避けるなんておかしいよ」
「あなたに合わせたのよ。武術で闘いたかったのでしょう?」
「武術では勝てる。これまで会ったみんなに勝てる。火璃奈、キミなら性技で僕に対抗できるかもしれない。火璃奈、僕に勝てるとしたら、キミしか居ないんじゃない?」

「いや、まだ私が居る」
 覇主可が抱いている相手が愛舞綺に変わった。毒が染みこんで来る。
「以前、こうやって負けたな。でもあの後、何度も何度も抱かれて、お前の快感に耐性もできてきた。星璃空姫の次に多く抱かれたのは私だろうからな」
「愛舞綺、キミも火璃奈に従うの?」
「覇主可、闘いたいのだろう? 相手するぞ。火璃奈にお前を渡さない」

「仕方無いな。火璃奈も抱師だ、僕が勝てるとは限らないものね。僕が負けたら、火璃奈の虜にされるだろう。抱師の闘いはそんなものだ」
 抱師の闘い。本来、ありえないことだ。それをさせるような主人に抱師は売られないはずだ。
「僕も火璃奈も、抱師としておかしいのだろうな。僕は闘いを求めた、火璃奈は僕を求めた。抱師としておかしい。でも、そんな二人だから、また会えたんだろう」

「覇主可、今の相手は私だ。火璃奈に会いたいなら、私を倒せ」
 愛舞綺の毒が強くなる。覇主可の身体が痺れる。解毒が追いつかなくなってきている。早く射精して、癒しの精液で毒を弱めなければならないだろう。

「愛舞綺、そんなに欲しい? それとも、僕を倒したい? 殺したい?」
「倒したい。殺したくはない。欲しい」
「キミは負けるよ。手加減しすぎだ。殺したくないなんて、キミの技には合わない」
「それがお前の技だろう? 欲しがらせ、手加減させる」

「そうだ。だから僕は勝てる。でも、手加減させなきゃ勝てないなんて、嫌だな」
「わがままだな。自信やプライドじゃないな。過信、無謀、甘えだ。いつか全てを失うぞ」
「うん。でも、仕方無い。もう全部失った。星璃逢様も愛舞綺も僕を倒そうとしてる。火璃奈の技は凄いな」

「でも、それが楽しい。僕はみんなと闘いたいと想ってる。どうしようもないよ」
「そうだな。そんなものだ。闘いを求める者はみんなおかしい。私もそうだ」

 愛舞綺の身体の奥、秘めた毒壺が開いた。手加減しない毒が流れ出す。
「覇主可、これが最後の毒だ。これを解毒されたら、私の身体の毒は消えるだろう。お前が望んだことだ」
「うん」
「死ぬなよ」
「うん」
 覇主可はまだ射精しない。暗殺者の秘毒が彼の勃起に染み込む。覇主可の身体が一瞬ひきつり、すぐに力を失う。

 覇主可は笑っている。愛舞綺の本気だ。最初に闘った時、この毒は使わせずに済んだ。それは正しい。相手の実力を発揮させずに勝つ、それは正しい闘い方だ。でも、だから、この毒に挑むことはできなかった。

 愛舞綺の膣内に何度射精しただろう。何度、その唇の中に射精し、飲ませただろう。星璃逢より少ない、それは確かだ。でも大量に注いだ、それも確かだ。
 それでも、彼女の毒は消えなかった。この秘めた毒のせいだろう。開いたことのない深奥に隠されたこの毒には、癒しの精液は届かなかったのだろう。
 やっと届くかもしれない。いや、届かせる。

「あうっ!」
 愛舞綺が悲鳴をあげた。膣内で覇主可の肉棒が膨れ上がり、伸びてくる。身体を貫かれる感覚。
 先端から滴る液が体内を溶かしているように感じる。それは快感だ。でも怖い。でも気持ち良い。精神も溶け始めている。

 愛舞綺が開いた深奥には、肉棒は届かないはずだった。でも届いた。覇主可の肉棒はまだ伸びてくる。このまま腹も胸も貫き通り抜け、唇から出てしまわないだろうか。
 愛舞綺を串刺しに貫いたまま、そのまま彼は星璃逢に挿入するのかもしれない。星璃逢は優しく愛されるだろう。
 でもその体勢なら、星璃逢の膣口からこぼれる精液を飲めるかもしれない。いや、それは覇主可が許さないだろう。自分の唾液は毒だ。

 毒が消えたら、星璃逢とも愛し合えるかもしれない。覇主可が他の愛人を構っている間、星璃逢と抱き合い、覇主可への不満を語り合えるかもしれない。星璃逢と自分、二人だけに解り合えることがあるだろう。覇主可の愛人の中で一番と二番。彼について語り合えることは多いだろう。

 覇主可の勃起は愛舞綺を貫かなかった。子宮の奥、秘毒の中で止まった。その毒は彼に届かない。先走りの液が護っている。
 覇主可が射精。癒しの液が毒を攻める。混じり合い変質する。それは無害だが薬効も無いものになるのだろうか。そうではないようだ。
 薬効は毒を取り込み、強くなってゆく。一滴であらゆる傷を治すような、量を与えてはいけないような、そんな薬液に変わった。
 この薬は過ぎれば毒だ。でも、愛舞綺と覇主可は耐えられる。

 愛舞綺の体液が薬に変わった。強すぎる薬は身体の奥に隠されている。汗や唾液に混じる薬効は適度なものとなった。
 彼女はこれから、触れるだけで相手を癒すだろう。

☆ 傷が癒える快感

「さすがね、覇主可、愛舞綺の毒を反転させるなんて」
「やっと出てきてくれたね、火璃奈」
 覇主可が抱いている相手が、愛舞綺から火璃奈に変わった。

「ねえ、覇主可、満足した? 楽しい? この世界、楽しい?」
「うん、楽しい。でも」
「何か足りない?」
「足りない、かな。これからどうすれば良いのか、迷う」

「私を堕として、従わせて、星璃逢と一緒に暮らせば? 星璃逢だけじゃないわ。愛舞綺も、獅子桜院たちも、遙思たちも、私も一緒」
「でも、闘いは、終わる?」
「終わらないわ。できるわ。闘えるわ。攻めれば良いのよ。星璃逢の国が攻められたように」
「そうだ、闘いを続けることはできる。僕だけじゃない、闘いが好きな仲間も居る。新しい女の子にも会えるだろう」
「そうよ。そうすれば? 侵略すれば?」

「でも、それは、やらないこともできる。必要無いとは言わない。闘士は闘いたい。でも」
「そうね、迷うわよね。大義も何も無いわ。相手を傷つけ、殺すかもしれない。あなたの技なら殺さずに済むとしても、従わせることになるわ」

「そうだ、そう、僕がそうしない理由は無い。たくさんの女の子と闘って、倒して、愛されて、星璃逢様もみんなも、火璃奈、キミも居て」
「でも、それは、キミに負けるということだ。火璃奈、キミは凄いよ。キミに勝つには、その僕に都合が良い未来を捨てなきゃならない」
「それは辛い。でも、僕は、キミに負けたくない。だって、闘いだもの。僕が望んだ、闘いだもの。負けを選ぶことはできない」

 覇主可が火璃奈にキスする。性器は交合したままだ。絡め合う舌。
 二人の抱師のパワーが互いの身体に巡ってゆく。しかし覇主可が強い。触れて快楽を送る技を究めているのは覇主可だ。
 火璃奈の姿が星璃逢に変わる。この快楽のパワーを受け止められるのは星璃逢しか居ない。

「んぐっ!」
 耐えきれず声を漏らしたのは火璃奈だ。一瞬星璃逢に変わったが、戻った。
 また、火璃奈の姿は星璃逢に変わる。星璃逢は微笑み、覇主可から唇を離した。覇主可も主人に従う。
「覇主可、火璃奈さんに負けないでね」
「はい、星璃逢様」
「それから、私も手伝ったのだから、ご褒美はちょうだいね」
「はい、火璃奈を落としたら、星璃逢様にもします。同じだけなんかじゃない、星璃逢様だけが受け止められる僕の本気のご奉仕で」
「楽しみね。がんばってね」
 星璃逢が火璃奈に戻った。

「星璃逢には頼れないのね。覇主可、私を落として、それからどうするの? いや、まだよ。まだ私も負けてない」
「うん、まだだ。火璃奈、僕に勝ちたい? 僕の快楽に耐えて、キミの夢で絡め取って、僕の愛人の一人になって、この世界で闘いを続ける僕を観たい?」
「そうよ、そうなれば、私の勝ちよ」

「その夢は叶うかもしれない。でも、勝つのは僕だ」
「そうよ、あなたの勝利と私の勝利は同じよ」
「おかしいな。いや、それで良いのかもしれない。でも、僕はそれじゃ足りない」
 覇主可の射精。火璃奈は耐えようとした。無理だった。当然だ、耐えられるなら、星璃逢に頼る必要もなかった。

 待ち焦がれた快感。かつて修行時代、覇主可と闘った時、この感触と共に生き返った。
 あの時、火璃奈は死んではいなかった。夢に引き込む技でそう想わせただけだ。それなのに生き返らされた。
 死んでいなかったのに、死者が蘇生するような快楽の技を使われた。狂ったのは当然だ。彼の記憶を封じ、侵略と復讐の機会を待った。
 今、癒された。彼にしか癒せない傷だったのだ。闘いなのに、癒された。

 世界が戻った。周囲に星璃逢や愛舞綺、遙思たちが居る。
 火璃奈は目を閉じたまま覇主可に抱かれ、彼にしがみついている。
「覇主可」
「火璃奈」
「負けたわ。どうすれば良い? あなたの望むようにするわ。従うわ」
「ありがとう。この世界、まだ闘いはあるの? 星璃逢様の国だけじゃない。キミの軍だけじゃない。他の国や街があって、闘ってたりするのかな」
「ええ、そうよ。愛舞綺や遙思たちも、もともとそれらの戦の中で闘っていた傭兵だわ」

「それなら、癒し手は居ても良いよね。愛舞綺はもう、毒じゃない、薬を分泌する身体になった。僕の身体も技も、女の子を癒せる」
「癒し手? 闘いが起こっている所で、負傷者を癒すの?」
「うん、そうしたい。火璃奈、手伝ってくれる?」

「あなたに従うと言ったばかりよ。でも、覇主可、闘わないの? あなたは闘いたいんじゃないの?」
「うん、でも、それは、みんなと時々試合でもすれば良い。いや、闘いが起こっている所に行くなら、闘えることは必要だ。僕も闘うかもしれない。でも」

「もし、それで、闘って、相手を落としてしまったとしても、癒すよ。それも、僕にできることだ。それも闘いだ。痛みや傷と闘う」
「そうよね。でも、私は待たされたわ。あなたの記憶を消してしまったのは私だから、仕方ないけど」

「待たせてごめん。でも、間に合ったかな」
「どうかしらね。いや、間に合ったわ。ごめんなさい、覇主可。負けたわ。傷を癒してくれて、ありがとうね」
「うん」
 覇主可の笑み。嬉しそうな。

☆ 見知らぬ朝を夢見る夜

 覇主可は火璃奈を倒した。火璃奈の軍は降伏した。星璃逢の国を攻めていた軍は降伏した。戦争は終わった。とりあえずは。
 覇主可は愛人を増やした。大量に増やした。星璃逢の国の民、火璃奈が従えていた兵士たち、みんな女だ。護られた者たち、打ち破られた者たち、どちらも彼を拒む者はいない。

 この世界には未だ、覇主可以外の男性は見つからない。女ばかりだ。それも、美しい少女ばかりだ。
 夢使いの火璃奈が、覇主可のために造った世界。それなら納得もできる。でも、そうでもないらしい。
「この世界は私の世界じゃないわ。私はこの世界の神様じゃない。当たり前よね」
「でも火璃奈、男性が居ない世界なんておかしい。キミがそうしたからじゃないの?」
「そうね、この世界の男性は、みんな私が集めて閉じ込めた、そんな夢も見せたわ。でも、それは幻、もともと居なかったのよ」
「何で居なかったの?」
「知らないわ。そういう世界を選んだだけ。覇主可、あなたを誘うためにね」
「そうか、夢界転生って、そういう技なのか。異世界へ行く技なのか」

「僕もたぶん、その技でこの世界に来た。僕には使えない技だ。燐さんに送ってもらった。だから、帰ることは無いと思ってた」
「私は夢界転生を使えるわよ。覇主可、帰りたい?」
「いや。この世界には星璃逢様が居る。僕の御主人様が居る」
「星璃空と一緒に行くこともできるわ。一緒に帰ることもできるわ」

「覇主可、帰りたい?」
 星璃空が訊く。
「いいえ。元の世界で、僕はずっと待っていました。星璃逢様を、僕の御主人様を待っていました」
「でも、闘いは終わったわ。あなたは、闘いたいから私の所に来てくれたんじゃないの? あ、でも、そうか、あなたの居た世界では闘えなかったのよね。戻りたいとは想わないわよね」

「闘いは続きます。この世界で続きます」
 覇主可の感覚は遠い軍勢の気配を捉えている。戦争の気配。
「攻めて来るぞ。覇主可を欲しがるのは火璃奈だけじゃない。当然だな」
 獅子桜院は戦支度を済ませている。いつものことではある。彼女は騎士団長だ。
「まだ、遠いですね。でも、占うまでもなく解ります。攻めて来ますよ」
 芽凜愛も、いや、闘士たちは皆、戦の気配を感じている。

「結局、火璃奈さんの言った通りじゃない。覇主可、あなたは、この世界で闘い続けて、女の子を堕とし続けるのね」
「そうかもしれません。でも、星璃空様、あなたが止めろと命じるなら、止めます」
「止めないわ。止められないわよ。覇主可を奪いに来るんだから」
「この世界から出てしまえば、止められるかもしれません」
 星璃空の脳裏に、彼と二人で異世界を旅する自分の姿が浮かんだ。惹かれる。

 でも、それも解決にはならないだろう。どんな異世界に行っても、同じことになるだろう。覇主可はあの笑顔で、多くの女を魅了するだろう。そんな彼に自分も惹かれている。そして、彼の主人は自分なのだ。少なくとも、この世界では。

「まだ、時間はあるかしら? 闘いはすぐに来る?」
「二三日の時間はあるでしょう。もっとお望みなら、足止めしておきますよ」
 遙思が応えた。彼女の特別な視界は、上空から遠くの敵軍を観ている。

「じゃあ、二三日は愉しめるわね」
「そうだな、星璃空、覇主可を一人占めか? お前が望むなら、止められないが」
 愛舞綺が星璃空を背中から抱きしめる。
「覇主可を一人占めなんて、できないわ。私でもね。でも、もっともっとエッチにも強くしてもらうわ。一人で覇主可を受け止められるくらい。でも」

「それでも、一人占めはしないわ。私は女王よ。ねえ、覇主可、みんなを満足させてね。抱師のお仕事、できるでしょ?」
「はい、星璃空様!」
 覇主可は星璃空と愛舞綺に肉棒を差し出す。二人が並んで吸い付いた。愛舞綺が他の少女と触れ合う、覇主可が夢見たこと。
 覇主可は二人の頭を撫で、快感を送る。唇が舌が絶頂できるようにする。射精は半分ずつ。二人は精液を口内に溜めたままキスする。奪い合い、与え合う。

「覇主可、私も欲しい」
「星璃空様の命令だぞ、皆、満足させてくれるのだろう?」
「待つけど、待てないよ、早く……」
 舞躍夏、獅子桜院、詩嵐武がお尻を列べておねだりする。でも今、覇主可は星璃空と愛舞綺のオマ×コを交互に突いている。

「覇主可、これからどうするの? 闘うのは解るわ。何を目指すの?」
 火璃奈が問う。
「この世界、男性が居ない理由を知りたいな。僕に都合が良い世界、闘えて、綺麗な女の子しか居ない世界、不思議だ」
「理由を調べて、世界を変えるの?」
「どうかな。世界を変えるなんて、何か嫌だけど。でも、変えてしまうかもしれない。どちらでも良い。そんなことは目標にならないよ」
「闘う。癒す。星璃逢様を護る。その先は、この世界をもっと知ってからだ」

「僕だって、いつか負けるかもしれない。男性だから、抱師だから勝てる、そんなはずもない。男性だから、抱師だから望まれる、挑まれる、それはあるだろう。闘いは続くだろう」
「僕を望む娘が、どんな技で、どんな策で挑んでくるのか、解らない。油断はできない。僕も技を磨かなきゃ」
 覇主可の動きが勢いを増す。もう星璃逢と愛舞綺から離れ、獅子桜院たちに移っている。星璃逢と愛舞綺は満足した表情で微睡んでいる。

「そうね。手伝うわ。もうすぐ夜ね」
 火璃奈も覇主可を待つ。夜は長いだろうか? そうでもないかもしれない。皆、覇主可に愛され、心地良く休むだろう。それが抱師の役目だ。
 覇主可も眠るだろう。癒し癒され、心地良く眠るだろう。束の間の休息。
 彼の夢に割り込むのは、今夜は止めておこう。一緒に眠ろう。次の朝を待ちながら。

完結 ありがとうございました

この物語をKindle電子書籍化しています。
2巻には書き下ろし後日譚も入っています。

【Kindle電子書籍】性拳舞闘界 1: 性闘士の少年は王国の守護者

性拳舞闘界1巻のKindle版です。
同人誌で制作していたものをKindle化しました。

武闘派の抱師(性愛師)、覇主可(はすか)が異世界で異能バトル。
無双もします、敗北もします。
心を揺さぶる妖術師との戦い。

かなりお気に入りの物語です。


覇主可(はすか)は、抱師と呼ばれる性愛師の少年です。
しかし彼は武闘の技に優れ、闘える場所を探していました。

そんな彼を買ったのは、異世界の小国の女王、星璃逢(せりあ)。
星璃逢の国は今、謎の軍勢に攻められています。
異世界の闘技に期待して覇主可を買いました。

覇主可は強力な技で星璃空たちを護ります。
しかし、この世界の闘技、妖術も油断はできないようです。覇主可の闘いは続きます。

闘いの虚実に重点を置いた異世界異能バトル。
ファイトとフェイントの物語です。

【Kindle電子書籍】性拳武闘界2 見知らぬ朝を夢見る夜

ファイトとフェイントの異能バトルとエッチの物語。
性拳武闘界2、完結巻です。
書き下ろしの後日譚が二つ収録されています。