☆ 闘いを求める淫魔王子に会うこと 【安楽な淫魔王子 8】

 そんな生活がしばらく続いて。
 ある日、麗太郎様宛に脅迫状が届きました。
 麗太郎様の正妻の魅夜美様、そして何人かの愛人たちを捕らえられているらしくて。麗太郎様に一人で来いと言う脅迫状。

 でも麗太郎様は此処には居なくて。影武者の僕が麗太郎様と言うことになっているのです。

「麗太郎様に報せなきゃ」
「ええ、でも、麗太郎様も行方不明です。そして脅迫状に書かれた期限は迫っています」
「そうなのか。僕が行くしか無いかな」

「そんな、令愛様、危険です!」
 輝は泣き出しそう。
「うん、でも、行かなきゃ。麗太郎様の大事な人たちを放ってはおけないよ」

 指定された地点はかなりの辺境。行きは転移門で送ってもらえるけど、帰りは大変そう。僕は魔法なんて使えないし。

 転移門を抜けて降り立ったのは、深い森の中でした。待ち受けていたのは武装した美少女たち。槍を突きつけられて。
 この娘たちはエルフか? 人間や淫魔とは少し違う美貌。

「ようこそ、令愛さん」
「僕の名前を知ってるのか。麗太郎様じゃないことを解ってるのか」
「ええ、麗太郎様も捕らえてあります。さあ、こっちへ」

 案内されたのは洞窟の中。いや、これはいわゆるダンジョンだ。微妙に整備されてる。

「ようこそ、令愛君。第三百七十三位の淫魔王子様」
 迎えてくれたのは一人の金髪の美少年。この人がリーダーらしい。
 軽装だけど武装してる。剣を帯びてる。
 それにしても綺麗だな。まるで淫魔王子の一人のようだ。

「あなたは?」
「僕は覇夜斗(はやと)。一応、淫魔王の血を引いてる。でも淫魔王子として見つけ出される前に、此処に逃げ出せた」
「え? 何で?」
「淫魔王に対抗するためさ」

「えっと、もしかして、麗太郎様が追っていたのはあなたたちですか?」
「そうだ。反乱を計画してる」

「何で? 何に不満があるの?」
「そうだな、生活に困ってる訳じゃない。まあ、そんな者はこの世界には居ないだろうけどね。弾圧されてる訳でもない。淫欲が満たされない訳でもない」
「それじゃ、何で?」

「麗太郎君は強かった。僕は彼と闘ったよ。あんなに強い拳士は初めてだった」
 覇夜斗さんはうっとりした表情になる。

「闘うため? そのために反乱を?」
「それだけじゃないけどね。でも、闘いも大きな目的だ」
「それは、傷つく人が現れるってことだよね。何でそんなことを?」

「傷つかない、飢えもしない、淫欲も満たされる。そんな世界は良いものだよ、確かに。淫魔王様が治めるこの世界は素晴らしいと思う。でも」

「満たされない何かがあるんだ。令愛君には無いのかな。僕は剣を学んだ。モンスターと闘ったりもした。闘って勝つのは気持ち良いよ。素晴らしく」

「ああ、そうか、勝ちたいんですね。それじゃあ、闘わなきゃなあ」
「そうだ」
「淫魔王様にも、勝てるつもりですか?」
「剣ならね」
「凄いな」
 解らないことじゃない。僕だって強い自分に憧れたりしたこともある。

「それで、何で僕を呼び出したのですか?」
「僕は麗太郎君と闘った。素晴らしい闘いだった。そのことを世界に報せたい。でも、彼は淫魔城で静養してることになってる。だから呼び出した」
「ああ、そうか」
 ある意味、麗太郎様の秘密の任務を隠すためだ。

「僕は第七淫魔王子と闘って、勝った。そのことを世界に報せる」
 覇夜斗さんの傍の魔法鏡が煌めいて。闘いの様子が映し出されて。

 それは素晴らしい闘い。二人の美少年が拳と剣で闘ってる。
 美しい。肉体の美しさだけじゃない。技が美しい。

 二人の動きはまるで舞いのようで。金髪と白髪の超美少年二人が舞う。剣が舞う。拳と蹴りが舞う。
 武器を持たない麗太郎様が不利にも見える。でも技が補ってる。

 観るだけで絶頂させられるような、淫魔王子の美貌。でも二人の闘いはそれを超えて。この闘いは普通の人でも観られるだろう。淫魔の美貌を超えた美しさがそこにあって。

 でも最後、倒れたのは麗太郎様。血しぶきが上がって。ああ、そうだ、剣で斬られたんだもんな。

「麗太郎様は!? 生きてるの?」
「ああ、生きてる。閉じ込めて静養してもらってるけどね」
「今の映像は、世界中に送られたんだね」
「ああ」
 盛大な拍手が聞こえるような気がした。あの闘いを観たら、そうしたくなるだろう。

「凄いな。それで、これからどうするの?」
「闘うさ。でももう、闘いで僕に勝てる淫魔王子は居ないかもしれないな。女の子相手じゃ闘いにもならないし。淫魔王と闘えるかな」
 女の子相手じゃ闘いにもならない。その理由は解る。僕たちが淫魔王子だからだ。美貌と淫気だけで勝ててしまうだろう。

「確かに、武術なら、あなたが一番かもしれない。でも淫魔王子の強さは、武術だけじゃないよ」
「そうだね。性技、性力の強さこそ、淫魔王子に求められるものだよね。僕はそっちは、武術ほど自信がある訳じゃない。でも、第三百七十三位のキミには負けないかな」

「それじゃ、競ってください。僕が勝ったら、麗太郎様たちを返して」
「おお、キミも挑戦するんだね。してくれるんだね。もちろん受けるよ。闘おう」
 覇夜斗さんの笑顔。この人は闘うことが好きなんだな。
 でも剣や拳の闘いじゃなければ。僕にもチャンスはあるかもしれない。

「相手はこの森のエルフたちだ。まだ僕も手を着けて無い娘がたくさん居る」
「はい。あの、麗太郎様や魅夜美様に会わせてくれませんか? 僕の闘いを観て欲しい」
「ああ、それはそうだな。闘いの証人になってもらおう」

 麗太郎様、魅夜美様、麗太郎様の愛人たちが連れて来られて。拘束されてるのは仕方無いか。

「令愛君、来てくれたのか、ありがとう。しかも性技で彼と闘うって」
「麗太郎様、ご無事で良かった」
「がんばって、応援してるよ」
「はい!」

 何だか嬉しい。僕は麗太郎様を尊敬してたんだな。何だか兄に誉められたみたいだ。あ、本当に兄なんだよなあ。あんまり実感は無かったけど。
 覇夜斗さんだってそうだ。淫魔王様の息子。ああ、これはただの兄弟喧嘩? いや、喧嘩でもない。偉大な兄に挑戦したいだけだ。

 美少女エルフたちが集まって。僕と覇夜斗さんの前に列を作って。

「さてと、性技を競うのは初めてだな。より多くの女の子に選ばれた方が勝ちで良いかな?」

「かまいませんけど。でも勝敗は互いに解るでしょう。僕たちは淫魔王様の息子なんだから」

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