☆ 彼からの手紙

「この手紙は、記憶を失った後の僕自身、つまり、キミに宛てて書く。僕の名前は詞露。キミの名前は変わってるかもしれない。愛凰と言う名前を考えた。僕の名前、詞露はミルクの色。愛凰は、空の、海の色だ」

「僕は、美味しくて身体に良い精液を出せる。でも、そのために、女の子が必要な身体だった。女の子のお口かオマ×コで搾ってもらわないと、出せない。女の子がいないと、僕は破裂しそうになる。辛い」

「恋人の遙愛は、僕を搾るために、僕の精液しか飲めないようにされている。それを変えたかった」

「僕自身の、女の子がどうしても必要な身体、それも変えたかった。そんなことがなくなって、離れることもできるようになって、そうしてから、それでも、一緒にいたかった」

「僕と遙愛がそうなのは、精神のせいらしい。記憶を消して、新しくやり直せば、僕も女の子に頼らなくても、遙愛も僕がいなくても、生きていけるらしい」

「遙愛は記憶を消すと勝手に決めた。記憶を消すことができる薬を、僕に飲ませたんだって。僕の記憶は、もうすぐ消えるらしい。遙愛の記憶も。がんばって、僕のミルクに混ぜてその薬を飲んだそうだ」

「僕たちは自由になるのだろう。相手のことも忘れて、忘れられて、本当に自由になるのだろう」

「でも、もし、キミが、ちょっと寂しかったら、遙愛を探すと良い。すぐに解るよ。キミの考えていることが解ってしまう女の子だ」

「遙愛の身体は、キミに反応するはずだ。相性の良さは保証する。一番気持ち良い女の子だ。遙愛もキミが必要無い身体になっているだろうけど、キミなら、絶対に虜にできるよ」

「美味しい精液を出せる身体はそのままだろう。女の子に頼る必要がなくなったとしても、自分で出す必要も無いだろう」

「キミが生きていくなら、女の子たちに頼るのがオススメだ。そうしないことも、できるのかもしれない。でも」

「一人で大丈夫でも、それでも、みんなといて欲しい……それじゃ僕と同じだけど」

「心配なんだ。キミが一人だけになれるとしても。一人で射精できるとしても、それでも、溜まる何かは、女の子たちを求めるだろう。優しくしてあげて」

「キミは、女の子たちに嫌われても大丈夫で、女の子たちを嫌うこともできるのかもしれない。そんなキミは、暴君にもなれるかもしれない」

「でも、それは、たぶん、僕が女の子に会えなくて破裂してしまうより、辛いことだ。僕一人、キミ一人の痛みじゃなくなる。そして、キミは、そのことが、一番痛いだろう。キミが僕なら」

「遙愛を探して。彼女のせいだ。怒って良い。貪って良い。忘れているだろうけど、そんなの、遙愛の勝手だ」

「でも、遙愛は強い。キミの天敵だ。たぶん、キミが唯一堕とせない、服従させられない女の子だ。だから、大丈夫だ。いざという時、止めてくれるのは遙愛だ。遙愛を探して」

「ここからは、もうすぐ消える僕の記憶を書いておこうと思う。閉じこもっていた僕が、助けられるお話だ。キミが忘れた物語だ……」

 そこから先には、目隠しされて拘束されていた少年が、ベッドから立ち上がろうとする物語が書かれていた。眩しさに目を細め、慣れない自由にふらふらしながら。

 彼は可哀想には思えない。
 この詞露という少年になれるなら、なりたいと思うだろう。女の子を好きなように虜にして、貪って。
 少し痛い目を見た方が良いのではないかと思わせる。記憶を消されるくらい、なんてことは無い。いい気味だ。

 僕が彼なら、女の子を好きなように虜にできるはずだ。できる。できている。

 破裂しそうになる、という彼は、一人では射精できなかったらしい。僕はできるかもしれない。少なくとも、包まれていなくても、射精は続く。

 でも、何故、一人で射精しなければならないんだ?
 女の子を虜にできるなら、そうすれば良い。女の子の中で射精すれば良い。

 僕が、彼が、こうなってしまったのは、三人のお嬢様のせいらしい。そのお嬢様たちを虜にして、使って、それで良いはずだ。
 記憶を消した遙愛という女の子を貪って、それで良いはずだ。

「ねえ、沙良羽さん、紅華様、緋映様、美赤様、明路空さん、舞月姫さん……」
 手紙に書かれていた名前。呼んでみる。
 すぐに解った。みんな、自分の名前に反応する。

「遙愛。遙愛、遙愛! 聞こえないの!?」
「遙愛様は、その名前を覚えておられません。愛凰様と同じく」
 沙良羽さんが応えてくれる。

「誰? 遙愛の、今の名前は?」
「……申し訳ありません。それを愛凰様に教えることは、詞露様に止められています」
「へえ」

 くだらない。詞露って、僕のことらしいのに。
 いや、違うのだろう。彼は消えた。僕は愛凰だ。

「そっか、探せって書いてあったね。探すよ。一番気持ち良い女の子だって。探すよ。世界中の女の子を試して、探すよ」

 緋映様……緋映さんが抱きしめてきた。
「世界中なんて、必要ないわ。居るわ。近くに。解るでしょ?」

「緋映さん、緋映、緋映様……何て呼べば良いの?」
「緋映よ。私もあなたのこと、愛凰って呼ぶもの」

「緋映、僕は、あなたに怒って良いの? 遙愛さんに、怒って良いの?」
 詞露は怒っていたけど。僕は愛凰だ。
 詞露は怒って良い。でも、僕は?

「愛凰、変わってないね。うらやましいな。詞露が他人に怒ったのは、一度だけ。遙愛さんにだけ」

「僕はやっぱり、彼なの?」
「ええ。あなたの身体、特別なこと、知ってるでしょ?」

 解っていた。
 一番気持ち良い身体、唇。
 一人だけ、呼びかけに応えなかった女の子。

「キミ、名前は?」
「遙希(はるき)、です」
「覚えてる?」
「覚えて、ません。愛凰様、私、遙愛さんなんでしょうか?」

 怒れない。怒れるわけない。
 狡い。遙愛は狡すぎる。

「遙希、キミが誰かなんて、関係ない。僕のこと、好き?」
「愛凰様は、私のこと、どう思われますか?」
「気持ち良い身体の、可愛い女の子」
「そうですね。愛凰様の心、解ります。愛凰様、怖がってる。私、遙愛さんですよ」

「遙希、僕のこと、愛凰って呼んで。呼び捨てにして」
「解ったわ、愛凰。ごめんね、変な話し方して。でも、私も怖かったよ。あなたが怖がってたから」
 遙希もあの手紙を読んだのだろう。遙愛さんの口調で話してくれた。

 僕は遙希を抱きしめた。

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