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☆ 水の上に出たこと

 水。大量の水があった。
 ゲートを抜けた先、そこは海だった。

「ああ、まだ、干上がってはいなかったのか。それはそうだ」
 海が無くなっていたら、気候変動はもっと恐ろしいことになっていただろう。

 陸地が見えない。
 全員、海面に落下した。すぐに晴香が全員を浮かび上がらせる。

「うーん、船が欲しいわね」
 空間転移ゲートはもう閉じている。

「そうだな。でも、木材とか無いだろうしなあ」
「何時季に樹になってもらう?」

「ちょっと待って。船を造れるかも。姫李佳、手伝って。あなたの物質生成はお水までだけど、組み換えは色々できるかも」
 練佳が姫李佳の能力を解放する。

「組み替え? 化学合成の応用?」
「ええ、何時季にもらったエネルギーがまだ余ってるから……私の能力と合わせて」

 練佳の電磁力コントロールが素材粒子を集める。姫李佳の化学合成能力が足りない材料を合成する。

「かなり色々溶けてるわね。何時季にもらったエネルギーがまだあるから、分けられるわ」
 海水中からヨットが現れる。

「練佳と姫李佳って、かなり凄いよな。戦闘用のチームだった僕たちとは違うよね」
 空流は自分に何ができるか考える。破壊と消滅。その能力は、攻撃の要だけど。もう、戦争は終わったらしい。

「私と姫李佳は補給用のユニットだったからね。でも、何時季の栄養でエネルギーをもらえるからよ。姫李佳も私も、何時季がいなかったら役に立たないわ」

「何時季も、戦闘用じゃないよね? やっぱり補給用?」
「うん、そのためもあったみたい。でも、僕は本当は、緑を増やすタネだったみたい」

「タネ?」
「僕が樹になるたびに、みんなが連れ戻してくれるよね? 樹になって、そのまま森になって、そういうことを望まれてたみたい」
 それを言う何時季はどこか寂しそうに見える。

「やっぱりそうなのね。ねえ、何時季、あなたはそうしたいの? たぶん、今のまま、男の子のままで居たいのよね?」
 晶華は知っている。でも訊く。何時季自身は、自分の気持ちを知らないかもしれない。

「うん、自分じゃ戻れないから、樹になるのは怖い……森になれば、もっとたくさんの生命を養えると思うけど」

「必要無いわ。私たちは今の何時季で足りてるし。私と咲生逢は、たぶんずっと生きるから、増えなくても良いし。もっとたくさんになんて、ならないわ」
 憧姫がどこか怒ったような声で言う。何時季と受精することはできないだろう。違う生き物だ。

「そうね、何もなければ、憧姫と咲生逢は生き続けるわね。でも、何があるか解らないわ。増えるのも良いわよ。と言っても、妊娠とか難しいけどね」
 改造された身体のおかげで生きている。生き物として増えることはできないかもしれない。
 何時季の精液も、ただの栄養のような気がする。精液と言うのは違うのだろう。果汁や乳のようなものだ。ただ、彼が喜んで出すようにするために、オチン×ンから出るのだろう。

「何時季は光合成で、食べずにエネルギーを造る。最初の生産者だ。姫李佳は何時季にエネルギーをもらって、水を作って、彼と僕たちを活かす」
 空流は自分に確認する。大事なものは何か。

「僕たちは活かしてもらってる。でも、栄養だけじゃ足りないかもしれないから。自分を護ることも必要かもしれない。何時季と姫李佳は、僕たちが護る」
 空流にできること。破壊の能力。
 もともと、そのための、護るための能力だったはずだ。何かおかしいけど。

 光をエネルギーにするだけなら、空流にもできる。ただ、それは破壊のパワーの充填に使えるだけだ。命を生かすことはできない。自分の命すらも。

「そうね、護りながら、探しましょう。助けられる誰かを。それも増えるということよ」
 晶華は何かを夢見ている。
 この世界に再び生命が満ちること?

「子孫を残せないとしても、必死に生きるものよ。そのために、他の生き物を食べようとするのも普通のこと」

「でも、何時季は、食べきれない程の栄養をみんなにくれるわ。会えて良かった」

 そう、自分たちは生きている。生きようと思うことができる。何時季の果汁を飲みたいと思うことができる。

 他の生き物は見つからなかった。見つけたら、食べようとしたかもしれない。
 食べきれない何時季のおかげで生きている。

「海か。陸上より、生命が残ってる可能性は高いよね。でも、会うのは難しいかな」
 海は広いだけでなく、深い。

「生命に会えたら、食べる?」
 憧姫が訊く。何時季の栄養さえ、必要ではない少女。生存するためだけなら、食べる必要がない。

「どうかな。食べられない生き物もいるし、食べられる生き物でも、食べないかも。寂しくなるからね」

「そうね、何時季がいるもんね。栄養をもらっても、いなくならない何時季がいてくれるもの」

「さて、じゃあ、何時季を逃がさないようにご奉仕しようかな」
 空流が何時季の脚を抱きしめる。胸が当たる。
 頬ずりされる感触。

 何時季は思わず額に触れてしまう。咥えて欲しいというサインだ。

「んふふ……」
 口淫を許可された空流が嬉しそうに少年の肉棒を取り出す。

 非難する者はない。彼が望んだ。
 みんな何時季の周りに集まっている。手が届く位置に。

「気持ち良い風ね」
 青空の下でするのは初めてではない。
 でも、水平線を観ながらは初めてだ。