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☆ 彼が護るモノ

「んっ、んっ、ちゅ、んー……」
 憧姫が何時季を咥え舐めしゃぶっている。目隠しした彼女の舌は敏感だ。彼の果汁は甘く美味しい。でも今は彼への償いと感謝だから、美味に溺れてはいけない。心をこめて丁寧に、情熱的に奉仕しなければ。でも、美味しい。
 何時季は彼女の頭を優しく撫でる。気持ち良い、でも焦って射精する必要は無い、ゆっくり楽しめば良い。憧姫には栄養としての果汁ミルクは必要無いのだ。彼女が生きるために飲ませる必要は無い。でも奉仕してくれる。愛されている。

「何時季が楽しんでるね。憧姫は狡いな。生きるために飲む必要は無いんだものね」
「そうね、でも何時季はそんな憧姫にも飲ませたいのよね。女の子にオチン×ン咥えさせたいのよね。生きるために必要じゃない憧姫だから、愛されてることをより感じられるわよね。でもね、私たちだって何時季が大好きなのよ? しっかり愛してるわよ」
 柳裸と姫李佳も彼に唇を寄せ、耳や肩を舐める。他の恋人たちも集まっている。

 その隣では、あの少年が砂花菜やリナたちに押し倒されている。彼の男性器は伸び、何本にも増えて彼女たちの身体に絡みついている。その多数の先端全てをしゃぶられたり、オマ×コに差し込まれている。
 彼が襲い犯しているのではない。襲われ犯されているに近い。でも彼はもう拘束されてもいない。彼の能力なら逃れることもできるだろう。でも、逃げない。逃げる必要などない、愛されている。

 彼の男性器はさらに増え伸びる。太い触手となり、海に向かう。海底に向かう。海底に深く挿入する。
 熱を探る。もっと深く探れば、マグマにも達することができるだろう。でも、そこまで行く必要も無い。熱を見つけた。
「見つけた、熱水噴出孔。尽きない熱を見つけた」
「エネルギーを取れる?」
「うん、できる。憧姫の身体に棲んでた細菌類を少しもらってある。僕はこの星も襲い犯すことができるんだな、でも、余裕で受け止めてくれるな。僕だって、星に比べればずっと小さい」
「以前、砂花菜に少しずつ食べられてた時、僕は怖かったんだな。どこか怖かった。あの頃は再生のためのエネルギーも無かったから、いつか食べ尽くされただろう。でも砂花菜を襲ったら、全ての希望が終わってしまうと知ってた。だから隠れて死んだふりをしてた。そして、砂花菜を利用してるつもりになってた」

「怖がらずに、もっと愛すれば良かった。小さな可愛い砂花菜なんだから。リナたちも共食いさせる必要は無かった。こうして海底からエネルギーを取れば、無限に再生できた。そうすれば、僕で足りたのに。ごめんね」
「そうね、でも、足りなかったのよ。お互いに足りなかったのよ。愛が足りてなかったわ。私もあなたのことが怖かった。あなたが死んでると思ったから安心できた。愛が足りてなかったわ」
「何時季に、晶華さんたちに、憧姫さんに愛をもらったのよ。だから、あなたも出てきてくれた。あなたに会えた。ありがとう、何時季さん」

「あなた、名前が無いって言ってたわね。私が名前をあげるわ。受け取ってくれる?」
「うん、砂花菜のプレゼント、嬉しい」
「……多真(たま)、はどう?」 
「多真か。良いな。ありがとう」

「何時季、キミの身体を少しもらって良い?」
 多真と言う名の少年が訊く。
「植物の細胞? 光合成してみる?」
「うん、試してみたい」
「良いよ」

「良いの、何時季? 光合成、あなたしかできなかったことを、多真にあげちゃうの?」
 帆夏が訊く。
「うん、かまわない。多真なら、森にならなくても緑を増やせるかも。そうしてくれれば、僕も森にならなくても済むかも。この姿のままで居られるかも」
「何時季は森になると戻れないのか。でもそれって、閉じこもってた僕と同じように、できないと思いこんでるだけかもね」
「そうかもしれないな。僕は樹になることはできる。そうなると、自分では元に戻れない。少なくとも、今はたぶんできない」
「でも、そうなった時、晶華たちが連れ戻してくれた。助けてもらえば戻れた。がんばれば、自分でも戻れるのかもしれない。自分が望まれないと思ってた、昔の多真と同じなのかもしれない。独りじゃできないと思いこんでるだけなのかも」
「それでも良いじゃない、私たちが居るわ。それに、多真も居るわ」

 多真が手のひらを差し出した。何時季は緑色の髪の毛を一本、そこに載せた。多真がそれを飲み込んだ。多真の髪の毛のわずかな一部が緑色に変わった。
「融合はできないな。細胞が拒否反応する、プロテクトされてるな。でも何時季の細胞を培養して、僕の中で少し増やした。融合じゃなくて共生だ。でも融合できないから、僕の身体の一部として無限増殖させることができない。もらった分だけじゃ、砂花菜たちに分けるほどの栄養は作れないな」
「何時季の光合成機能はコピーできないのね。何時季自身が増やそうとするなら、樹になるしかないのね。やっぱりね」
「晶華は予想してたの?」
「ええ、何時季の光合成能力は異常に強いわ。一人で街を養えるかも。機密情報にする価値があるわ。それに女の子に飲ませ放題なんて、男なら誰もが望むわ。奪われないようにプロテクトするのは当然」

 何時季が寂しそうに微笑む。
「そうだよね。でも、だから僕は森になりたくない。女の子に飲ませ放題の、都合の良い身体を捨てたくない。それは自分勝手なことなのかもしれないけど」
「僕が森になること、望まれてたはずだけど。晶華たちに会わなかったら、あの水がある街で森になってたかもしれない。誰にも会えなかったら、森になりたくなったかもしれない」
「何時季はどうやって生き残ったの?」
「もしかしたら、砂花菜さんの娘たちと同じかもしれない。もと居た場所の記憶が消えるようになってたのか、新しく造られたばかりだったのかも」
「覚えてないのね」
「枯れた樹の傍で目覚めた。あの樹が僕の元だったのかも。でも、解らないけど」
「大丈夫よ。会えたんだから。私たちにも、リナにも、砂花菜さんにも、多真にも会えた。ゆっくり行きましょ」

「何時季、そろそろ戻りなよ、青空の下に。海底は僕たちの場所だ、キミの場所は違う」
「うん、お邪魔したね」
「来てくれてありがとう。楽しかった。嬉しかった」
「うん、多真、砂花菜さんたちのこと、大事にしてね」
「うん、任せて。護るよ。護ると決めた」
「頼もしいな。頼むよ」

☆ 愛される二人

「まだ、助けられるのかな。彼にまた会えるのかな」
 何時季は自分がもどかしい。晶華のように心に話しかけることもできない。空流のように彼の侵略を止めることもできない。助けたいと思っても、自分には何ができるのだろう?
 巨大生物兵器は砂花菜の娘たちに貪られ、巨体は散り散りになっている。奥に居たあの少年も無事には済まないだろう。彼の男性器だったその巨体が貪られ、喰われている。
「ええ、会えるわ。まだ彼は残ってるわ。あの巨体の奥から、やっと出てきたわ」
 晶華が示す方向から、砂花菜の娘たちが来る。一人の少年と一人の少女を抱きかかえて泳いで来る。どちらも目隠しを着けている。あの少年と憧姫だ。
 二人は動かない。消耗しているのだろうか。いや、生きているのか?
「一度、砂花菜さんの基地に帰りましょう」
 皆で海底基地に戻った。

 咲生逢が憧姫を抱きしめ、呼びかける。
「憧姫、憧姫! 大丈夫?」
「ダメ」
 目隠しした少女が応える。
「何がダメなの? どこか壊された? 奪われた?」
「ええ、心を奪われたわ、壊されたわ。でも咲生逢、彼に手を出したら赦さないわよ。私、彼が気になってるのよ」
 その隣で、何時季が目隠しの少年を抱き起こす。
「大丈夫?」
「何時季か。キミじゃダメだよ。僕は男だよ、何時季の恋人にはならない。キミのオチン×ンから出る果汁なんて飲みたくない。僕には何時季は要らない。でも」

「何時季、お願いだ。憧姫を僕にください。大事にする。憧姫なら何時季が居なくても大丈夫だ。憧姫をください」
「あげるとか、そういうものじゃないよ」
「じゃあ、憧姫が望んだら、キミから離れても良いの?」
「ダメだ。憧姫は僕が居なくても生きられる、離れることもできる。でも、そんな憧姫だから一緒に居て欲しい」
「キミも憧姫の毒を抑えられる? キミの能力ならできそうだな。それなら、止める理由は無い。でも、キミには任せたくないよ。何で一緒に居られないの? 僕の果汁が必要ないから、一緒に居られないの? どうして? 互いに必要ないなら、一緒に居ちゃいけないの? 話せるのに。心がつながるかもしれないのに」
「心をつなげたいの? 晶華にしてもらえば? 晶華なら、つながるよね」
「そうじゃない! 精神感応でつながるとか、そういうことじゃないんだ! 憧姫と咲生逢みたいに心がつながることだよ。相手を大事に思うようになることだよ」
「何時季、キミは大事だよ。みんな生きるためにキミが必要だ。僕はみんなには要らない。僕は何もできない。いや、襲い犯す、そんな望まれないことしかできない」

「バカ、バカバカバカっ!」
 罵りながら、砂花菜が少年を抱きしめた。何時季から奪いとるように抱き抱える。
「え? 砂花菜?」
「望まれないことだと思ってるのね、あなたのあの立派なオチン×ン、望まれないと思ってるのね、バカっ」
「え、あの、その、砂花菜、あうっ!」
 彼の股間には立派な肉棒がある。あの巨大な触手に比べればとても小さいけど、人間サイズとしては立派だ。砂花菜は勃起したそれをこねくり回す。少年が悶える。
「砂花菜、ダメだよ、僕のオチン×ンは危険だよ、また大きくなって、増えて伸びて……」
「しなさいよ! 大きくして増やしなさいよ! 私と娘たち、みんな相手して、満足させなさいよ!」
「あなた、一度憧姫さんを取り込んだわよね? 尽きない熱の秘密、解らなかった? 海底に棲んでたのに解らなかった?」
「憧姫は、深海の化学合成生態系の生き物をモデルにした、それだけじゃないな。憧姫の体内、いや、細胞内にはこの星の内部につながるゲートがあるんだろう。だから熱が尽きない」
「この基地にも地熱発電設備があるわ。この星のエネルギーをもらってるのは憧姫さんと同じ。あなたにはできないの?」
「できるかもしれない。触手を伸ばして、海底を探って……星の中、深くまで探れるだろう……尽きない熱を取れるだろう」
「そうしなさい。そして、あなたの触手を食べさせて。尽きない熱があれば、無限に再生できるのでしょう? もちろんオチン×ンの世話もしてあげる。いや、私と娘たち、みんなの相手をして。私たちも性欲があるのよ?」
「でも砂花菜、キミたちは何時季に届いたのに」
「足りないの。何時季じゃ足りないのよ。あなたなら足りそう。あなたが必要なの」

「何時季、ふられそうよ。どうする?」
 柳裸が面白そうに訊く。
「仕方ないよ。砂花菜さんの言う通りだ。僕じゃ足りない。この前はなんとか飲ませたけど、アレは続けられないだろう。彼なら足りるだろう。でも、柳裸、晶華、空流、帆夏、晴香、姫李佳、練佳、そして咲生逢、憧姫、キミたちは、僕を選んでくれるよね?」
「もちろん!」
 皆の声が重なる。
「もちろんよ。咲生逢は何時季の愛奴隷だもの。憧姫、あなたは? 彼を選んで、何時季を捨てるの?」
 咲生逢が憧姫に訊く。

 憧姫が立ち上がり、目隠しされた少年に近付く。そして彼の目隠しを剥ぎ取った。驚いたような、でも綺麗な眼が見えた。
「……あなた、浮気するのね。砂花菜さんたちを受け入れるのね。許さないわ」
「憧姫、キミが一緒に来てくれるなら、キミだけを愛するよ」
「ダメよ。信じられないわ。私を取り込んだ後、みんなを襲ったわよね? 襲い犯す、そんなことしかできないのでしょう? そうやって砂花菜さんたちの相手をしなさいよ。砂花菜さんたちなら受け止めてくれるわよ」
「憧姫が来てくれないなら僕は」
「暴れるつもり? ダメよ。もう解ってるでしょう? あなた、砂花菜さんたちに愛されてるのよ。私だってあなたを愛しかけた。でも、裏切ったのはあなたよ」
 憧姫も目隠しを外した。閉じた眼が現れる。開いたことは無いのだろう。開けないのかもしれない。
 彼の眼は、開いている。
「見えた? あなたの眼、開いた? 砂花菜さんたち美人よね。私も見えた? 私の眼は開かないわ。私の肌は灰色よ。そんな私を見ずに呼びかけたのよね。私の尽きない熱、それだけが必要だったのよね。何時季は私を見て受け入れてくれたわ。可愛いって言ってくれたわ」
「憧姫は可愛いよ」
「遅いわよ。それに、砂花菜さんたちの方が可愛いわよ、あなたにはね。あなたを愛して、オチン×ンを搾ってくれるわよ。あなた、何時季みたいに栄養のある精液も出せるでしょう。飲んでくれるわよ。それともオチン×ンをそのまま食べられるのが好みなの? どっちでも良いけど、してくれるのは砂花菜さんたちよ。私はしないわ。あなたなんて、嫌いよ!」

「彼も憧姫にふられたか。ねえ砂花菜さん、リナちゃんたちも、彼を慰めてあげれば? 何時季を慰めるのは私たちに任せて」
「そうだな、何時季、彼はなんとかなったみたいだ、ご褒美、ちょうだい」
「憧姫、しっかり旦那様に浮気のお詫びをしてね。咲生逢も手伝うけど。旦那様、憧姫が浮気した分は、咲生逢にさせてください」
「咲生逢、ズルイわよ。憧姫がお詫びするわ。何時季、ごめんね、いっぱいお詫びさせて」
「何時季、ダーリン、姫李佳のオマ×コ水、溢れそう。飲んで。大好きでしょ? これからまた、いっぱい出すんでしょ? 水分補給して」
「何だかみんな興奮してる? うーん、そうだ、負けられないな。彼に負けないようにしないと」
 何時季は憧姫の顔に肉棒を押し付ける。目を閉じた少女が笑顔になった。咥えられる。憧姫は何時季に彼女の目隠しを差し出す。何時季が咥えられたまま、着けてあげた。

☆ 夢現封滅

 咲生逢は考える。この夢から出ると晶華は言う。どうやるのだろう? せっかく来たこの夢から出てしまっても良いのだろうか?
 晶華の精神感応能力で巨大な怪物の意識の中に来た。そこには閉じ込められた少年が居た。彼を解放しないまま出られるのか? 出られるのだろう。でもそれで良いのか? 何のために来たのだろう。憧姫を助け出すためだ。憧姫をさらった彼は、目隠しされ縛られている。そんな彼から逃げる必要があるのか? いや、彼を見捨てるのか? 見捨てても良い。憧姫を取り返せるなら、彼は見捨てても良い。だけど彼を見捨てたら、怪物に取り込まれてしまった憧姫を助けることはできないような気がする。

 目隠しされた少年が笑う。口元だけでなく彼の眼も笑っているのだろう。憧姫と同じ目隠しをした姿。咲生逢も憧姫の眼を観たことはない。彼も目隠しを外したことは無さそうだ。だから二人は惹かれ合うのだろう。目隠しを外したことが無い、見えない二人。自分が目を閉じても同じようにはなれないのだろう。

 拘束された少年が笑いながら話しかけてくる。
「行っちゃうのか、良いよ。憧姫はもらった。咲生逢ももらうよ、気に入った。現実世界の僕は強いよ。あの巨体は空流にも消せないよ。消滅が再生に追いつかない。消せないよ」
「そうかもね。でも、消せるけどね。手加減してるから消せないだけだ。キミを消したくないんだ。僕は何時季にそう言った」
「何時季のため? 彼に嫌われたくないんだね。そうだよね、優しい自分を見せたいよね。いや、空流は何時季に優しく弱くされちゃったのか。弱いな。あんな、か弱い何時季に敵わなかったんだね」
「そうだね、弱いね。久しぶりに思いっきり戦えると思ったのに、できない。自分を縛り付けたままのキミと戦っても全力は出せないよ。出したくない」

「そんな余裕、無くしてやる!」
 尽きぬ触手の攻撃が激しくなる。絡みつかれれば潰されるだろう。体内に入り込まれれば破裂させられるだろう。
 しかし触手は何時季と恋人たち、誰にも触れられない。空流が放つ消滅光が護っている。
 無限に再生し無限に消滅させる。終わらない戦い。目隠しした少年のパワー源は尽きない熱を持つ憧姫。空流のパワー源は無限の太陽光をエネルギーにしてくれる何時季だ。終わらないだろう。

「このままずっと空流に消され続けるのも良いな。空流が消してくれなかったら、僕のオチン×ンはこの星を覆い尽くして、宇宙に溢れちゃうかもしれないね。昔はたくさんの街や基地を覆い尽くし、犯し尽くした。たぶん、そうしていた」
「楽しかった?」
「ぜんぜん楽しくなかった。僕には解らないんだ。この怪物、僕の身体が何をしているのか解らない」

「でも襲い犯す、そんなことをしていただろうことは解るのね。あなた、この怪物の中枢ユニットじゃないの? この怪物をコントロールできないの?」
「できるかもしれない。でもしたくない。どうせ襲い犯すことしかできない。可愛い女の子に会ったら僕だって襲いたくなる。でもそれは嫌だ。コントロールなんてしたくない」
「コントロールできない、じゃなくて、したくないのか。足りてないな。何か足りてない」
「愛が足りないのよ」
「ああそうだね、愛が足りてないんだな」
「愛、くれるの? 空流がくれるの? それとも、咲生逢? それとも、他の誰か?」
「憧姫を取り込んだくせに、まだ足りないのね。あなたにあげる愛なんて無いわ。私の旦那様は何時季だけ。咲生逢は旦那様の愛奴隷なんだから」
「何時季は愛が足りてるんだろうな。うらやましいな。好きなだけ咲生逢も空流も他の娘も貪って、浮気しまくって、それでも愛されるんだね。狡いな」

「何時季はみんなに愛をくれるわ。襲い犯すだけのあなたとは違う」
 砂花菜が言う。いつの間にか現れた。
 晶華が砂花菜の意識をこの夢に連れて来たのだろう。この夢から出るのではないのか? それとも、状況が変わったのだろうか? それとも、あの言葉はブラフなのか?

「砂花菜か。キミには僕も栄養をあげたんだけどな。僕の身体、美味しかった?」
「ええ。あなたは、私にオチン×ン食べられて、気持ち良かった?」
「うん。いつか、砂花菜も砂花菜の娘たちも犯し尽くす、そんな夢を見ていられた。気持ち良かったよ」
「都合の良いことは解るのね。あなた、あの巨体をコントロールできるのね。周りのことも解ることができるのね。襲い犯した、その記憶を思い出すこともできるのでしょう? あなたの身体が何をしていたのか、解ることができたのでしょう? 止めることもできたはず。でも止めなかったのね」
「だって、僕には愛が足りてなかったんだもの。うん、止めなかった。いや、やっぱり止められなかったんだよ。僕を愛さなかった世界が僕の身体に犯される、いい気味だと思った。止める理由なんて無かった」
「あなた、護るものは無いの? 大事なものは無いの? 護った記憶は無いの? あなたなら、護れたでしょうに」
「何か、護ったのかもな。でも解らない。誰も僕を褒めなかった。話しかけてこなかった」
「だってあなた、閉じこもっているのだもの。でも、ありがとう。あなたの身体を食べさせてもらってた、そのおかげでリナたちを送り出せたわ。そして、リナが何時季に届いたわ。ありがとう。晶華もありがとう、彼にお礼が言えたわ」

「あなた、このまま閉じこもったまま、憧姫さんも閉じ込めるつもりね。それは許せないし、あなた自身も辛いわ。あなた、このまま生きても辛いわ。止めてあげる」

 世界が消えた。皆、夢から醒めた。
 海の中に居る。巨大生物の体内ではない。まだ触手はある。でもかなり減っている。巨大生物兵器だったものは、その巨体の大半を失っていた。砂花菜の娘たちに食べられている。貪られている。
 長い夢を観ていたらしい。その間、抵抗できない巨大生物を砂花菜の娘たちが食べた。無限再生能力も夢の中だけに封じられていたらしい。眠らせたまま倒す、晶華の能力のひとつだ。

 多数の小さな生き物が群れをなして襲う。中枢神経や脳を押さえられれば、巨大で強いはずの生物が抵抗できない。昔から繰り返されてきたであろう光景。

「憧姫は?」
「今、分離してるわ。もうあの巨体のコントロールもこっちでできるわ。憧姫の身体も分離再生するわよ」
 巨大生物兵器の防御機構も弱まっている。柳裸の神経接続能力に対抗できなくなった。だからもう反撃も無い、その巨体を柳裸がコントロールしている。

「彼、このまま消えちゃうのかな」
 何時季がつぶやいた。

☆ 彼の場所、彼の夢

 巨大生物兵器の意識の中には、閉じ込められた少年が居た。
 皆で彼の意識の中に来ている。夢の中に居る感覚。柳裸の神経接続能力と晶華の精神感応能力が、彼の精神に入ることを可能にしてくれたらしい。

 何時季は他人の夢に入るのは初めてだ。でも、自分の夢に恋人たちが来てくれた、その記憶はある。
 何時季は樹になることができる。樹になれば、彼のようにたくさんの触肢を生やすことができる。いや、触肢を生やそうとするなら、樹になってしまう。そして、自分では戻れない。でも、いつも、恋人たちが連れ戻してくれた。

 彼もこの夢の中で、自分自身を縛り付けている。解放できるだろうか?
 解放しないと。そして、憧姫を返してもらわないと。

 彼が目隠ししている理由が解る気がする。自分を観たくないだろう。そして、自分を観る誰かを観たくないだろう。
 巨大な触手の塊、その多数の触手は彼の男性器が変化したものらしい。異形の身体。怖がられるかもしれない。怖がられないとしても、憐れまれるかもしれない。悲しがらせてしまうかもしれない。
 こんな姿に疑問も持たず、受け入れられるとしても。そんな相手は、普通ではないだろう。自分と同じ、化け物かもしれない。

 自分が異形の怪物なら、他の怪物を受け入れないのはおかしいのだろうか?
 そんなことはないだろう。怖い。
 自分が持っている恐ろしい能力、相手も何か、そんな恐ろしい能力を持っているかもしれない。怪物は、自分と同じような存在を怖れる理由がある。

 でも、その異形の身体は、能力は、何のためにある? それは活かせないのか?
 そんなことはない。恐ろしい身体、能力、使いようはある。
 闘えば良いのだ。もともと、戦うための身体、能力だ。

 戦いを望むことで避けられるかもしれない。それも望むところだ。こんな恐ろしい怪物、避けられるなら、それで良い。その方が良い。傷つけてしまうより、退治されるより良い。

「傷つけてしまうの? 傍にいるだけなら、大丈夫じゃないの? 戦わなければ、傷つけてしまうことはない、そうじゃないの?」
 何時季が少年に問う。

「戦いは止められない。我慢できないんだ。欲しくなる。だから、戦う。戦って、奪う。それは、普通の、あたりまえのことでしょ?」

「うん、でも、みんなそういうわけでもない。みんな、奪えるとしても、我慢もする。キミは今、我慢できない、それも解るけど」

「そうなんだよ、我慢できない! 僕は、強い! 戦って、奪える! だから、我慢が難しい……我慢が辛い」

「憧姫が来てくれた。憧姫の熱を得た。戦える。動ける。ここから、出られる。また、青空を、水平線を観られるかもしれない」

「そのことを邪魔はしないよ。一緒に、行こう。この海底から、行こう。お日様、青空、綺麗だよ」

「ダメだよ。青空の下、お日様の恵みは、何時季、キミの場所だろう? キミは光合成して、みんなを活かせるんだろう? でも、憧姫には必要ない。僕にも必要ない。この海底、地上の生き物には辛いだろうけど、僕と憧姫の場所は、この海底だ」

「青空の下は、広いよ。大きなキミが来ても大丈夫だよ。憧姫も暗い部屋に居たけど、出てきてくれた」

「違うんだよ、広いとか、そういうことじゃない! キミと僕は違うんだ! 違う生き物だ、居るべき場所が違う!」

「この海底に居ても、あなたは自分を閉じ込めているわ。この海底も、あなたが望む場所じゃないわ」

「知ってる、解る、でも、だいぶマシだ。この巨体を、少ないエネルギーで維持できる。憧姫が居れば、本当に、何も食べなくても大丈夫だ」

「でも、欲しくなる。何も要らないのに、欲しくなる。憧姫が来てくれたのに、もっと欲しくなる。キミたちも欲しい、みんな、欲しくなる」

「だから、帰ってくれれば良い。僕が避ける場所、青空の下に帰れば良い。キミたちが僕の場所に来たから、我慢できない。何で、来たの? いや、僕のこと知らなかったから、それは解るけど」

「僕の場所、ひとつくらい、あってはダメ? 僕がワガママになる場所、あってはダメ? みんな、此処を避ければ良いんだ。僕は欲しくなって、襲うけど、此処から出なかった。みんな、此処を避ければ良い。僕は、誘ったことは無い。来て欲しいとは言わない」

「誘ったでしょ。憧姫を誘ったわよね。お前が必要だって、誘ったでしょ」
 咲生逢がいつの間にか、拘束された少年の傍に居る。襲いかかる触手を噛みちぎり、少年の首筋に手をかける。
 目隠し拘束されている少年の本体は弱いだろう。触手の渦を抜け、彼に手をかければ、終わりだろう。
「憧姫も、あなたとは違うわ。何時季とあなたが違うように、違うわ。憧姫を返して」
 容赦なく締め、爪を立てる。あの戦争の中、何度もこうしてきた。急所は知っている。でも、この少年はこのくらいでは死なないだろう。死んでもかまわないけど。

「あなたは此処に居なさい。お望み通り、避けてあげるわ。だから、憧姫も、あなたを避けて良いはず」
「憧姫は渡さない……憧姫だけで良いんだ。尽きない熱、他には、光も要らない。でも、キミたちも、逃げないなら、もらうよ。何時季、ありがとう、こんなに女の子を連れて来てくれて」

 咲生逢に爪を立てられた少年が、破裂した。
 現れたのは触手の渦だ。咲生逢が巻き込まれ、飲み込まれる。

 咲生逢の全身に触手が入り込む。口腔、鼻孔、眼孔、耳、性器、肛門。改造体の少女にも、人体の九穴がある。
 触手、いや、彼の男性器が大量に射精し、咲生逢が破裂した。

「あは、良いな。女の子の身体、気持ち良い。僕はオチン×ンの塊だからね。でも、やっぱり、壊しちゃうな。逃げなよ、まだ、間に合うかもよ?」

「うーん、ちょっと激しすぎるなー、柳裸でも受け止めてあげられないかも。でも、咲生逢は大丈夫なんだよね」

「何? 咲生逢って、さっきの娘でしょ? 大丈夫じゃない、壊しちゃったよ、ごめんね」

「私は壊せないわよ。何でも消せる空流にも消せないんだから」
 咲生逢が居る。復元している。彼女のドレスも復元している。
 時間を超えたバックアップからの復元らしい。常にわずか先の未来時間に自分のコピーを作っているらしい。そのコピーが現れるのは、咲生逢の存在が途切れた瞬間だ。
 咲生逢の復元能力について、晶華と練佳による推論はそのような説明だった。本当のところはわからない。でも、とにかく、咲生逢は壊せない。消せない。

「へえ、咲生逢、キミも欲しいな。憧姫と一緒に居たいの? 僕の傍に居れば良いよ」

「嫌よ。あなたなんか嫌い。私の旦那様は何時季だけ」
「うん、だから、奪うよ。咲生逢には乱暴しても大丈夫なんだね。捕まえ易い」

「咲生逢、彼の居場所が解ったわ。この夢から出るわよ。憧姫を連れ戻すのに、あなたが必要よ」
 晶華に言われて思い出す。そう、ここは少年の意識の中、夢の世界であるはずだ。
 でも、闘った感触もある。リアルな夢もあるから、不思議でもないけど。いや、不思議だ。夢の中で死んだら、どうなるのだろうか? 復元する自分は死なないはずだけど。夢の中で、その能力に保証はあるだろうか?

☆ 護ると決めた

 憧姫は溶けた。自分の身体にあった、知らない能力。溶けて流れ、後で身体を再構成できる、それが解る。
 溶けたままプールに入った。そのまま、触手の塊のような巨大な怪物に達する。その触手は管になっているようだ。その中に入ってゆく。
 海水中を溶けて流れることが、心地良い。身体はまだ硫化水素を発しているようだ。それは溶けた身体に混じり、その身体に棲む細菌類を生かし、その細菌類が憧姫を生かす。
 憧姫自身も、細菌類のひとつなのかもしれない。いや、多細胞生物なら、様々な違う細胞で構成されている。その一部が自分であり、一部は違うと考えることもおかしい。
 そう考えるなら、溶けてこの触手に入った自分は、もうこの巨大生物そのものなのかもしれない。いや、まだ違う。でも、いつか混じり合うかもしれない。

 憧姫の体内には熱がある。恒温動物である人間がベースの改造体なら、普通のことだ。でも、憧姫の熱は、彼女が何も食べなくとも尽きない。どこかおかしい。
 この巨大生物は冷めていた。冷たい生き物は、海には多い。冷たいから死んでいるというわけでもない。でも、生命反応は消えていた。柳裸が触れて確かめても、死体と判断しただろう。
 でも、死んではいなかった。
 巨大生物の冷たい身体に、憧姫の熱が入った。

 海の少女たちが巨大生物にも近付いてきた。憧姫を探している。でも、溶けてその巨体に入ってしまったとは解らない。
 何時季を誘惑できた、水に生きる少女たち。自在に泳ぐ姿は美しい。美味しそうだ、触手が伸びる。
 避けられた、さすがに素早い。海の少女たちが水を操り、水圧の刃が触手を切断した。しかし、触手は多い。別の触手が海の少女たちを捕らえようとする。

 光が迸り、伸びてきた触手が消滅する。空流が発する消滅光だ。リナが泡を作り、何時季の最初の恋人たちを水中に連れてきた。
「憧姫は、あの巨大生物に取り込まれてるわ。わずかに意識を感じる。隠そうとしてるけど、解るわ」
「じゃあ、アレは消せないな。どうする?」
「憧姫を連れ戻す。みんなが僕を連れ戻してくれるみたいに」
 何時季が怪物を睨む。

 直接観る怪物は巨大だ。怖い。
 触手の塊のようなそれの本体は見えない。その巨体は、全て触手なのだろうか? 違う気がする。憧姫は何処に取り込まれているのだろう?

 何時季自身も、多数の触肢を生やすことができる。でも、それをしてしまうと、自分では元の少年の姿に戻れない。そのまま樹になり、森になるだろう。
 そうなった時、いつも、連れ戻してもらった。恋人たちに。
「憧姫も僕の恋人だ。みんなの仲間だ。連れ戻すよ」

「そうだよね。当然だな。何時季の望みだから、それだけじゃない。仲間を助ける、当然だ」
 空流が何時季の眼を見て話し始める。
「何時季、僕たちは、あの戦争を越えて生き残った戦闘チームだ。それがどんなことか、解る?」
「強いってことだよね?」
「たくさん、殺した。消滅させた」
「護るためにでしょ? 自分を、仲間を」
「うん、そうだ。でも、護りきれなかった。人間だけじゃない、動物も、植物もほとんど消えて、食べるモノさえ見つからなくなった」
「そうしたのは、僕だけじゃない。僕だけだったら、こんなに消せなかっただろう。戦ったみんなで、こうした。だから、みんな消えて、僕たちもお腹が空いて。何時季に会えなかったら、僕たちも消えてただろう。自分さえ、護れなかった」

「僕だけじゃないけど、僕もそうしたんだ。消したんだ。今でも、消せる。あの怪物も消せる。僕にはできる。消せる」

「でも、消したくない。助けよう。憧姫を連れ戻して、できれば、あの怪物も助けたい。お願いだ、何時季、みんな、手伝って」

「空流は優しいな。強いな。強くて優しい恋人に、お願いされたんだね。良いな、良い夢だ。もちろん、手伝うよ、僕にできることなら。僕も夢見るよ。良い夢だ。一緒に叶えよう」

「空流ちゃん、抜け駆けだね。でも、もちろん、柳裸も賛成」
「何時季は護るから、安心して。帆夏が護るから、空流は安心して攻めて」
「この泡、私にも動かせますね。何処に入りますか? あの触手は全部避けられます」

「方針は決まったわね。あの巨大生物の中に入る必要がありそうね」
「あの怪物は、意識はあるの? 晶華なら話せる?」
「解らないわ。精神感応へのシールドがあるわ。あのサイズの兵器なら当然だけど。憧姫の意識にも、そのせいで触れられない」
「体内に入って、柳裸の能力で神経系に直結してもらいましょう。何時季と咲生逢が居れば、憧姫は帰って来るわよ」

「ありがとう、お願い、みんな、憧姫を助けて」
 咲生逢は怯えている。
 空流にも消せない、不滅の身体を持つ咲生逢が怯えている。嫌な予感が消えない。

 でも、希望も見える。怯えて動かないのはおかしい。
 結果は後から振り返るモノで、目標ではない。悪い結果の幻に囚われてはいけない。目指すべきは、良い夢だ。

 怖れで動きが鈍る、多少は仕方ない。でも、だからこそ、恐怖は超えるべきモノだ。咲生逢の身体は、完全消滅しても時間を超えたバックアップから復元する。不滅の身体を持つ自分が、何を怖れるのか?
 憧姫を、何時季を、みんなを失うこと。それが怖い。自分は消えないけど、みんなは消えるかもしれない。戦いが起これば、誰か消えるかもしれない。

 でも、だから、護ろうとする。
 そうだ、護れないかもしれないことは問題ではない。
 護ると決める。

 覚悟しよう。護れないかもしれない、その可能性も受け入れよう。恐怖を受け入れよう。
 まだ、結果は決まっていない。護る。

 未来は夢だ。不安もあるけど、良い夢も見える。進む方向は、解る。

「咲生逢、大丈夫?」
「大丈夫よ。旦那様、ありがとう。また、助けて。でも、今度は私も手伝うわ」

 皆を包んでいる泡の動きを、晴香がコントロールする。リナが動かすより高速で小廻りも効く。
「空流ちゃん、入り口を空けて! 入ります!」
 空流が光を放ち、巨体に穴を穿つ。滑り込む。